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    tyaba122

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    tyaba122

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    case4:協力
    閑話休題? とにもかくにも、やっと仲間入り。

    黒星を追う4〇前回のあらすじ

    無事にみのりを助けた類と司。
    二度も事件に巻き込まれた司に、類は自身について話すと約束をした。

    ―――

    「いらっしゃいませ!」

    カラン、という音を立てて、店の扉が開く。一番最初に入ってきた類は、元気な声で挨拶をする店員を見て、表情を綻ばせた。

    「こんにちは、司くん」
    「いらっしゃいませ! る…、カイさん!」

    類の後ろから三人の人が入ってきたのを見て、司は慌てて呼び方を変えた。「テーブル席にしますか?」と司が問い掛ければ、類はそっと首を横へ振る。いつものように司と話しやすいカウンター席へ真っ直ぐ向かい、定位置に座った。調理や片付けをする司は、カウンター内ではこの場所にいることが多い。だからこそ、その向かい側に座れば、司と話しやすい為、類はこの席を好んで座っている。その事に気付いている司も、類が座ったのを見て嬉しそうに笑った。

    「今日は僕の仕事仲間を連れてきたんだ」
    「こんにちは〜」
    「そうだったんですね。皆さん、いらっしゃいませ」

    類の隣に座った瑞希が、司にひらひらと手を振り、その隣に彰人、瑞希とは反対側の類の隣に寧々が座る。そんな四人の前に、水の入ったコップが置かれる。にこ、といつもの様に人好きのする笑顔を向けた司が、「御注文はどうしますか?」と問いかけた。
    メニュー表を覗く瑞希が、「いっぱいあるねぇ」と楽しそうに口にする。そんな瑞希の隣で、類はいつもの様にメニューを見ず司へ顔を向けた。

    「今日のオススメはなにかな?」
    「オススメでしたら、ハムサンドは如何ですか?」
    「なら、それで」
    「かしこまりました!」

    司の返しに、類は迷わずそれを注文する。隣でメニュー表を見ていた寧々は、メニュー表に映る写真を見て顔を顰めた。野菜が入ってるけど…、という言葉は口にせず、カウンター内で準備を始めた司に「アイスティーを」と声をかけた。「かしこまりました」という元気な返事と笑顔が寧々の方へ返ってくる。瑞希や彰人の注文にも、司は笑顔で返した。そんな司を見ながら、類は嬉しそうに目を細める。

    「今日は珍しく他のお客はいないみたいだね」
    「そうなんです。お陰でカイさん達の貸切ですよ!」
    「ふふ、それなら、いつも通り“類”でいいよ。三人は偽名のことも知っているからね」

    司が ちら、と三人の方を見れば、寧々と彰人はそっと顔を逸らし、瑞希はにこりと笑顔を向ける。そんな三人の反応に、司は数秒目を丸くさせた後静かに頷いた。
    カチャカチャとカウンター内で注文された商品の準備をする司に、瑞希がひらひらと手を振る。

    「ボクは暁山瑞希! よろしくね」
    「オレは天馬司です! よろしくお願い致します、暁山さん」

    瑞希の自己紹介に、一度手を止めて司が笑顔で挨拶をする。そんな司に、瑞希はにこにこと笑顔を向けた。何かを言おうと口を開いた瑞希の言葉を遮るように、「こっちは寧々で、そっちが東雲くんだよ」と普段より少し声を大きくして類が二人を紹介する。

    「草薙寧々。よろしく」
    「…東雲彰人だ」
    「お二人も、よろしくお願いいたします」

    素っ気ない態度で挨拶をする寧々と彰人にも、司はにこりと笑顔を向ける。そんな司から顔を背けた二人は、そのまま口を閉ざしてしまう。寧々に至っては、スマホを取り出すとそのまま画面に視線を向けてしまった。
    そんな二人に、司は苦笑を零す。類と瑞希はいつもの事の様に気にしていないようだ。気まずい雰囲気をどうするべきかと考え始めた司に気付いてか、瑞希がにこにこと楽しそうは笑顔でカウンターに肘をつき、少し身を乗り出す。

    「いや~、まさかこんな可愛い店員さんだなんて思わなかったなぁ」
    「え、っと…どうも…?」
    「類が毎日の様に通うから、どんな子か気になってたんだよね。こういう可愛い子がタイプなんて知らなかったなぁ」
    「…」

    にまにまとした顔で隣に座る類を見る瑞希の視線に、類は黙ったまま顔を背けてしまう。そんな瑞希の言葉に、司は首を傾けた。不思議そうな顔をして、「何の話ですか?」と問いかける。そんな司に、瑞希はきらりとその瞳を輝かせた。

