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    ichihara3939

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    ichihara3939

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    ※貧乏ショウちゃん野草を食べるの続きです。こちらだけでも読める内容です。

    貧乏ショウちゃん荒野を行く「はぁ……お金がない、本当にない……」

     団員ランクが上がった。お手当の額も上がった。
    レアアイテムも売り捌いてある程度の収入があるはずなのにどうしてこんなにお金がないのか。
    答えは簡単だ。ボールを投げるのが下手くそだからだ。消費量があまりにも多すぎて調査での材料採集では間に合わず、クラフト屋でたまいしやてつのかけらを大量購入するからお金が足りなくなるのだ。
    だからといって食費を削ってしまうと体力勝負の調査に影響が出る。いかがしたものか。

    「はぁ……ウォロさんどうしてるかな?」

     ふといなくなった人の顔が思い浮かぶ。飄々として掴み所がないちょっと胡散臭い人だったが面倒見が良く優しかった。ある時までは。
     財布の中に80円しかなくて野草を食べていた時に見るに見かねてイモモチを奢ってくれたし、ボール投げの練習にも付き合ってくれたことがある。
    あまりにも崖から落ちたり溺れたりするものだから落とした物を買い直した結果一文無しになった時もツケでアイテムを買わせてくれたり割引券をくれたりした。
     彼が助けてくれたから今の自分があると言ってもいい。

    「……そういえばツケ払ってないんだよね」

     村から追い出された時に収入がなくなってしまってツケで色々買わせてもらっていた分のお金をまだ返せていない。
     シンオウ神殿での一件の際、事態が事態だっただけに彼が去っていく前にツケ払ってないんでちょっと待ってもらえます?とは言えずに見送ってしまったのだ。

     あやつのことは忘れろ、そう言われたが半年経った今でも時々こうやって思い出しては複雑な気持ちになる。裏切られたとはいえ助けられた部分があまりにも大きいのだ。そう、大きすぎてこの先生きていける自信がない。

     割引の効果は絶大だったのだ。

     やはりイチョウ商会に復帰してもらうしかない、交渉しに行こう。
     以前ウォロさんから貰った割引券を握りしめ、私は宿舎をあとにした。



    「ガチグマ、このニオイを追ってくれる」

     ガチグマに割引券のニオイを嗅がせて彼の痕跡を辿る。これ以外に手掛かりのない、途方もない旅が始まった。

     広大なヒスイの地をガチグマで駆け抜ける。ベースキャンプが近くにあれば立ち寄るが基本は野営だ。貧乏を極めているのでその辺に生えている草やキノコも何が食べられるか分かるようになった。
     この紅蓮の湿地ではケムリイモが採れるからありがたい。集めた落ち葉に火をつけて、熾火になったらケムリイモを置いて落ち葉を被せる。1時間ほど待ったらホクホクの焼きケムリイモの出来上がりだ。これに焚き火で焼いた焼きもちもちキノコと焼きころころマメ、砕いたごりごりミネラルを振りかければ紅蓮の湿地グルメの完成だ。

    「と、採れたてはやっぱり美味しいね……ダイケンキ」

     紅蓮の湿地の恵みを相棒と共に噛み締める。

     ふと空を見上げると満天の星空が広がっていた。元いた世界ではあまり見られない光景だ。

    「早くウォロさんを見つけられますように……」

     流れ星に祈り眠った。



     翌朝、多めに作っておいた焼きケムリイモを頬張りながら今日の道程を考える。基本的にはガチグマ次第だが物資の残量次第ではベースキャンプや集落に寄らなくてはならない。現在地である雲海峠からはコンゴウ集落が近い。現状寄らなくてもいいが目的地不明の人探しの旅だ。念の為寄っておくのもいいかもしれない。ガチグマに匂いを辿ってもらいつつコンゴウ集落を目指すことにした。

    「ガチグマライドでふふふふーん♪沼地もへっちゃらふふふふー、ウギャァァァ」

     適当な歌を歌いながら機嫌よくガチグマに乗っていたら急に止まったので落ちそうになった。

    「ガチグマどうしたの……?」

     いつもより多めに匂いを嗅いでいる。反応が強い。きっとこの近くにいる。追い詰めるなら一気にいったほうがいい。

    「ガチグマ、全力で突撃」

     顔を見たらきっと逃げられるのでキツネのめんを被ってそう静かにガチグマにお願いした。



     霧の中を全力でガチグマと駆け抜ける。途中ちょっと枝に当たったりして痛かったが構っている場合ではない。跳ね飛ばす勢いで追いかけないと逃げられる。恐らく霧の遺跡に向かっているが見通しが悪く現在地がイマイチ分からない。途中赤く光る目に見つめられた気がするが気の所為だったことにしたい。この辺りのオヤブンは何だったか。全力で追いかけてくるやつだったら嫌だなぁとかはかいこうせんとか撃たれたら嫌だなぁとか考えていたら。

