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    Nesule5287

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    ソン・ヒョンジェさんハッピーバースデイと言う事で、リハビリヒョンユジ小話。

    #hjyj
    #현제유진
    #ヒョンユジ

    君が幸せでありますようにあとしばらくでソン・ヒョンジェは誕生日が来る。
    以前の誕生日のように、あの何度も繰り返した様な既視感を味わうことまではいかなくても、今年もまた退屈なのだろうな、と思えば少し憂鬱にはなった。
    だが、粛々と自身の誕生日を準備していたある日、思っても見なかった方面から待ったが掛かった。1人はユジン、彼が言うのはまだ予想は出来たけれど、もう1人は自身も多大に世話になったお年寄りだった。
    2人の意見としては、今年は家族と身内だけのお祝いにしたらどうか、というものだった。
    「ヒョンジェさん、ヨンリが貴方の誕生日祝いをする事を楽しみにしてるそうなんですよ」
    お年寄りもユジンに続く。
    「以前からあの子はおじさんにお祝いをしたいと言っていたんだ。お前はそれを無にするつもりか」
    2人曰く、ヨンリがヒョンジェの誕生日を祝いたがっていると言う。
    「パーティーも必要なのは分かりますけど、家族との時間も大切ですよ」
    家族が出来たのだから、そちらを優先したらどうか、との提案だった。
    それに、2人は言葉に出しては言わなかったが、度重なるヒョンジェ自身の、今でも重荷にもなっている経験を軽減しようという意味も、ヒョンジェは汲み取った。
    ヒョンジェは目からウロコが落ちる思いだった。
    確かにある程度の平和を掴み取った今なら、世界中のS級達を一堂に会させてまで、ある意味釘を刺すように振る舞うことは、もう必要がないのかもしれない。
    けれども、そうして海外のS級達を掌握することは、ヒョンジェにとってはビジネスの大切なチャンスではあるし、何よりも世界の頂点の一人としてのヒョンジェの自負でもあった。
    だからこそ、パーティーは開催する。
    「既に招待状を送ってしまっている。パーティーは取りやめにすることは出来ないけれど、ヨンリの望み通り、家族としての祝いの時間を作るよ」
    けれど、2人からの提案は、あまり動かない心が確かに揺らいだ。
    だから、折衷案として、当日の午前中から昼過ぎまでの時間を作り、そこで身内だけのお祝いをする事を、苦笑して決定した。
    その決定にホッとしたようなユジンの反応に、自分も変わったものだと思いながら、当日の時間配分や予定を考える。
    ありがたい事に、既に少しワクワクしている自分がいた。

    当日、セソンギルドの屋上庭園では、ヨンリが張り切って飾り付けをした花や星の飾りが色取り取りに訪れた客の目を楽しませていた。
    「いらっしゃい!ギョル!」
    ユジンとともに訪れたハン一家、特に仲が良いギョルを、ヨンリは笑顔で出迎える。
    「招待ありがとう、ヨンリ!…ところで誕生日の主役のアイツはどうしたの?」
    ヨンリに抱きつかれながら、ギョルはその側にヒョンジェがいないことに不思議に思いながら、問いかけた。
    「おじさんなら、ケーキを作ってるよ!」
    にっこり笑ったヨンリの答えに、ギョルは顔を少し引き攣らせる。
    自分で自分の誕生日ケーキを作るのか、アイツ。
    そんなことをギョルに思われているとは露知らず、数々の料理や甘いもの(ユジン用にマナ糖を使ったものだ)を用意してお客を迎えたヒョンジェは、ガラスの器に盛られた出来上がった大きなティラミスを、楽しげにユジンに披露していた。
    「どうだろう?以前の誕生日に食べたティラミスを自分なりに作ってみたのだけれど」
    出会って最初のヒョンジェの誕生日に、コンビニで食べたティラミスの味をはるかに上回るだろう、見事な出来栄えのそれに、ユジンはちょっとげんなりしつつも、その美味しそうな様子に後で食べるのを楽しみに挨拶をする。
    「はいはい、美味しそうに出来ましたね。あと、誕生日おめでとうございます」
    そしてピンク色を中心にした大きな花束とプレゼントを手渡す。ヒョンジェは楽しそうに早速プレゼントを開けてそれを広げた。
    ユジンからの誕生日プレゼントは、やはりピンク色を中心としたデザインの布地で作られたエプロンだった。布は見事な上級ダンジョン素材、しかしながらその縫製は何故か少しガタガタだった。
    「もしかしてユジンくんの手作りかい?」
    驚くヒョンジェに、ユジンは顔を赤くしてそっぽを向いて答えた。
    「…一応、そうですよ。子供達の用品を作るついでです」
    ついでとは言うものの、そのエプロンのデザインは色がピンクとは言えども、普段使いに便利そうな、ヒョンジェに似合う出来に仕上がっている。
    「ありがとう。大切に使うよ」
    微笑むヒョンジェは、ユジンが言わずとも、そのエプロンの為にユジンが悩んでどれだけ時間を掛けたかを理解してしまっていた。
    きっと、布地を作るところからウンウン唸って、デザインも何もかも悩みながらヒョンジェを思って一所懸命に作ってくれたのだろう。
    ユジンのそんな気持ちが、ヒョンジェにはひどく嬉しく感じられた。
    その後は、ハン一家の子ども達からも可愛らしいプレゼントを貰い(ギョルからも何だかんだ言われながらも祝われて、ヒョンジェは思わず笑った)、招待されたテウォン、ソヨンやムン・ヒョナ達からも祝われ、手づからの料理を振る舞った。
    これまでの人生で、思いも寄らなかった家庭的な空間に、案外これも良いものだと思いながらも、時間はあっという間に過ぎていった。

