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    高明さんはひとまず、敢助の家に匿われると思う。
    そこで改めてしっかり話を聞く。敢助はぼた餅以外は作れないらしいので(公式)食事はストックしてた冷食のパスタかな、それを2人分解凍して、ビールも出して、申し訳程度のお酒も挟みつつ高明さんの話を聞く。
    「つまり、コウメイ……いや、あんたの事は高明と呼ぶか。高明が居た世界では、御厨の失踪も未宝岳の雪崩も起きているが、巻き込まれて行方不明になったのは俺なんだな?」
    「はい。経緯に関しては一緒です。たまたま敢助く……敢助さんが御厨を発見し、捕えるため追い、雪崩に遭った」
    「人物以外は本当に丸っきり同じだ。一部の物事だけが反転してる平行世界ねえ……まさか、パラレルワールドが本当にあるとはな」
    「僕もまだ信じられません。……よく聞こうと思いましたね、僕の話を。食事まで振舞って」
    「誰がどう見ても諸伏高明にしか見えない人間が目の前に居たらなあ。コウメイが雪崩で失踪したのは県警の人間しか知らねえから、イタズラとも思えなかったしよ」
    世界は違えど敢助は敢助。高明が知る大和敢助と何もかも同じで、どうしようもなく居心地が良くて、つい高明はうたた寝してしまう。ついさっきまで緊迫した場面に居たから、疲れていたらしい。
    ウトウトしていると、座り込む体が持ち上げられて、ベッドに寝かされる感覚を感じる。目を開けたかったけど眠気が勝ってそのままで居たら、何かが唇に触れる。知ってるような、知らないような心地。考えたら察しがついてしまう接触。
    「こんなに近くに居るのに……このコウメイは俺が知るコウメイじゃないのか」


    ああ、でも限りなく同じ人間だ。どうしようもなく綺麗だな。


    そう言って離れていく気配。ドアが閉まる音がした後高明さんは起き上がって自分の唇に触れる。この世界の敢助は「諸伏高明を愛している」それを理解して頬が熱くなる。
    自分も「大和敢助」を愛している。でも同性だから、由衣さんが居るから、由衣さんが敢助を好いていて、言葉や態度にしないだけで敢助もそうだろうからと封してた心が揺さぶられて、考えてしまう。
    もし、この世界も正史通り話が進むなら、3ヶ月後、失踪から半年後に諸伏高明は山梨の病院で発見される。野辺山の事件もゆくゆく起きるかもしれない。自分がずっとこの世界に居ると限らないなら、せめてその3ヶ月だけでも敢助の恋人になれないかと。
    この世界の諸伏高明が誰を愛してるか、そもそも他者にその手の好意を寄せているかは分からないが、見つかっていないなら居ないも同然。その間だけは、と考えてハッとする。今見つかっていない諸伏高明を「居ないもの」と扱うのは、正史で消息不明だった「大和敢助」を死者と扱うも同然だと。それだけは許されないとすぐに浮かんだ考えを投げ捨てるが、自分の愛する人間が自分を愛しているこの環境の中、第三者の迷い人という立場を貫けるのか分からなくなり、苦悩する高明さん。

    そんなシャッタードグラス。

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