タクフォン(現パロ)フォンが最近可愛い車が増えてるらしいよ、と言ったことから始まるお話です。
☎️Canvasの車が可愛かったな。
「──俺の方が可愛いだろ、」
なァ…?と、狭い四畳半の真ん中に置かれた円テーブルで、適当につけたテレビを見ながら気だるげに肘をついているのは、タクシーだ。煙草の煙をハァー…と吐きながら、タクシーは目の前に座るフォンを見据えた。
「や、そうかもしんないけどさァ……!」
時々こうして真顔でふざけたことを言う従兄弟に、フォンはもうすっかり、慣れきってしまっている。本人は冗談を言っているつもりらしいが……他の人がみたら怒っているのかと誤解しそうな程、この家に居る時のタクシーは、その表情に感情が無かった。
タクシー曰く──表情筋が疲れる、とかで。
家にいる時くらい羽を伸ばして休みたい、との事だった。
しかし……実際に真顔のタクシーを見て、まだ幼いミラーマンが涙目になった事があり──その時から、タクシーは他の目を気に掛けているようだった。
「ン……?なに笑ってんだよ……」
「べっっっつにィ……?」
何だよ、気持ち悪いなぁ……と、不審そうな顔で眉をひそめたタクシーに対しても、フォンはニヤニヤと笑って応えた。
「タクシーさ……何だかんだ毎日俺んちに来てんじゃん……?おもしれェな~って、思っただけ……!」
「……だってお前、俺んち来たら食いもん全部食うだろ……」
タクシーの家、食い物いっぱいあるんだもん、とフォンが言うと、二人養ってンだから……食い物無いと不味いだろうが…とタクシーは不貞腐れたように言った。
紆余曲折あり……タクシーは今現在、ミラーマンとタイヤの二人を養っている。二人とも幼稚園児なので、まだまだ手の掛かる年頃だ。タクシーの住むアパートのお隣の部屋に住んでいるフォンは、タクシーが仕事の間、よく二人の面倒をみていた。──勿論、フォンが無償で面倒見る事など無く……条件付きで、二人の世話を引き受けている。
「……で?今日のリクエストは?」
「うーん……?チャーハン、かなァ……?」
決めとけって言ったろ、とフォンはタクシーに軽いチョップをされた。ヘヘヘと笑うフォンに、タクシーは決まって無いなら飯抜きな、とヘラりと笑って見せる。ようやく笑った、とフォンはそれにつられて笑顔になった。
フォンは世話を引き受ける代わりに、タクシーに“リクエスト”を聞いて貰っていた。それは食べたいものだったり、欲しい情報の等価交換だったり──タクシーの時間だったりする。
「なぁ、今度はランド連れてってくれよ〜」
「ランドだぁ~~~~?」
ハァ……朝から行かなきゃなんねェだろソレ……と言いながら、タクシーは短くなった煙草の火を、灰皿でグリグリと消した。何だかんだ連れてってくれるんだもんなぁ…と、否定されなかった事実に、フォンはにやける口元を隠した。
──こうしてタクシーと一緒に出掛けることを……フォンは密かにデートと呼んでいる。タクシー本人は、そんなことに微塵も気が付いて居ないだろう。……しかしこんな距離感が、いまのフォンにはとても心地がよかった。
──ずっとこのままでも良いのになぁと、フォンは願って止まないのだった。
おわり。