てのうち 天気は雨。興味はないけど朝の占いは最悪だし、今朝はジャムの瓶が自分じゃ開けられなかった。でも、今日は最高にいい日でもある。店を五軒回っても手に入らなかった天使のリップを、放課後、我らが化粧番長たる男が有償で譲ってくれると言うのだ。割引で!足だってそれなりに弾む。
窓から見えるさらさらの髪のきれいな先輩も、転んでいる事務員さんも、今は全部全部関係ない。だけれど、化粧番長は学校に化粧を持ち込むくせに、廊下を走らないとかそういうルールには律儀だから、急がず焦らず、お淑やかに会いに行く。そんな遠くもないけれど。
同じ2年B組。私と真逆の窓側の前から二番目の席。それが化粧番長、鉢屋三郎の座る場所。
「テストで付けたときは口は付けてない、けどほんとうに良いのか?」
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