Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ゆる。

    推しCPに人生を捧げたカプ厨。
    基本文字書き。
    なぜかファイル開けない定期。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    ゆる。

    ☆quiet follow

    自分用に同人誌作りたい!と思って書いてるやつ。
    地味に書き始めて半年くらい経ってしまった…。
    17巻のようなお話。

     あー…やってしまった…。自らの腕の中で気絶している彼女を覗き見る。まだ顔が紅い寧々さんは、おそらくキャパオーバーになったのだと思う。実は、隠しているだけで俺もそうなのだが…。
     ただ、気になることがある。彼女が地面にめがけて倒れてしまわないよう咄嗟に支えたが、彼女の体重が異様な程とても軽いのだ。ちゃんと食べてるのかな…?彼女の周辺環境的には無駄な心配だろうが、思ってしまったのだ。
     彼女の軽い身体を持ち上げる。所詮お姫様抱っこと呼ばれるものだ。とりあえず、彼女が泊まっている客室に連れて行けばいいだろうか。
     カツーン、コツーン
     誰もいない廊下に俺の靴の音が響く。暫くすると、例の客室が見えて来た。あ、どうしよう。両手塞がってるからノックできないじゃん。ひとりおろおろしていると、背後から声をかけられた。
    「どうされたのですか?」
     見覚えのないメイド。もしかして…
    「寧々ちゃん!?」
     いや、最後まで言わせて。お願いだから。
    「倒れてしまわれて連れて来たのは良いのですが、入ることができず困っていたのです」
    「分かりました。部屋にお入り下さい」
     ガチャリ
     扉が開けられる。その中に申し訳なく思いつつも入らせてもらった。今は寧々さんが使っている部屋だからか少し、甘い香りがする気がする。その中のベッドにふわりと寧々さんをおろした。
    「ありがとうございます、あまね様」
    「名乗りましたっけ?」
    「ふふふ、スペード王国の第一王子様の名前を知らないなんて不敬なことできませんよ。あ、名乗っていませんでしたね。私は赤根葵と申します」
     そうニコニコと笑う彼女の名前はどこかで聞いたような気がした。
    「もしかして…『アオちゃん』?」
    「蒼井さんと知り合いだったのですね。そうですよ」
    「…なるほど、蒼井が浮かれてた理由、なんとなくわかったな…」
    「?」
    「すみません、独り言です」
    「そうですか。…よろしければ、恋バナしてもいいですか?」
    「え?あ、いいけど…」
     いや、唐突すぎない!?とツッコミそうになったが、寸前で我慢する。その代わりに敬語が崩れたけども。でも、よくやったよ、俺。と内心褒めまくっていると、アオイちゃんは口を開く。
    「では、私の話から。数年前に寧々ちゃんの付き添いといっても、行儀見習いとしてなんですけど、この国に来国したことがあるんです。これでも一応、男爵家の娘なので一般参加をしていたのですが、途中寧々ちゃんの姿が見えないことに気付いたんです。でも、抜けるに抜けられなくて、困っていたところに同い年くらいのある男の子に出会ったんです。」
    「もしかして…蒼井?」
    「そのまさかです。その時、茜くんは私と共に寧々ちゃんを探してくれて、見つけたのですが寧々ちゃんが男の子と談笑していたので会場に戻ったのですが…」
     アオイちゃんの表情が曇る。が、慈しむような顔をしていて、どんな心情なのか予測がついた。急に真顔になったかと思うと、
    「――求婚されたんです。茜くんに」
     凛とした声で発した。デスヨネ〜。知ってた。というか…あれ見られてたの!?ねねちゃんと"花子"として初めて出会った時のこと。だから、蒼井知ってたのか。混乱しているのにも拘らず、何故か冷静に考えられた。
    「あまね様は寧々ちゃんのこと、どこが好きなんですか?」
     正直、できるなら振らないでほしかった。でも承諾したの俺だしな…。あーともうーとも取れない音を発していると、困っている俺を見かねたのか、にこりと笑い言う。
    「寧々ちゃんのこと好きなんですよね?」
     何が何でも否定は許さないと言うような間。怖い。
     ただ、それが否定するまでもなく言えない本心なのが俺を動揺させた。だからか言葉を発せず、頷いて答える。
    「…全部?」
     寧々さんの好きなところなんて幾らでもある。でも全部言うなんて忍びなく、まとめて言ってしまった。挙げたらきりがない。例えば…ルビーのような瞳や絹のように綺麗な白い髪。ソプラノの声。花が咲くように笑う姿。全部、ぜんぶ好きなんだ。言ってしまえば愛しているんだ。
     アオイちゃんはキョトンとした顔をした後、笑みを浮かべて
    「私とあまね様って似ていますね。好きな人に想いを伝えられないところとか。……私も言えるかなぁ…」
     と言った。後半は彼女の呟きのようで、本心なんだろう。かける言葉なんてないのだろうけど、俺にも分かるから放っておけなくて
    「大丈夫だよ。俺達は生きている限り、幾らでもチャンスがあるんだから」
     口をついた言葉はそれだけじゃない気がした。
    「そうですね…ありがとうございます」
    「では、そろそろ行きますね。寧々さんのことよろしくお願いします」
    「任せて下さい」
     不思議な信頼関係が築けたような気がした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator