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    manju_maa

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    manju_maa

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    先日書いた金女主漫画をSSにしたものです。漫画の時以上に私の性癖がダダ漏れになっております。

    生きてる音と金女主 SSver……ん、…くん、…とくん。
    音が聞こえる。
    眠りで沈んでいた意識が浮上していくにつれ、音は大きくなっていく。
    ドクン、ドクン、ドクン。
    意識が覚醒する。
    ずっと耳に響いていた音──それはゆっくりと胸を叩く心臓の音だった。

    「………………」

    呼吸に合わせてゆるやかに上下する胸の上に私は頭を乗せている。
    どうやら無意識のうちに人肌を求めて移動して、隣で寝ていたギルガメッシュの胸の上に乗りかかるようにして眠ってしまっていたようだった。
    いつもならすぐに押し除けられてしまうのだが、今晩は相当熟睡しているらしい。普段の傍若無人ぶりからは想像できないほど綺麗な寝顔が、下りた金色の前髪から覗いている。起きる気配は今のところない。

    ギルガメッシュがこのように直に寝姿を晒すようになったのは、こうして地球の外で旅を始めてからの事だった。
    月の裏側では私が起きる頃にはとっくのとうに起きていて、寝ている姿を見せることは滅多に無く、あるとしても大体は玉座に座ってうたた寝している程度だったのでじっくり見ることはなかった。
    元よりサーヴァントに睡眠は必要ない、とはその頃の彼が言っていた言葉だったが、それが今ではこれなのだから、なんとなく笑ってしまう。
    そう言ってみたところ、「寝食を共にするのも旅の醍醐味であろう」とのこと。
    ギルガメッシュの性格と生前の立場を考えても、彼がここまで警戒心がなく無防備な姿を見せる瞬間というものは友の前以外ではほぼ無かったと思う。
    だというのに私の前でもそういう姿を見せてくれるというのは、彼の中では私に対してもそうしても良い相手なのだと思ってもらえているのかなと考えたりすると少し嬉しくなる。
    我ながら本当に絆されたものだと思うが、それはお互い様だと思う。

    それならばと、私は温かい体温を感じながら改めて耳を傾ける。
    すー、すーと静かな寝息。心臓はその呼吸と同じように、とくん、とくんと穏やかなリズムで彼の胸の中で拍動し続けている。
    同じ速度、同じ音なのに私のものとは決して被らない鼓動の音。
    実はこうしてギルガメッシュの心音を聞くのは初めてのことではない。
    二人で一つのベッドに寝ている以上は密着しないで寝るというのは不可能に近く、ギルが私を抱き枕代わりにして抱き寄せる(もちろん寝ボケている)時がよくある。
    そうなる度に私はいつも彼の胸に身を寄せて、この音を聞いていた。
    その度にいつも、こう思う。

    ああ、やっぱり───安心するなぁ、と。

    こうしている時間が私は好きだった。
    サーヴァントであるギルガメッシュの今の身体は、あくまで影法師として魔力で編まれた仮初の身体であり、彼が持って生まれた身体で生きていた頃のものではない。
    しかし、人並みの体温を持ち、心臓が血液を全身に送り出しているその身体は間違いなく人と同じように生命の伊吹があり、サーヴァントとしての彼とこの世界を結びつけてくれている。
    だからこそ耳に届くこの音がある限り、今日も私の王様はこうして私の隣で生きて、笑いかけてくれる。
    そう思える瞬間が───何よりも嬉しくて、何よりも幸せだから

    「……あったかい」

    心地良さと幸福感に心を満たされながら、目を閉じる。
    安らかな鼓動と寝息はいつまでも耳に。心身共に温かく。
    そうして彼が生きている音を子守唄代わりにしながら、私は再び意識を落とした。
    叶うならばいつまでも────そう願いを込めながら。



    〇 〇



    「……………………」

    圧迫感による息苦しさにギルガメッシュは目を覚ます。
    寝る時に服を着るのは好みではないが、そう言うにはこの星の気候は肌寒く、渋々薄手のシャツを着て寝たので多少の暖かさがあるのは当然の話だが、今は暖かさを超えて暑い。
    どうも、何かが身体に乗りかかる形で密着しているようだ。
    眉根を寄せて、ぼやけた瞳を目で擦りながら、視界を下に向けてその元凶を見る。

    「……む…」

    そこには案の定、自分の身体を布団代わりなのか枕代わりなのか湯たんぽ代わりなのか分かりたくもないが、とにかく下敷きにして眠りこけている契約者の頭があった。
    あまりの突飛な光景に本来見ないはずの夢でも見ているのかと考えかけたが、何度目を擦っても寝惚ける視界を凝らしても消えないので、残念ながら現実のようだった。

    間抜けな寝顔が自分の身体の上で呑気に寝息を立てている。
    王の身体を枕にしておきながらこのような気の抜けた顔を晒すとは、どこまで厚顔なのだろうか。いや能天気の間違いであったか。
    …などと考えながら、はぁ、と大きく溜息。
    どうしたものかと思案しようとしたが、とにかく、暑い、息苦しい、そして重い。
    コレのために眠りを妨げられた上に思考に時間かけることが何よりもバカバカしい。
    ギルガメッシュは自分に乗りかかる少女の肩をガッと掴むと、そのまま薙ぎ払うように横に振り落とした。

    「あ”痛っ!?」

    潰れたカエルのような汚い声と共に聞こえるゴトッという音。
    勢い余ってベッドの外まで落としてしまったようだが、まあ些末な問題だろう。
    特に気にすることなく、そのまま少女が落ちた方に背を向ける形にして寝返りを打ちながらギルガメッシュは再び眠りに───

    「ちょっと!何も落とすことなくないか!?タンコブ出来たよこれ!どうしてくれるんだ!」

    まあ、涙目になりながら耳元で騒ぐ少女の声につけるわけもなく。

    「ええい喧しい!そこは王の身体を無断で寝具扱いしておきながらタンコブ一つ程度で済ませる我の寛大な御心に感謝するところだ、このたわけが!!」
    「するわけないでしょ!?あーもー折角人が良い気持ちで寝てたのに!たまには私の心地良い眠りのために大人しくしててくれても良いと思うのですが!!」
    「ハッ、寝言は寝て言え雑種めが。何故我が貴様なんぞのために寝苦しい夜を明かさねばならんのだ」
    「私だってギルの抱き枕にされてるけどいつも起こさないように大人しくしてあげてるのに!!」
    「対価もなしに雑種ごときの身体を我が玉体に預けることを許しているのだ。そこは栄誉に浴するところだ」
    「浴するか!裸族にホールドされて嬉しさなんて微塵もあるわけないだろ!!」
    「なんだと貴様!!」

    そうしていつものように、他愛ない喧騒が始まる。
    それは二人の旅路が辿った、一つの夜の思い出。

    嬉しさと心地良さは別のもの──それは少女だけの内緒の話。
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