    夕方、招待した客人もすっかり居なくなり、はしゃぎ疲れて眠ったヨンリをお年寄りに預けたヒョンジェは、いつものようにしっかりと身なりを整えて武装する。
    ここからは仕事の時間だった。
    借り切った仁川の無人島へと向かい、世界中のS級ハンターや上級ハンター達を呼んだ、己の誕生日パーティー会場に足を踏み入れた。
    てっきりいつもの様に、少し退屈な時間になるかと思われたパーティーは、去年までと違い、ヒョンジェが家族(特にヨンリ)を持ったこと、これまでの世界中を巻き込んだ活躍のお陰か、いつものような乱闘は少し減り、代わりに同じ子持ちの特に既婚女性ハンターに、良く声を掛けられていた。子育てを主とした話に耳を傾け、男性ハンターからは、ヨンリをユジンが生んだ実の子ではないのかとの問いかけもあり、ヒョンジェは笑顔でその問いに無言を貫いた。
    これらも目新しい刺激として感じながら、ヒョンジェは不思議と退屈さの減った時間を過ごした。
    しばしそんな時間を過ごした後、そっと人波を離れて外に出たヒョンジェは、昼間にも会ったと言うのに、無性にハン・ユジンに会いたくなっていた。
    昼間も楽しかったし、パーティーも思ったよりは退屈ではなかったものの、やはりヒョンジェの一番の刺激はユジンだった。
    そんな彼の姿をぼんやりと思い浮かべて、夜空に浮かぶ、今はもう特に心をざわつかせない三日月を眺めていた。
    そんなヒョンジェの頭上に、ふと影が落ちる。
    もしや、と思ったヒョンジェの考え通り、其処にいたのは、ピースに乗った笑顔のユジンだった。
    「今日の主役を攫いに来ましたよ、ヒョンジェさん」
    パーティーに相応しい三揃いの服を着て、きらきらと輝く瞳で手を差し伸べるユジンにヒョンジェは思わず笑って、手を引かれるがままにピースの背中に乗った。
    また、大好きなユジンは自分の思わぬことをして自分を楽しませてくれる。それに、ヒョンジェを優先し思っての、その行動が愛しかった。
    幸せな気分でヒョンジェはその体を抱き締める。
    ユジンの後ろにヒョンジェが座り、2人がピースの翼で空に舞い上がった丁度その時。
    パーティー会場から花火が上がり始めた。
    「ピース!」
    その華やかな空の火に何かを思い付いたのか、ユジンがピースに指示を出す。
    その指示に一声応えたピースが、空に舞う色取り取りの花火を掻い潜り、縦横無人に上に下にとアクロバティックな動きをするのを、ユジンが笑い声を上げた。
    楽しそうなユジンの様子に、ヒョンジェも思わず笑って、その身体を抱き締める。
    花火に合わせてジェットコースターを楽しむ様に散々に飛び回った2人と一匹だったが、その花火が終わる頃、ピースはパーティー会場に戻るのではなく、ゆっくりと離れ始めた。
    そしてしばし降り立った場所は会場からほど近い、別の無人島の屋敷。
    2人を降ろしたピースが空へと舞い上がり、明かりの灯ったその屋敷の中へと勝手知ったるとばかりにユジンが入って行くのを、ヒョンジェは大人しく着いていく。じわじわと、幸せな予感がしていた。
    2人だけになった部屋の中で、振り向いたユジンの顔は、昼間のプレゼントの時よりも更に真っ赤だった。
    「今日は貴方の誕生日ですから、特別です…」
    貴方の恋人として、貴方を祝って上げます。
    言って、自身のネクタイを解き始める恋人のユジンに、ヒョンジェは綻ぶように破顔して、抱き締めたユジンのその唇に口付けた。
    最後の最後に、この恋人は自分が一番欲しいものを与えてくれた。
    この瞬間が、今日この日一番嬉しかった。幸せだった。
    ヒョンジェはユジンを両手で抱き上げて顔中にキスを贈りながら、寝室へと向かって歩く。
    願うことなら、久しぶりの逢瀬なのだから、今日中と言わずに、明日までもその時間を独占したいと考えながら。

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