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    ottotto503

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    ottotto503

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    エドウィン 出発の日

    ##エドウィン

    「うーん…今までみたいにはいかないよね…」


    ほとんど独り言のつもりで呟いた言葉たちは、しっかりエドに拾ってもらえた。
    怪訝な目で見つめられているのを気にしないふりをして、髪をとく。うん、今日の髪はいい調子。


    「…どの意味での?」


    …しっかり痛いところをついてくるのがエドである。
    こいつには女の子の気持ちを読み取る機能が完全に欠落してるから、気を効かせて聞かなかったふりなんてできない。わかってるのに呟いちゃうあたしもあたしだけど。



    「…エドには関係ない意味での」
    「嘘つけ」
    「…なんであんたってたまに、そんなに自信満々なの」
    「何年お前と一緒だと思ってんだよ、ばか」



    あたしが鏡越しにしかエドと話ができないのは、エドがまだ半裸だからである。何のあとかなんて聞かないでください。ちなみに今は朝です。
    エドのからだなんて、それこそもう何年も見てきた。だけど、これもまた「今まで通り」にはいかないのである。今までみたいに、なんにも気にせずエドを見たりすることはできないのである。



    「…荷造りはもう終わったの?」
    「あ?…ああ、まあほとんど」
    「どうせまた、出発直前にあれがないこれがないって騒ぐんでしょ?」
    「それはお前だろー、俺がいつ騒いだ」
    「…女の子はほら、いろいろ持っていかなきゃいけないものがあるからそういうこともたまにあるのよ。たまに」
    「誰が女の子だって?」
    「殴る」
    「待てスパナは待てごめんなさい許してください」


    ここはきっとずっと「いつも通り」。だからこのやりとりが結構、好きだったりする。
    もっと殴られて痛かったことも、痛かったものもあるはずなのに、エドは極端にこれを怖がる。…まあ、痛くないわけないけども。

    ちらっと見たカレンダー。控えめにちょっと前の自分が丸をつけた日付。今日から片手で数えるほどしか開いていないその日に、誰がどこにいくのか…もう説明する必要もないと思うし、たぶん説明したら泣き虫ウィンリィがすぐに出動するから、やめておこうと思う。

    エドがベッドから立ち上がって、近くの椅子の上にかけてあったシャツを着た。もちろんそれを鏡越しに見守るあたし。いつの間にあんなに背中が大きくなったんだろう。そう思い始めてもう一年は経つのに、いまだにそう感じてしまう。エドは、大人になった。


    あたしはどうだろう。あたしは大人になれたのかな。
    エドは大丈夫なのかな。今までもどんなことでもやってのけてきたあんただから、これからのことも不安には思っていないのかな。

    大人になるにつれて、あたしの中身はどんどん複雑になっていくというのに。


    「…寂しいか?」
    「…え?」
    「…不安か?また暫く離れんの」
    「…、なんでそんなこと訊くのよ…」
    「女心が読めねーからな、どっかの誰か曰く」
    「…ほんとに読めないやつ」


    今度はちゃんと、振りかえって、自分の目でエドを見た。やっぱりエドはいつでも、まっすぐあたしを見ていた。


    「…エドは」
    「?」
    「…エドは寂しくない?不安じゃない?」
    「そりゃ…平気だって言ったら嘘になるけどな」
    「…あたし」
    「…」
    「…ちゃんと覚悟したはずなのに、やっぱりあたしまだ女々しかったみたい」


    数週間前のあたしならこういうだろう。「寂しいとか行かないでとか言って、あいつを困らせちゃダメ」「あたしがしっかり待ってないと、あいつも元気に旅に出れない」。
    そんなの、もう心の隅っこまでわかってる。ちゃんと理解してる。
    でも、人間ってそんなにうまくできなかったみたいで。あたしもしっかり人間で、しっかり女で。
    ああ、せめて行かないでだけは言いませんように。頼むわよ、あたし。



    TSU DU KI TA I
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    ottotto503

    DONEはつこい 無印ED後?何事もなかったかのように服を纏い直して、何事もなかったかのように呼吸を整える。月さえどこかに隠れた真夜中、ひっそり元通りの姿に戻っていく私の様子を、彼は服も纏わずベッドに腰掛け黙ったまま見つめている。

    ここで眠ってもいい? 朝まで一緒にいたいの。一緒に過ごしていたこと、ばれてしまっていいんだよ。悪いことは何もしていないのだから。

    頭の中で暴れ、駄々をこねる本音に蓋をして、元に戻った私は彼を振り返る。彼は「戻る準備」のできた私を、私とおんなじ作り笑顔で出見送る。

    「……じゃあ戻るね」
    「…ああ」

    引き止めて。せめてもう少しだけ一緒にいようよ。お日様が目を覚ます前には戻るから、それまで隣でまどろみを感じさせて。

    かちこちの笑顔を構成するわがまま。戻ると言いつつ部屋の出口を振り返れないことが、その強さを物語る。

    彼の目を見る。彼は私の目を見てる。言葉で表現するのが下手な私たちは、視線で気持ちをやり取りする。受け取る気持ちが、受け取る想いが、正しいのかどうかもわからないまま。

    このままだと本当に、時間が止まって動かない。お月様も眠れないし、太陽は朝を連れてこれない。小さなため息と 1050