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    迷界リセット(🚖🎲)
    ※迷界のホテルが火事でリセット、ループする前提のタクルー文章です。
    (※何でもいい人向け)(※自宅設定強め)(※死描写あり)

    我が家のタクルーが仲良くなったキッカケ、かもしれないお話です。

    ##GHS
    ##文章
    ##タクルー

    迷界リセット(🚖🎲)「タクシーさん、どこ行くの??」

    住人達が寝静まる深夜。ホテルの正面扉をソッと開けたタクシーに、後ろから声を掛けてきたのは、頭に大きなルーレット盤を乗せたルーレット小僧だった。
    急に声を掛けられ、タクシーは思わずドキリとしてしまう。別にやましいことをしている訳ではない。ただ、これから──。

    「……ちょっと、風に当たってくるだけですよ」

    ルーレット小僧の真ん丸の黒い瞳が、タクシーをジッと見据えていた。タクシーはその視線から逃れるように、扉の先へ一歩踏み出す。

    生暖かい風が好きだなんて、タクシーさんって変わってるね♪

    そう言いながら、ルーレット小僧はタクシーの足元をついてくる。おいおい、勘弁してくれよ…とタクシーが帽子を取って髪をかき上げると、それを見たルーレット小僧は、ちょっと悪い感じがして、そっちの方がモテそうじゃない?♪と言った。冗談はよしてくれ…と言う様に、タクシーは目深に帽子を被り直す。

    「お前はこんな時間まで何してたんだよ…寝れなかったのか?」
    「……まぁ、そんなとこかな♪」

    なんだそりゃ…と言いながら、タクシーはホテル脇に停めた、自分の車の扉を開ける。タクシーが運転席に乗り込もうとすると、隙間から先に車に乗り上げたルーレット小僧は、身軽な動きで助手席を陣取った。シートベルトを締めて準備万端と言った顔で振り返るので、タクシーはハァ……と肩を落とした。子守りはもういいって…勘弁してくれよ…と小声でブツブツと呟きながら、車のエンジンを掛ける。どこ行くの?と言うルーレット小僧の無邪気な声に、タクシーは森、とだけ呟きアクセルをグッと踏んだ。急発進した車にもろともせず、ルーレット小僧はホテルの周辺なんて、森しかないじゃない♪と愉快そうに笑う。ケラケラと笑うルーレット小僧の声に、何がそんなに愉しいんだよ…とタクシーはこめかみを押さえた。

    車がもう少しで森に入ろうという頃。突然、車が後ろから真っ赤な光で照らされた。ルーレット小僧が座席から身を乗り出して後ろを見ると──そこには真っ赤に燃え上がったホテルがあった。

    「わ〜お……よく燃えてるね♪」
    「…火事見て最初の感想がソレかァ……」

    さっきまで自分が居たホテルが火事になっているのが怖く無いのか。はたまた子どもの無邪気さゆえ、そんな事は後回しなのか…。タクシーがそんな事を考え黙っていると、ルーレット小僧はせっせと椅子に座り直して、タクシーさんと一緒に居てボク助かっちゃった♪と言った。床につかない脚をパタパタと揺らしているルーレット小僧の満面の笑みを見て、コイツ…まさか分かっててついて来たわけじゃあ……と、タクシーは一瞬動揺してしまった。あ。と言うルーレット小僧の声にタクシーが前を見ると、車を見て驚愕した顔の干からびた死体と目があった。タクシーが急ブレーキを踏んだ瞬間、ドンッと言う鈍い音がして、死体は塵になって消えていく。タクシーさん、脇見運転はダメだよ♪とルーレット小僧に言われて、お前が居なかったら無かった事故だよ…とタクシーは頭を抱えた。

    程なくして──森の中に車を停め、タクシーはタバコを持ち車の外へ出た。車体に寄りかかりながら一本咥えて、胸の内ポケットから取り出したライターで火を付ける。暇をもて余したルーレット小僧が、シートベルトを外し勝手に運転席の窓を開け、タクシーの横に来る。ここなら吸い放題だね♪と言うルーレット小僧の言葉を無視して、煙が中に入るだろーが……と言ったタクシーは上に向かって煙を吐いた。

