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    tyaba122

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    tyaba122

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    組長🎈くんと警察の息子⭐️くん
    まだ途中。書く練習中。
    言葉遣いが難しい…

    1「確たる証拠も無く人の家に押し掛け散々荒らした挙句立証出来なかった、なんて警察も落ちぶれたものだね」
    「っ……」
    「さて、今回の件で君たち警察には濡れ衣を着せられてしまったわけだけれど、この落とし前はどうつけてくれるのかな?」
    にこりと笑って見せれば、今回の家宅捜索を指揮していただろう警察官が苦虫を噛み潰したような顔をする。残念ながら、証拠となるブツは全て避難したから見つかるはずもない。こうなる様に偽の噂を流して乗り込むよう誘導したんだ。これで暫くは、警察も静かになるだろう。
    まぁ、今回の目当ては他にあるのだけれど。
    「そういえば、貴方には高校生のお子さんがいらっしゃいましたよね?」
    「っ、…なぜ、それを……」
    「“仲良く”しましょうよ。そろそろ僕も、素敵な伴侶を探してましてね」
    僕の言葉の意味を察した目の前の警察官は、ポケットから取り出した一枚の紙を僕に手渡してきた。

    【捕まってください、愛しい人】

    「……ん…」
    意識が浮上し、ゆっくりと瞼を上げる。目の前に見える天井をぼんやりと見つめてから、のそのそと布団から起き上がった。畳の匂いと、微かな木の匂い。桐箪笥や掛け軸に座布団と座敷テーブル、そんな趣がある部屋を見渡して、小さく息を吐いた。
    「…慣れん……」
    そうぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく空気に溶けて消えていった。
    隣の布団の主は、すでに起きていたようだ。誰もいない布団をちらりと見て、オレも起き上がる。綺麗に整えられた布団を見ただけでは、昨夜その主が帰ってきたのかすら分からない。場合によっては、帰ってきていない可能性だってある。なにせ、昨夜オレが寝るまで“類”は帰ってこなかったのだから。
    「……高校卒業まで後半年、か…」
    はぁ、と溜息が一つ零れ、肩を落とす。桐箪笥の一番上の段を開ければ、きっちりと畳まれたシャツが入れてあった。それを出して袖に腕を通す。着慣れた制服から微かに木の匂いがするようになったのも、ここ数日のことである。
    姿見で変な所がないかを確認し、寝室を出る。長い廊下を進んで洗面所へ入り、用意されたオレ用の歯ブラシを手に取った。歯磨き粉を軽くつけて口に入れ、そのままいつものように歯を磨く。
    (…今日は確か会合があると言っていたな……)
    ぼんやりと今日の予定を思い返し、憂鬱な気分になる。会合といえば、あれだ。知らない人達が奥の広間に集まって何か物騒な話をする、あの異様な光景のやつだ。前になんの会合かと聞いた時は人助けの相談だと類は言っていたが、絶対違う。普通の会話に『カタギ』や『クスリ』なんて言葉が出るはずがない。
    よく分からない単語が沢山飛び交う異様な会合は、この屋敷でも度々行われている。こっそり聞き耳を立ててみたりもするが、毎回途中でバレて『早く寝なさい』と追い返されるのだ。正直、会合自体は重々しい空気があって怖い。だが、会合の内容は少し興味がある。
    というのも、オレは“類”の事をあまり知らないからだ。自分の“夫”だというのに。



