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    manju_maa

    @manju_maa

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    manju_maa

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    進捗なので「」ないです
    ベルベットルームがめちゃくちゃチートみたいになってますが実際のところ何処まで出来るかは知らない人間が好き勝手に書いてます。

    来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話通りがかりの花屋で買った花束を母の墓石の前に置いて、それを見下ろす。
    赤色が好きだと言っていた母は、いつも僕の目を見て綺麗な色だねと褒めてくれていた。だから今日持ってきた花も赤色のものを選んでもらった。

    ………………

    カバンから取り出したアルバムを開く。
    そこには幼かった頃の自分が楽しそうに笑っている写真が沢山収められている。これは全て暁さん──もとい蓮が撮影したもの。
    アイツが消え、その存在が無かったことにされた今は、蓮ではなく蓮の代わりに現れたあの女性が撮影したものということにはなっているが、これは間違いなく蓮が撮影したものだ。アイツは僕の写真は親バカレベルで沢山撮っていたくせに自分が映るような写真は一切撮らなかった。今思うと、こうなることを最初から知っていたからなのだろう。

    ……このアルバムは家にあったものだった。あれから、改めて自宅……彼女の家に行って話し合った。
    話し合ったと言っても、彼女からしたら学校のことや昔のことなどの他愛もない思い出話。しかし、彼女との関係をゼロからの始める僕にとっては大切な時間だ。
    蓮の穴埋めのように突然現れた彼女を避けて一切の関わりを持たないという選択をするのは簡単だが、僕と彼女が未成年の高校生とその保護者の立場である以上どこかで限界が来ることは間違いない。今のうちにある程度の距離は縮めた方がいいと思ったのだ。
    話し合って判明したことだが、元木という名前の彼女は母の古い友人だった。母が存命だった頃も何度か会ったことがあったそうだが全く覚えていない。
    母が死に、僕が親戚間をたらい回しにされていることを知った彼女は、母が追い詰められていたことに気付けなかった罪悪感もあり、いてもたってもいられず僕を後見人として引き取った、ということになっていた。
    もしかしたら『前』も知らないところで気にかけてもらっていたのかもしれない。しかし『前』は遠方にある親戚の家に行くこともあったから、色々と間に合わなかったんだろう。…まあ、もう終わった話はやめよう。

    とにかく。僕の中で明智吾郎を引き取り、育て上げたのは蓮だ。しかし僕以外の人間の中では元木さんがそれをしたことになっている。
    幸いと言っていいかは分からないが、蓮の立場が彼女になったこと以外の出来事は全て記憶通りらしく、彼女と話が食い違うことはなかった。
    しかし、この頭が記憶している思い出は全て蓮と二人で過ごした思い出だ。彼女との思い出ではない。
    それをしっかりと理解している以上、彼女との距離がこれ以上縮まる日は来ないだろう。

    ……母さん

    来栖暁────改め雨宮蓮と別れた入学式のあの日からあっという間に二年が経ち、高校三年生の、運命の一年がやって来た。
    あれからの日々は、ある意味『前』よりも激動だったと言える。
    まず、探偵業は今回も始めた。
    前の時は自分で起こした事件を自分で解決して探偵王子としての位を獲得していたが、今回はマッチポンプには頼らない完全なゼロからのスタートだった。人探しなどの細々とした些細な依頼を積極的に引き受けて、積み上げ、そうして警察関係者から顔を覚えられたのはつい最近で。勿論その過程で冴さんとも以前のように事件について話し合い、時には協力し合える関係まで持ち込めた。
    それを隣で見ていたラヴェンツァは『汝は我…我は汝…』と小声でロキみたいなことを言いながら微笑んでいたが、何を思ってそんなに笑っているかは直接聞いたことはない。

    まだ前ほど探偵王子としての人気は強くはないがテレビのインタビューは何度か受けて、自前の容姿のおかげでSNSではかなり話題にされている。このまま引き続き冴さんと共に探偵業を続けていけば前と同レベルの知名度にはなれるはず。
    そして、6月10日。秀尽学園の生徒達が社会科見学としてテレビ局にやって来るあの日に行われる番組の収録にゲストとして出演すること。
    そこで、怪盗団と接触を図る。それが当面の目標だ。

