連続殺人犯が山に籠っているという情報を聞き大和班の3人は山の中を捜索していた
もし犯人が逃げた時逃がさないようにそれぞれ別の場所から山に入った

「上原！お前がいる近くに小屋があるはずだ！そこに犯人がいる可能性がたけぇ！注意しろよ！」
「わかったわ！」
インカム越しに敢助の声が聞こえる

連続殺人犯なのだから相手は何をしてくるか分からない、念の為に銃をすぐ取り出せるようにして身構える
視界に敢ちゃんの言っていた小屋があらわれた
(気をつけないと……)

その時だった。

森の奥から銃声が響き渡った

（まさか……？）

銃声のした方向へと駆けつけると、小屋の影から逃走する犯人の姿が見えた。
「待ちなさい！！」
迷わず犯人を追おうとし走り出した瞬間……

胸元に焼けるような激痛が襲いかかった。
あつい。そう思った
視界が歪み世界が回転し始める。

（撃たれた、、、？）

そう認識したのもつかの間、二発目の衝撃が今度は腹部を襲った。激痛が走る。
「っ………」

口の中に鉄の味が広がる。為す術もなく体がうつ伏せに倒れ込んだ。

意識はまるで水の中に沈んでいくように、どんどん遠ざかっていく。

（何が、あったんだっけ……？）

思考がまとまらない。
体から、何かが大量に流れ出ている感覚がある。温かい液体が溢れ出している
(これだけ血が出てたら……もう……)


「由衣……！ 由衣ッ！！」

遠くから、誰かの声が聞こえたような気がした。聞き慣れた声。

（……かんちゃん……）
(心配かけたくなかったんだけどな……)

急いで駆けつけたであろう敢助が私の体を優しく抱き起こした。
撃たれたであろう胸元を手で必死に圧迫してくれている

「由衣！ しっかりしろ！ 」

彼の声はひどく震えていた。私を心配してくれている。朦朧とする意識の中

（……ごめんなさい……かんちゃん……）

声を出そうとするが喉が張り付いたように動かない。

呼吸が苦しい。肺に穴が開いてしまったのか
血の味が口の中に広がる。体温が急速に失われていくのが分かった。手先はひどく冷たくなっている。

溢れることを止まない血は敢助のシャツも汚していく
（汚して、ごめんなさい……）

「由衣！由衣！お願いだ……死ぬな……」

こんなに苦しそうな彼を見るのは初めてかもしれない。

死にたくない。彼を一人にしたくない。
しかし、 段々と視界はぼやけて、彼の顔も、はっきりと見えない。

（もう、、、ダメ、なのかな……）


心臓の鼓動がどんどん弱くなっていくのが分かった。もう、長くはないだろう。

（かんちゃん……高明くん……）

二人の顔が朦朧とする意識の中で浮かび上がった。
幼い頃、三人で遊んだこと
刑事になって共に事件を解決してきた日々
彼らと過ごした思い出が走馬灯のように駆け巡る

「由衣……！ 1人にしないでくれ……
死ぬな由衣、！！」


（……かんちゃん……ごめんなさい……）

彼の悲痛な声が心を締め付ける。

私の体はどんどん重くなっていく。
意識は、もうほとんど残っていない。
ただ彼の声だけが私の意識を繋ぎ止めているようだった。

(もう会えなくなるかもしれない）


「かん…ちゃん、、あ…り…が…と……」

最後の力を振り絞って感謝の言葉を呟いた。
その言葉を口にした瞬間私の意識は、完全に途切れた。
視界が真っ暗になり、全てが遠のいていった。体中にあった激しい痛みも、まるで最初からなかったかのように消え去った。