    「実は、類って普段は人の手料理とかあんまり食べないんだよ。いっつも携帯食かゼリー飲料ですましちゃうし、放っておくと一日中仕事ばっかで休憩もロクに取らないし」
    「え…」
    「ちょっと、瑞希…」
    「だから、毎日ここに通って休憩だけじゃなく、ちゃんとした食事もしてるなんて聞いてボク驚いちゃって」

    瑞希の言葉を聞いて、司がぽかんと目を丸くさせる。にこにこと笑顔で話す瑞希の隣では、類が手で額を押さえて溜息を吐いていた。左右に座る彰人と寧々は素知らぬ顔だ。
    信じられないものを見る様に司が類へ視線を向けると、どこか気恥しそうに類がちらりと司を見やる。そしてそのままそっと顔を俯かせ、「瑞希が大袈裟なだけだよ」と言い訳の様に呟いた。けれど、そんな類の言葉を否定するように、「大袈裟じゃなくて、ほんとのことでしょ」と寧々が追い打ちをかける。言葉に詰まる類に、「センパイが向こうで外食してんの、滅多に見ませんでしたね」と彰人も追撃する。にまにまと類を見る瑞希は、『それ見た事か』と言いたげだ。
    そんな三人に、類はもう反論出来ない様で、黙ってしまった。それを ちら、と見た司が、類の目の前に皿をそっと置く。

    「それなら、類さんに沢山食べてもらえるよう、オレも料理の腕を磨かねばな」

    皿に置かれたサンドウィッチを ちら、と盗み見た寧々は、驚いた様に目を丸くさせる。メニューの写真とは少し異なったサンドウィッチは、ハムとチーズ、そしてタマゴが挟まっていた。

    (へぇ…)

    ちら、とカウンターにいる司へ寧々が目を向けると、司は真っすぐに類を見つめている。そんな司の顔に、寧々は手を組み、その上へ顎を乗せて口元を緩めた。
    寧々と類は、幼い頃からの幼馴染だ。ゲーム好きな寧々は趣味を発展させ、幼い頃から機械操作に長けていた。ネットを活用した情報収集能力もさることながら、情報操作やハッキング等もお手の物である。その腕を見込んで、類は海外で仕事をする際何かと寧々に協力を仰いできた。そうして二年ほど助手の様に強力していた寧々は、類の勧誘に折れてこの三人と共に組むことを決めたのだ。類の少々強引な作戦も、長年の付き合いで理解のある寧々がサポートする事で成功率がぐんと上がる。類は寧々を仕事仲間として信頼しており、寧々も類を信頼している。
    そんな類が日本に帰国して早々とあるカフェに通うようになった。それを心配していた寧々は、隣に座る類が穏やかな表情でサンドウィッチを食べる姿に、そっと安堵の息を吐く。

    (類の一方通行ってわけでもなさそうじゃん)

    「美味しいよ」という類の言葉に、司が嬉しそうに表情を綻ばせる。そんな二人のやり取りは、ここに来るまで抱いていた寧々のイメージを払拭した。類の外見に釣られた変な女性を想像していた寧々も、司が相手なら大丈夫だろうと心の中で納得してしまう。
    類の為に特別に作られたサンドウィッチ。野菜嫌いな類の為の、野菜の代わりにタマゴを入れたサンドウィッチ。そして、それを食べる類を見る司の柔らかな表情が、寧々は嬉しかった。

    「えっと…司さんは、ここの店長さんの息子さんとか?」
    「いえ。店長はオレの幼馴染で、以前勤めていた会社を辞めた時に、ここで働かないかと誘われたんです」
    「へぇ、なら、司さんはその店長さんと仲良しなんだねぇ」

    司と話をしているはずの瑞希は、にまにまとした顔を隣に座る類へ向ける。そんな瑞希に気付いてか気付かずか、司はにこりといい笑顔で頷いた。

    「そうですね。大切な弟のような奴です」

    はっきりと“弟”と答えた司に、類はそっと胸を撫で下ろす。何事もないかのようにサンドウィッチを食べ進めていく類をちらりと見た瑞希は、またすぐに司へ向き直った。

    「司さんはこの近くに住んでるの?」
    「家は、この店の上の階を借りているんです。住み込みの様なものなので、家賃も安く済んでいて助かるんですよね」
    「へぇ、この上って、司さんは何人家族なの? 三人?」
    「妹とオレの二人だけなんです。両親は十年前に交通事故で…」

    へらりと力なく笑う司に、瑞希が口を噤む。やってしまった。そう思った瑞希に気付いてか、司は雰囲気を和ませるように「そうだ」とその場でしゃがむ。ぱこ、となにかを開ける音がした後、司は大きな皿を手に立ち上がる。