    ──────

    森の中をグルリと一周して。途中何度か死体を轢きながら…二人はホテル前へと帰って来た。車から降りた二人の前にそびえ立つのは──いつもと見紛う事なき、あのホテルだ。タクシーは何食わぬ顔で、ねみ〜…と軽い欠伸をしながら、車体をトントントンと拳で叩く。すると車体からタイヤが外れて、ヒトの形に変形した。

    「あ~~~~!!タクシー!!お前、ヒト使い荒過ぎるだろ…ッ!!」
    「いいから…早く車運べって、タイヤ」

    タクシーの分身とも呼べるタイヤは、イーッ!と歯を食いしばってタクシー威嚇した。不満そうな顔をしながらもタクシーの車体に向き直ったタイヤは、その両手を車体に伸ばす。すると三人が眺めていた車はドンドンと小さくなっていき、やがてミニカー程の大きさになった。タイヤはそれを指で摘んで持ち上げると、ほら、とそれをタクシーに渡す。始終を見届けたルーレット小僧は、反抗期の子どもとママみたい…♪と小さく呟く。聞こえていなかったらしいタイヤが、あ…?と振り返ったのを見て、何でも無いよ♪とルーレット小僧は首を横に振った。

    ────


    それからと言うものの……タクシーは何故だか、ルーレット小僧とのドライブを重ねていた。今までは誰にもバレずにいた為、タクシーはコッソリと火事になりそうなタイミングでホテルを抜け出して、適当に外で時間を潰していただけだったが…いつの間にかソレは、行き先を決めてのドライブになっていた。墓場でプアコンダクターのリサイタルを見て、死体と共に石を投げたり。森の中腹に車を停めて、TVフィッシュの群れを見に行ったり。迷界唯一の病院に行き、ドクターを茶化して帰って来たり……そんな下らないドライブだったが、ルーレット小僧はいつも、また行こうね♪と言いながら帰っていくのだった。

    ──そんな日々が続いていたある日。その日もタクシーは、一人ロビーの扉の前に居た。いつもなら、何処からか現れたルーレット小僧が、今日はどこに行くの?♪と上機嫌に聞いてくる頃合いだ。──しかし、数分経ってもルーレット小僧が来る気配は無かった。

    別に、いつもタクシーから声を掛けている訳では無く……絶対に連れて行くだとか、そんな約束もしていない。そもそもルーレット小僧が勝手について来ているだけで、連れて行く義理もタクシーには無い。

    ……無いんだけどな。

    どうにも胸がざわついて、タクシーはホテルの中を歩き始めた。この段階の…迷い混んだゲストが迷界から逃げるか、否かを決断をする数分前の時間。ホテルはシンと静まり返っていて、人の気配が無くなるのだ。タクシーはこの状態のホテルが、どうにも気味が悪く苦手だった。住人が何処へ行っただとか、そんな事はタクシーにはどうでもよい事なので知らないが…ルーレット小僧がいつもこの時間、ロビーに顔を出して居たのは確かだった。

    アイツの部屋は……地下なんだよな……。

    中庭の階段から下に降りると、地下は空気がズシリと重く…暗闇に慣れない目を細めながら、タクシーはルーレット小僧の部屋の前まで歩を進める。強制的に双六ゲームに参加させられた後で、何度か引きずられながら部屋に連れていかれた事があったのだ。机の中に入っていた金平糖を口に詰められて、ほら、まだ遊べるでしょ?♪と言われたのは記憶に鮮明だった。その後タクシーがゲームをクリアするまで付き合わされたのは…言うまでもない。

    暗闇に目が慣れて来た頃、タクシーはルーレット小僧の部屋を見つけた。扉に手を掛けた時、ギニャーーーーと言う叫びに近い声が、何処からかタクシーの耳に届いた。マズいな…と、少し目を泳がせたタクシーが扉を勢い良く開けるも──そこにルーレット小僧の姿は無かった。

    「居ないのかよ……ッ!」

    そう吐き捨てて、タクシーは来た道を走って引き返す。階段を駆け上がり中庭の扉から一階に入ると、廊下はすでに真っ赤な炎に包まれており、タクシーは呼吸を整えながら、額を伝う汗を乱暴に腕で拭った。居ないのならば、このままロビーを一人で出れば良いと。頭では分かっているのに。脚が、動かないのだ。廊下には轟々と勢いを増す炎の音と、誰かの狂った様な笑い声や叫び声が響いている。阿鼻叫喚……地獄絵図とはまさにこの事を言うのだろうと、タクシーはハハッ…と少し声に出して笑った。段々と、楽しくなって来たのだ。自分は一体何をしているのだろうと。いつもの様に外に出ていれば、こんな所で苦しむ事には…ならなかったのに。