    長かったけど、やっとスタートラインに立てたよ

    蓮とは毎年来ていたが、『前』の時は獅童の懐に潜り込んでからここには来なかった。
    今思うと、心の底ではこんなやり方を彼女は望んでいなかったことを分かっていて、母に対して後ろめたい気持ちがあったからかもしれない。
    でも今は違う。母の無念を晴らすために。しっかりと母に謝罪をさせるためにここに居る。ここまで来た。

    絶対に、この手でアイツを改心させる

    結局、母が獅童に何を望んでいたかなんて分からない。
    もしかしたら獅童の改心ですら、彼女からしたら余計なことかもしれなくて、だから結局これも自己満足なのかもしれないけれど。

    これは母さんの代わりに僕を育ててくれた大切な人の願いなんだ。改心なんて望んでないとしたらごめん。……けど、絶対に謝らせるから

    バタンとアルバムを閉じて、再びカバンに入れる。
    一日分の着替えが入ったボストンバッグ。これから新幹線に乗って、蓮の地元に行く。蓮が獅童によって冤罪をかけられるのは、今日の夜だ。

    じゃあ行くよ。……またね、母さん

    踵返し、墓地を後にする。
    ふわりと全身を包むように吹いた風は、背中を後押しするものなのか、はたまた別のものなのか。
    考えることはしなかった。



    ○ ○


    ……まあ。これが噂に聞く新幹線というものですか。随分早く走るのですね
    普通の電車と同じ速度で走ってたら途方もない時間がかかるからね

    東京駅で新幹線に乗り込み、すぐに通り過ぎて行く景色を張り付く勢いでラヴェンツァは興味深そうに眺めている。
    時間が時間なのか視界の範囲内ではあるが周りに他の客は居ないので背格好だけで見ればかなり目立つ彼女が人の目に届くことはない。表情こそあまり出ていなくとも楽しそうに外を見ているその横顔はようやく見た目と中身が追いついたように見えた。

    そういえば、今更だけど君は蓮と一緒に来たんだろう?ならそのうち消えてしまうの?
    いいえ。元より私は精神と物質の狭間の部屋の住民ですので、時間の概念もなく人の理からも既に外れております。帰ろうと思えばすぐに主の元に帰還することは可能です。ですが現状主の部屋は悪神に乗っ取られ、悪神によって切り裂かれ正気を失っている現在の私もそこには居るでしょう。……ですので……
    その部屋への入口が一緒なのだとしたら帰れないわけか
    はい。恐らく乗っ取られていることで空間の歪みが発生している可能性もありますので
    まあどのみち君は今後あんまり姿を見せない方が良さそうだね。今のところあの声はもう聞こえないけど、まだその悪神は僕のことを見てる可能性もあるわけだし
    分かっております。……ですが、もう少しだけ景色を楽しむ権利くらいは私にもあるはずです!
    …………まあ、君が良いと思うなら好きにしなよ

    マナーモードにしておいたスマートフォンがバイブ音と共に小さく震える。見れば取材や撮影のオファーのメールが数件と、冴さんからのメールが一件来ていた。
    スケジュールが被ってないことを確認しながら全てのオファーを引き受け、冴さんからのメールの返事も返す。
    そうこうしている内に、電車は蓮の地元に一番近い駅に到着した。


    ○ ○


    蓮の地元は何の変哲もない住宅街だった。
    『上京』だなんてワードを聞くと必然的に田舎者というイメージが定着してしまうが、少し電車に乗れば大きな駅がある都市もあるし、車道が少ないおかげで余計な音がない静かでのどかな場所だった。個人的には東京なんかよりこういう場所の方が好みまである。
    だからこそ、そんな静かな場所であればあるだけ、