    「よければ、試食してくれませんか? 昨日作った新作のケーキなんです」
    「食べる食べる~!」

    元気な声で手を挙げて即答した瑞希にくすりと笑って、司はケーキを切り分ける。ふんわりとした生地のシフォンケーキを一切れづつ皿に乗せ、冷えた生クリームとイチゴのジャムが添えられる。可愛らしいミントの葉が乗ったシフォンケーキの皿を受け取った瑞希は、目をキラキラとさせてスマホを取り出す。「どうぞ」と司は三人にもケーキを手渡し、新しいカップに紅茶を注ぐ。それをカウンターに置き、「紅茶がよく合うんですよ」と笑う。

    「妹はまだ高校生なので、オレが親代わりをしているんです。だから、冬弥…店長には感謝しています」

    そう話す司の声は、穏やかだった。
    ケーキを一口食べ、類はちらりと店の入口の方へ目を向ける。珍しく、店長は店内にいない。買い出し中なのだろう。店内には司を含めた五人だけ。
    それを確認した類は、静かな声で「司くん」と名を呼んだ。

    「約束通り、今日は僕らについて話をしに来たんだ」
    「…はい」

    類の声音が真剣なものだと気付いた司は、手を止めて類を真っすぐに見返した。
    大切な話だと察したのだろう。そんな司に、類は極力穏やかな表情でその目を見つめ返した。どこから話すべきか。そう一瞬悩んだものの、すぐに類の中で考えはまとまった。

    「まず、僕は警察官だと話したけれど、実際は少し違うんだ」
    「…違う、とは……?」
    「国際特殊捜査官。僕らはある犯人を追って、ついこの前アメリカから帰国してきたんだ」
    「……とくしゅ、…そうさ、かん…」

    聞き慣れない単語に、司が首を傾げる。そんな司に、類は普段アメリカで暮らしていたことや、警察とはまた別の組織として犯罪組織を追っているということを打ち明けた。真剣な顔で話を聞く司に、類は三人が共に犯罪組織を追う仲間だと言うことも説明する。事前に司に全てを打ち明けると聞いていた三人は、類の話を聞きながらケーキをつつく。
    茶化すことなく類の話に耳を傾ける司に、類はふわりとその表情を和らげる。

    「実は、あの誘拐事件の犯人は、ある人物から指示を受けて犯罪を犯したんだ」
    「……ある、人物…」
    「僕らはその人物を“X”と呼んでいるんだ。僕らの任務は、そのXを捕まえる事だよ」

    数年前から急激に活動を始めたX。些細な恨みや妬み、欲望を言葉巧みに煽って犯罪を誘発する。そして、完全犯罪だと謳い、自身の犯罪計画を高値で売りつける。やり取りは主にメールな為、ネット環境さえあれば世界各国で活動が出来てしまう。実際に検挙できた事例はこの三年で数多くあるものの、実際には類たちにも把握できていないものがまだあるかもしれない。人物像は定まっておらず、年齢も主な出没国も特定できていない。

    「今回日本に来たのは、Xの活動拠点がこの国にあるかもしれないという情報を得たからなんだ」
    「…その情報は、どうやって手に入れたんだ?」
    「寧々が、以前逮捕した犯罪者のパソコンをハッキングして、日本からメールが送られていることを突き止めてくれてね」
    「……つまり、この国のどこかに、そのXとやらがいて、犯罪をそそのかしている、と」

    類の説明を聞いた司は、口元に手を当てて考えるような表情をする。そんな司に、類はそっと頷いた。

    「そこで、君にも手伝ってほしいんだ」

    そう言った類に、司がバッ、と顔を上げる。目を丸くさせ黙ったまま固まる司に、類はにこりと笑顔を向けた。

    「Xはバーやカフェのように静かな店でターゲットを選び近付いてくる。悩みがありそうな人へ優しい人のフリをして近付き、相談に乗ると見せかけて言葉巧みに誘導するんだ」
    「…」
    「だから、君にはこの店でXについて情報を集めてほしい」

    カフェで働く司は、その明るい性格もあり客からの人気も高い。類が店にいる時に、司が客から話しかけられる姿を多々見ている。世間話から、ちょっとした愚痴を聞く姿も見ている。そんな司だからこそ、この店に来た客から何か情報を得られるかもしれない。類はそう考えたのだ。