    「え…タクシーさん?」

    聞き覚えにある声にタクシーがバッと振り返ると、そこには目を丸くして自身を見つめるルーレット小僧が居た。隣でルーレット小僧の腕を掴みエーンエーンと泣いているのはミイラ坊やだ。転んだのか、膝からは血が滲んでいる。

    「ミイラ坊や、転んで怪我しちゃったの」

    タクシーさん、絆創膏持ってない?と聞かれて、タクシーはハァー…と深い溜息をついた。医務室に行けばあるだろ…と言って、タクシーは歩き出す。炎に包まれた廊下を進んで、医務室にたどり着いた時にはもう、ホテルが崩れ始めていた。タクシーに絆創膏を貼って貰ったミイラ坊やは、ワーイワーイと嬉しそうに跳ね回ってから、お父ちゃんに見せてくる〜!と言って、医務室を飛び出していってしまった。

    ……今から走ればまだ…間に合うだろうか。

    二人きりに残された室内で、タクシーがルーレット小僧に声を掛けようと振り返った時。ガラガラガラッ!と大きな音を立てて室内が崩れ始めた。瞬間的に、タクシーはルーレット小僧の手を掴んで走り出した。わっ!とルーレット小僧の驚いた声が聞こえたが、タクシーは走れ!とだけ叫んだ。

    紅蓮の炎に包まれた廊下を駆け抜けて、角を曲がったらロビーと言う所で、廊下が大きく揺れ、上から天井の梁や木材が降ってきた。刹那、ドンッという強い衝撃で弾き飛ばされ床にうつ伏せに転んだルーレット小僧は、痛た〜い…と両手をつきその場に体を起こした。タクシーさん何するの〜?と振り返るも、そこにタクシーの姿は無く…ルーレット小僧はキョロキョロと辺りを見渡した。

    「タクシーさん…?…タクシー、……!」

    少し後ろの崩れ落ちた瓦礫の山の中から白い手袋が片方、見えていた。トテトテと近寄ったルーレット小僧に、早く逃げな…と瓦礫の中から声が届く。ルーレット小僧がヒラヒラと動く手袋を両手で掴んで引っ張ると、白手袋はスッポリと抜けて取れた。

    「……何で庇ったの?」
    「いいから…早く逃げろって…」

    折角下敷きにならなかったんだから…と、タクシーはルーレット小僧に手でシッシ…と、あっちに行けのジェスチャーをした。それきりタクシーが何も言わなくなってしまったので、ルーレット小僧は仕方無く…両手でクシャクシャにしていた手袋を持ったまま、廊下を駆け出した。


    ──こんな火事の中、絆創膏一つ探す為に残るなんて……。

    やっぱり狂ってんなぁ…と、タクシーは朦朧としてきた意識の中で考えていた。ここの住人はそういうものだと、タクシーは分かっていたつもりだった。

    ──しかしまぁ…それは俺も同じって事か……。

    アイツ、ちゃんと逃げ切れただろうか……そう思いながら、タクシーの思考はそこで途絶えた。

    ────

    幸い開いていたロビーの扉から、ルーレット小僧はホテルの外に出た。いつもと同じ位置にタクシーの車体が停めてあり、ルーレット小僧はその後部座席の扉を平然と開けた。中に乗り込むと靴を脱いで、ルーレット小僧は座席の上に横になる。ずっと握って持って来てしまった白手袋を握り締め、次第に大きくなってきたパチパチと言う音と、目に痛い赤色が車内を照らす中で…ルーレット小僧は、一人静かに目を閉じるのだった。


    ────


    「タクシー♪」
    「……何」

    どうせ燃えるんだから、今更どっちでも変わんないよ♪

    床に片膝を付いて座っているタクシーの肩口から、ひょっこりと顔を覗かせたルーレット小僧はいつもと変わらぬテンションのままで。タクシーは呆れが過ぎてむしろ感心といったような声でまぁ、そうだけどな…と呟いた。燃え盛る部屋の中に二人。今回は火の回りが随分と早かった。少し奥まった所にある書庫に居たため、二人は逃げそびれてしまったのだ。本棚を焼いて迫ってくる火の手を避けて、二人は次第に部屋の片隅へと、確実に追いやられていた。タクシーがルーレット小僧を後ろに追いやって、もうこれ以上は後退できない、となった時に……当人はこの言い草である。