     何かを思いっきり跳ね飛ばしてしまった。

    「ウォロさん!?!?」

     そんなつもりはなかったのだが視界が悪かったからかガチグマがウッカリやってしまった。気絶はしているがとりあえず無事らしいことを確認して目が覚めるのを待つことにした。



    「アナタ一体何のつもりですか?」

     宙に浮いた彼が本当に信じられないものを見るような目で見てくる。
     いきなりガチグマで跳ね飛ばされた上に逃げられないようにサイコキネシスで宙に浮かされているのだから当の本人は訳がわからないだろう。逃亡防止の策がサイコキネシスくらいしか思い浮かばなかったので許してほしい。

    「ウォロさんを捕まえに来ましたあ、御用だ御用だ的なことではなくてイチョウ商会に戻ってきて欲しくて。」

     スッとイチョウ商会の制服を差し出す。

    「はいそうですかわかりました、なんて言うと思いますか?あと降ろしてください。」

    「逃げられたら困るからイヤです。」

    「……分かりました、逃げませんからとりあえず降ろしなさい。」

     余程宙に浮いているのが嫌だったのか逃亡しないということを約束してくれた。嘘かもしれないので警戒は怠らないがとりあえず地面に降ろすように指示を出す。いつでもサイコキネシスをかけられるように待機させるのも忘れない。

    「降ろしました、さぁイチョウ商会に戻って来てください。ギンナンさんもウォロさんに戻ってきて欲しがっています。」

     仕事をサボって遺跡調査とかはしていたが商人としては優秀だったらしくイチョウ商会としても戻ってきてほしい人物なんだそうだ。

    「お断りします。それになぜ関係のないアナタが探しにくるんですか?」

    「会わなきゃいけない理由があるんですよ。」

    「ワタクシにはありません。今後アナタとも関わるつもりもありません。」

    「そう簡単に切れる関係じゃないと思います。だって私はウォロさんに借金があります!十分探す理由になると思います。それに……」

    「ウォロさんのお得意様割引がないと生きていける気がしないです……」

     マメパトが豆鉄砲を食らったような顔で一瞬固まってしまった。大きな大きなため息と共にちょっと悪態もつかれた。地獄耳なので全部聞こえていたけれど聞こえないふりをしておこう。

    「いくらお金に困ってるからとはいえ自分を裏切った人間に頼ろうとするなんて、アナタ本当にどんな神経をしているのですか?」

     心底呆れた顔で見られてなんとも言えない気分だ。

    「……手持ちポケモンにルカリオとトゲキッスがいるからですかね?」

     ルカリオは正しい心を持った人間にしか懐かないし、トゲキッスの進化前のトゲチックは懐かないと進化しないポケモンだ。
     だから根っからの悪人だとは思えない。

    「それが何か関係あるんですか?」

    「ありますよ、でも微妙な顔されそうなので今は教えません。」

    「なんですかそれ……」

     さらに心底呆れた顔をされたがポケモンに詳しくないこの世界で理由を言ってもピンと来ないだけだ。
     トゲピーがめちゃくちゃ懐いていたから信用出来ますよと言って理解できるはずもない。時期が来たらサラッと伝えてみようと思う。



    「これで満足ですか?」

     イチョウ商会のすがたに戻ったウォロさんが不機嫌そうに言う。

    「はい、満足です。おかえりなさい、それとこれからもよろしくお願いしますね。」

     戻ってきてほしい理由は本当は割引や借金だけじゃないのだけれどそれを言うことは多分ないだろう。

    「あ、そういえばギンガ団で今度ベースキャンプを村に発展させる計画があるんです。天冠の山麓を開発しようと思うんですが物資担当をお願い出来ませんか?遺跡も行き放題ですよ」

    「ジブンに拒否権なんてないのでしょう?お好きにどうぞ。」

    「ではお願いします」

     お好きにどうぞと言ったのだ。本当に好きにさせてもらおう。彼自身も観念したのか投げやりなのか、もう何処へも行くつもりはないらしい。
    行かせるつもりもないけれど。

     アヤシシ様を呼び出し、2人でコトブキムラへ向かって霧の遺跡をあとにした。



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