    「無理にとは言わないよ。けれど、もし協力してもらえるのなら、君の安全は絶対に護ると約束する」

    寧々が情報を得る手段はネットの中だ。それはとても広く集めることもできるが、限度がある。特に、今回相手をするXは、人伝でなければ接触できない。ネットやSNSで犯罪者を募集しているわけではなく、実際に会ってターゲットを選ぶ。そして、個人的なメールでのやり取りで全てを済ませ、些細な情報も残さない。寧々とは相性の悪い相手とも言える。
    そんな寧々とは対照的に、司は人との繋がりを大切にする接し方をしている。顔を合わせ、話しやすい雰囲気で人を和ませるのが上手いのだ。このカフェの雰囲気が落ち着いていつつも明るく居心地がいいのは、司と冬弥の接客態度が影響しているのだろう。
    真剣な顔で司を見る類に、司は一度言葉を飲み込んだ。そうして、たっぷり三秒ほど瞼を閉じて黙ったあと、そっとその瞼を上げる。類に負けず劣らずの真剣な顔をして、月の様な類の目を真っすぐに見つめ返した。

    「オレで力になれるなら、ぜひ、協力させてください」

    はっきりと、司はそう答えた。類の目を見つめて、真剣な声音で。
    そんな司に、類が嬉しそうに口元を綻ばせる。

    「君なら、そう言ってくれると信じていたよ」

    迷いのない司の返答が、類は嬉しかった。
    そんな二人のやり取りを隣で見ていた瑞希が、今にも飛びつきそうな程嬉しそうに瞳をきらきらと輝かせる。寧々はどこか安堵した様に肩の力をそっと落とし、彰人はゆっくりと息を吐く。
    「よろしくね、司さん!」と瑞希は椅子から立ち上がると、司の手を掴んでぶんぶんと振り始める。困ったように、けれどどこか気恥しそうに眉尻を下げて笑う司は、「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と控えめに返した。そんな司の手を瑞希から奪うように取り、類が不服そうに瑞希を見やる。「司くんが困っているじゃないか」と口にした類に、瑞希は目を数回瞬かせると、にまりと口角を吊り上げる。

    「類ってば、なにムキになってんの~?」
    「ムキになんてなっていないよ」
    「へぇ。ボクが司さんの手を握ったのが、そんなに嫌だったんだ?」
    「っ…!」

    揶揄うように類にそう言って、瑞希がくるりとその場で半回転する。隣に座る彰人の腕を掴むと、瑞希はぐいっとその腕を強く引っ張って彰人を立たせた。「それじゃぁ、お邪魔虫は退散しま~す!」そう言いながら、文句を言いたげな彰人を引きづって、瑞希は店の入口をさっさとくぐってしまう。そんな二人を追いかける様に、寧々も立ち上がって入口へ足を向けた。

    「じゃぁ、ごゆっくり」

    そう言い残し、寧々はお店を出て行った。後に残された類は、引き留める間もなく出て行った三人が見えなくなると、少し気まずそうに席に座り直す。
    「うるさくてすまないね」と司に謝り、彼の居れた紅茶をゆっくりと飲む。そんな類の目の前で、司はくすくすと笑った。「楽しい人たちですね」と。先程のやり取りを、司は気にも留めていないようだ。類はその事に安心した半面、ほんの少しの虚しさに肩を落とす。
    その後、具体的な情報収集の作戦を二人で少し話し合い、買い出しから帰ってきた冬弥と入れ替わるように類は帰っていった。
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    Replies from the creator

    tyaba122

    DOODLEタイトル決まって無いので、なんて呼ぼう……。
    リリーかな?🖤🤍️✡️⚔️??暗号だな??
    ネーミングセンス無いので、いいタイトルあれば教えてほしい…_:( _ ́ω`):_

    とりあえず、リリーと呼んで決まったらそっちで呼ぼうかな。

    諸注意は前回と一緒です。
    ガーデンバース(騎士side)

    「ツカサくん、なんだか不機嫌だね」
    「そのような事はございません」

    不思議そうにする類は、それ以上何も聞いてこない。きっと、『何かあったのだろう』とそう察しているのだろうな。このように主君に悟らせてしまうのは従者として情けない。情けないが、許してほしい。
    脳裏で藤色のふわふわとしたくせ毛の少年を思い出し、またムカムカとしたものが胸の奥でくすぶり始めた。

    (このオレに対して暇人だと…?! なんたる無礼かっ…!!)

    思い出すだけで腹が立つ。突然目の前から消えた少年は、一体どこの迷子か。
    昼過ぎに警備を兼ねて客人のお部屋の傍を巡回していた時に見つけた幼い子ども。妹の咲希よりも小さい、オレの半分ほどの背丈しかないその子どもは、あろう事か目の前から突然姿を消してしまったんだ。消える直前に言われた『どうやらノワール領の騎士団長殿は大層お暇な御様子で』という言葉を思い返すだけで腹が立つ。魔術師見習いとはいえ、このオレを暇人と愚弄するとは…!
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