    暇だからゲームしようよ♪と、そんな呑気な事を言い出す子どもに、タクシーはゲームだァ…?と半ばやけ気味に答えた。こんな所で出来るゲームなんてあるかァ?と言うタクシーに、ルーレット小僧は得意げに、ゲームを舐めないでよね♪と笑顔で言ってのける。その笑顔に観念したタクシーは、己の身が動かなくなるまで…ルーレット小僧の提案するゲームに興じたのだった。


    ────


    「……燃えてるね♪」
    「そうだなぁ……」

    煌々と光を放ち燃え上がるホテルを、二人は車に寄り掛かりながら静かに眺めていた。脱出もN回目。この火事ももう何度見たか分からないが、崩れ落ちていくホテルを見ながら、タクシーはあーあー…と溢した。すぐに元通りになると分かっていても、タクシーは何だか、やるせ無い気持ちがいつもフッと湧き上がって来てしまうのだ。

    タクシーがボーッとホテルを眺めていると、腹にトンッと軽い感覚があり、タクシーは視線を落とす。気がつけばルーレット小僧が自身に抱きついていて、タクシーは目を丸くした。

    「おぉ…どうした…?」
    「…………」

    珍しくルーレット小僧からの返事が無く、タクシーは少しだけ身の置き場のなさを感じながらも…その背に手を当て、ソッとさすった。

    「……どーしたんだよ?」

    ンー…?と、ルーレット小僧が話し出せるよう誘導してくるタクシーに、ルーレット小僧はより一層しがみついた。ルーレット小僧は俯いたまま、あんまり無茶しないでよ…と呟く。

    あー…?ハイ…?……あー…。

    どうやら…前回の自分は燃え尽きたらしい。
    タクシーは察して──ルーレット小僧を軽く軽く……抱き寄せた。ゼンショシマス……とタクシーは小声で伝えたものの。その言葉、もう五十回は聞いたよ…?とルーレット小僧にバッサリ切り捨てられてしまった。

    「ご、五十回は流石に嘘だろ……」
    「……さぁ、どうだろうね?♪」

    クスリと、目を細めて笑うルーレット小僧は、昔より随分と表情が豊かになったとタクシーは思う。否…自分が彼に詳しくなっただけかもしれないと、タクシーは目線を逸らし頬を掻いた。

    「タクシ~……」
    「ンー…?」

    ボク、眠くなってきちゃった……。

    そう言って手を伸ばしてくるルーレット小僧を、全くしょうがないな…と言って、タクシーは軽々抱き上げ車へと運ぶ。そのまま運転席へと乗り込んで、腕の中のルーレット小僧に、自分のジャケットを脱いで掛ける。シートを倒して横になると、タクシーの腕の中からスースーと小さな寝息が聞こえ始めた。触れ合っている部分の温もりが、次第にタクシ
    ーをも眠りへ誘ってくる。タクシーは被っていた帽子を少しだけ顔へとずらし……自身も静かに、目を瞑るのだった。

    おわり。
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    迷界リセット(🚖🎲)「タクシーさん、どこ行くの??」

    住人達が寝静まる深夜。ホテルの正面扉をソッと開けたタクシーに、後ろから声を掛けてきたのは、頭に大きなルーレット盤を乗せたルーレット小僧だった。
    急に声を掛けられ、タクシーは思わずドキリとしてしまう。別にやましいことをしている訳ではない。ただ、これから──。

    「……ちょっと、風に当たってくるだけですよ」

    ルーレット小僧の真ん丸の黒い瞳が、タクシーをジッと見据えていた。タクシーはその視線から逃れるように、扉の先へ一歩踏み出す。

    生暖かい風が好きだなんて、タクシーさんって変わってるね♪

    そう言いながら、ルーレット小僧はタクシーの足元をついてくる。おいおい、勘弁してくれよ…とタクシーが帽子を取って髪をかき上げると、それを見たルーレット小僧は、ちょっと悪い感じがして、そっちの方がモテそうじゃない?♪と言った。冗談はよしてくれ…と言う様に、タクシーは目深に帽子を被り直す。
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