風見と伊織が入寮することになった独身寮は比較的規則が緩く、門限と共用部の掃除当番を守れば大丈夫だというところだった。指導を行う目付役の先輩曰く、かつてあまりにも厳しいルールに縛られ苦しい思いをしたから最低限を守ってくれれば良いという考えの持ち主だったからだ。それは裏を返せば、新たに入寮した風見と伊織に言外で警察官としての責任を与えるものであったことは、二人とも重々承知していた。この最低限を守れない者は警察官として、社会人として不適格。風見は特に、ルールが緩いからこそ気を引き締めなければと自らを奮い立たせた。
その日は、新人である風見と伊織を歓迎するためにと所轄の幹部が寮に訪れ懇親会が開催された。万が一の緊急出動に備えて酒は並ばない、まるで高校生の頃を思い出すような懇親会だった。
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