    類と婚姻を結んだのは一ヶ月と少し前。
    警察官である父さんが仕事から帰ってくるなり突然、『見合いをしないか』と聞いてきたのが事の始まりだ。二日後の休みに会ってほしい相手がいると言われ、頷いた。相手の名も顔も知らないが、父さんがそんな事を言うのが珍しく、断れなかった。なにか事情があるのだろう。そう自分で納得し、二日後に父さんに連れられ小洒落た会席料理の店へ行き、そこでオレは類に出会った。
    神代類は、父さんが追っている神代組の当主で、オレとは十も歳が離れている。藤色の長い髪を緩く結わえる、落ち着いた雰囲気の男性だ。にこにこと人当たりのいい笑顔と、綺麗な顔立ちに一目で惹かれた。元々父さんの仕事の為ならと断るつもりも無かった縁談だが、オレは二つ返事で受け入れた。
    十八になれば誰でも結婚出来る。同性婚も当たり前で、その気になれば誰でも子を持てる。オレはまだ学生だが、驚く程あっという間に婚姻式の準備は進み、見合いから僅か一ヶ月で籍を入れた。流れるようにあれこれが決まっていき、気付けばこうして神代家で生活していた。
    最初は家庭に入ってほしいから高校を中退するよう類に言われたが、説得し続けてなんとか卒業まで通う事を許してもらえた。その代わり、卒業後は仕事はせず家庭に入る事を条件として、だ。父さんと同じ警察官に憧れていたから、その条件を聞いた時はかなり悩んだ。だが、全く譲る気のない類に、結局オレが折れるしかなかった。
    そうして始まった夫婦生活も、オレが予想していたものとは違っていたわけで…。
    「おはようございますっ! 姐さん!」
    「…おはよう」
    「姐さん、荷物お預かりしますっ!」
    「……そうか…」
    この為かと思いたくなる程、廊下の左右で大柄の男達が綺麗に頭を下げても歩くのに支障がない広さのある廊下を歩きながら、溜息を吐く。オレの手から学校へ背負っていくはずだった鞄が取られ、肩を落とした。ここで遠慮しても、渡すまでやり取りが繰り返されるだけだと学んだ。まるで王様にでもなったかのような扱いが、未だに慣れん。ガタイのいい男達の作るお辞儀のアーチを抜けていけば、居間に辿り着く。
    襖をそっと開けると、ふわりと味噌汁の匂いが鼻腔をくすぐった。
    「おはよう、司くん」
    「……おはようございます、類さん」
    「堅苦しいのはやめておくれよ」
    相も変わらず人好きの良い顔で笑う類が、オレを手招く。類の向かい側に用意された一人分の食事の乗った膳を前に腰を下ろすと、類はそのまま箸を持った。
    一体何時寝ているか。夜は遅くまで帰ってこないくせに、朝はオレより先に身支度をして、オレが食事に来るのをこうして待っている。食べ始めた類をちら、と盗み見てから、オレも箸をとる。膳に置かれた茶碗を片手で持ち、箸で綺麗に焼かれた鮭の身をほぐす。それを口に入れれば、じわりとした塩気と口の中でほろっと崩れる柔らかい鮭の身の味に、つい眉尻が下がる。
    (…美味い……)
    驚く程広い御屋敷と、家族と言うには全く似ていない顔ぶれが一堂に会する異様な生活。今時珍しい高価な和服を着こなす類は、この屋敷の中で一番堂々としている。着替えを含めた身支度も、家事も、送迎も、全てこの屋敷に仕える者達がしているらしい。まるで小さな国家の王様だ。さしずめオレは、王妃というわけか…。
    「今夜は会合だから、夕食は一人でとっておくれ」
    「…分かった」
    「夜更かしせずに早めに寝るんだよ」
    「心配せずとも、類を待たずに寝るから気にするな」
    ずず、と味噌汁を一気に飲み干し、ゆっくりと息を吐く。淡々と返せば、「それならいいけど」と類が呟いた。
    以前は、類が寝室に来るまで起きて待っていた。だが、類の眠る時間が毎回遅くて、起きて待つ必要は無いと言われてしまったのだ。それ以来、毎朝『先に寝ていて』と釘を刺されるようになってしまったので、もう待つことはしていない。どうせ、横に並べた布団で静かに寝るだけで、何も無いからな。
    (婚礼の日も、全然寝所に来なかったしな…)
    初夜は大切だと事前知識で学んでいただけに、あの日は大層緊張したものだ。だというのに、結局オレが耐え切れずに寝落ちするまで、類は寝室に来なかった。
    よく良く考えれば、父さんに見合いを勧められて類と出逢ったが、恋愛結婚かと問われればそうではない。オレは確かに一目惚れではあるが、類に『好きだ』と言われたことはないのだから。
    「ご馳走様。先に出るぞ」
    「おや、今朝は随分と急ぐのだね」
    「…宿題が終わっていないんだ。早めに登校して、終わらせようと思ってな」
    「……そう。行ってらっしゃい」
    一瞬妙な間をあけて、類がにこりと笑顔を作る。そんな類から顔を背け、立ち上がった。ゆっくりと食事をとる類に背を向けてさっさと部屋を出る。本当は、宿題なんて全て終わらせている。普段ならもう少しゆっくりと食事をしながら、この数少ない類との時間に会話をするのだが、今朝はこれ以上類の顔を見ていたくなかった。
    廊下を真っ直ぐ進み、玄関で靴を履く。ガラガラと引き戸を開ければ、石で作られた道の左右に並んだ男達が一斉に頭を下げた。「気を付けて行ってらっしゃいやせ、姐さん!」と元気な大合唱が聞こえてきて、顔を顰める。
    門の目の前に停まっている黒い車の横では、後部座席のドアを開けてオレの鞄を手に静かに待っている奴もいる。それに溜息がもう一度零れ、オレは車の後部座席に乗り込んだ。
    (……送迎も、要らないんだがなぁ)
    嫁いでから始まったこの異様な登下校の状況に、オレは痛くなる頭を手で押えた。



    『組長があの三下にカマシたって本当か?!』
    『組長には今、22歳のべっぴんさんがあるからな』
    『くそぉ、見たかったなぁ…!』
    そんな会話を、聞いてしまった。たまたま類が出掛けている日で、日曜日なのでオレも学校が休みの日だった。
    悔しそうにする男達の声に、思考が停止する。廊下の陰に隠れそのままそっと聞き耳を立ててみたが、それ以上は聞き取れなかった。相手の顔が見物だったとか、組長がかっこよくて惚れ惚れしたとか、そんな会話だったと思う。この屋敷に出入りする男達が時折会話に含ます“言葉”の意味を、オレはまだあまり理解出来ていない。辛うじて『組長』が“類”の事だと言うのは分かる。それからオレは『姐さん』と呼ばれていることも。『カタギ』は“一般人”で、『クスリ』は、何か危ないヤツだというのも最近知った。
    正直、『カマシた』というのが何なのかは分からんが、良くない事なのも分かる。だが…。
    『………“べっぴんさん”とは、なんだ…』
    オレの口から、とても小さな声が落ちる。
    無意識に握り締めた手が小刻みに震え、肩に力が入る。思いっきり壁を叩いてしまいたい程の衝動なんとか抑え込み、ゆっくりと息を吸い込んでから吐く。もうあの男達の声は聞こえなかった。話しながらどこかへ行ってしまったのだろう。それに安堵すると同時に、胸の奥に靄が広がっていく。
    『……オレより歳上の女性と、浮気しているのか…』
    きゅ、と唇を引き結び、握り締めた拳を胸元に当てる。左手の薬指にはめた指輪が見えないよう、右手で指を覆い隠した。

    それが三日前の事だ。
    衝撃的事実だった。ふらふらとした足取りでその日はそのまま部屋に引き篭もったが、類は夜遅くまで帰ってこず、そんなオレの心情なぞ知る由もない。
    まぁ、それを知ったところで、あいつがオレのご機嫌をとろうとする訳でもない。
    「元々この結婚も、父さんが類を監視する為にオレを嫁がせたのだろうしな」
    誰もいない教室の自席に突っ伏して、大きな溜息が零れてしまう。家には人が多過ぎて気が休まらない。特に今は、“22歳の美人な浮気相手”が気になってしまって余計居心地も悪い。否、正確には“類の恋人”なのかもしれん。政略結婚のオレが浮気相手だろうか。笑えない話になってきたな。
    「全く手を出されないのも、そういう事なのだろうな…」
    オレは眼中に無い、と。確かに類にとっても、オレを娶る事には利点がある。多少動きづらくなろうとも、いざと言う時にオレの身を人質にとれば警察を躱せるかもしれない。まぁ、さすがにその時は自害してでも類を止めるが。
    赤く染まり始めた空を眺めながら、もう一度溜息を吐く。家に帰りたくないから教室に居続けているが、そろそろ最終下校時間になってしまう。迎えの車もずっとオレを待っているのだろう。痺れを切らして正門から乗り込んできたら、先生方に迷惑がかかる。と言っても、一般人には手を出さないというルールもあるらしいが…。
    「…はぁ……、帰りたくない…」
    どうせ帰っても、類は会合があるから顔を合わせぬままオレだけ先に寝ることになる。あの広い家でも一人だと分かっているが、あの家だからこそ虚しいのだ。
    何度目かの深い溜息を吐くと、オレを追い出そうとするかのように最終下校のチャイムが校内に鳴り響いた。



    「途中で邪魔が入りまして…、どうやら隣のシマのヤツらが、チンコロしたみたいです」
    「それで、そのクスリはどうしたんだい?」
    「デコ助にパクられる前にガラをかわしてきました」
    「…それなら、今度きっちり返さないとね」
    低い声でそう言った類の顔は、笑顔なのに何処か怖い。
    何故、こんな状況になっているのか。オレの腰に回される腕の力が全く緩まないのを肌で感じながら、冷や汗を流す。右側に感じる熱と、頬を微かに擽る髪の感触に視線が泳いだ。
    先程まで、いつも通りだったのだ。本当に。学校の最終下校時間ギリギリまで教室で時間を潰してから、迎えの車に乗って帰ってきた。本当にそれだけだ。だというのに、帰宅するなり類に出迎えられ、抵抗する術もなく奥の広間に連れてこられた。いつもなら一人で着替えて食事をし、風呂に入って宿題を済ませ寝るだけだというのに。
    ズラッ、と綺麗に縦二列に並ぶ男達が、上座に座る類へ視線を向けている。そんな類の隣で腰を抱かれ逃げ出せなくなったオレは、絶対にこの場に相応しくない。
    「エモノは用意出来ているのかい?」
    「はいっ!」
    「奴らのガラス割りますか?!」
    「ロクが出るのは面倒だね。さて、どうやって彼らに切符を渡そうか…」
    口元に手を当て、嬉々とした声でそう呟いた類に、目が点になる。『ロク』とは何だ? 『切符』とは、どこかへ行くのだろうか? 類の落ち着いた雰囲気に騙されそうになるが、他の男達の顔が怖くて絶対“平和”な会話ではないと分かる。
    (それより…、オレはこの会合に参加していていいのか…?)
    いつもなら聞き耳をたてることすら嫌がるというのに、何故今日に限って参加させられているのだろうか。というよりも、この状況はなんなのか。
    ろくに動けず固まっていれば、腰に回された手がするりと制服の上から背を撫で上がる。擽ったさにびくりと肩が跳ね、余計に体が固くなった。そんなオレの方へ、類の顔が寄せられる。
    「そんなに緊張しないで、楽にするといいよ」
    「…い、や……、それは…」
    「あぁ、お腹が空いたのかい? そろそろ一度締めようか」
    「……そ、そういうことでも、ないのだが…??」
    にこにこと柔らかい笑顔を向けてくる類に、開いた口が塞がらない。
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