    「やめてください…!離して!!」
    「大人しくしろ!」

    ……そういう、人と人が争う大きな声は嫌でもすぐに聞こえてくるのだ。
    声がする方に近づいて、物陰に隠れて様子を伺う。
    抵抗する女性の手を無理やり掴み、すぐそばに停められている車に連れ込もうとしている男の後ろ姿がここからでもよく見える。
    男は泥酔しているのかふらふらと足元がおぼついていないにも関わらず、必死に抵抗する女性の手は決して離さない。女性からしたら恐怖でしかないだろう。
    ……しかも、その相手がよりにもよってあの獅童正義であれば、その恐怖は数倍にも膨れ上がる。

    ……チッ

    あの男の女癖の悪さは何年経とうと変わらない。
    そうして無理やり関係を迫られ、果てに捨てられた女性が母の他にどれほどいた事か。考えるだけで殺意が湧いてくる。まあ殺したい気持ちは山々だが、殺さない。
    しばらく腹の底から湧いてくる苛立ちを抑えながら、『その時』を待つ。

    っ!

    そして、その時はすぐに来た。
    獅童と女性のただ事では無い様子を戸惑うように伺っている人影が一人───この時代に生きる、本来の雨宮蓮だ。
    今となっては『前』の時に蓮と過した半年よりも老けた蓮と過ごした時間の方が長いわけが、それでも僕にとっての雨宮蓮はあの雨宮蓮一人のみ。誰が好きこのんで歳をとって老けたアイツの顔なんか毎日見なくてはならなかったのか今考えても意味が分からなくて腹が立つ。しかも髭ひとつ生やしてなかった。無駄に整えやがって。ゴミのくせに。クソが。

    ……………

    ……冷静になれ。今はそんなことを考える暇は無い。
    獅童に向けていた視線を蓮に移す。どう見てもただ事ではないが、自分が近寄っていいものかと思案している様子だった。当たり前だ。普通なら誰も近寄ろうとしない。
    だけど、

    なんだガキ……見世物じゃねえぞ!
    た、助けて……!
    ……っ!

    女性の声に蓮の躊躇いの表情が消える。迷いなく歩み寄り、後ろから獅童の肩に手を置いた。
    ……助けを求める女性を助けるために。『困っている人を助けたい』という雨宮蓮の中にある正義を、貫くために。

    邪魔するなガキ………がっ!

    そうして蓮の手を振り程こうと大ぶりで身体を捻った獅童は、覚束無い足のせいで態勢を崩し、そのまま地面に倒れ込んだ。
    立ち尽くす蓮と女性。ゆっくりと起き上がった獅童は出血した頭を抑えながら、蓮を睨みあげている。

    ガキ……この俺に手を出しやがったな……!?訴えてやる!!覚悟しろ!!

    そして蓮は間もなく獅童が呼びつけた警察に連行される。
    蓮の覚悟も助けも虚しく、女性は獅童と共に車に乗り込んでいき、その場には誰も居なくなった。

    あれが、雨宮蓮が犯した傷害事件の全貌。
    前の時から蓮の裁判については資料を見て知っていた。証言をした女性の言葉も、逮捕した警官の言葉も支離滅裂で、けど蓮自身の証言は誰も聞き入れない。素人目で見ても不自然すぎる裁判だったから、おそらく冤罪なんだろうと思っていた。
    あの頃も、そして実際に目の当たりにした今も、蓮に対しては馬鹿な奴という気持ちしかない。大人しくしてれば、こののどかな街で家族に囲まれて平和に暮らせたのに。

    …………

    ……そんなことを考えてしまう自分の中には、そんな少年の未来を潰した男と同じ血が流れている。反吐が出る話だが、流れているからこそ、『前』の時は数多の人間を復讐を言い訳にして躊躇無く殺すことができてしまった。

    ……結局蛙の子は蛙ってことか

    溜息をつく。考えていると鬱になりそうだった。
    青い蝶が降り立ち、肩に留まる。

    ……助けなくて良かったのですか?折角ここまで来たというのに

    ラヴェンツァの声がすぐ横から聞こえる。
    姿は見せずともその蝶姿の時でも喋れるらしい。

    食い止める気がないならなんで来たのかって話?蓮には悪いけど、アイツには前歴持ちになってもらわないと困るんだ。じゃないと、アイツは四軒茶屋に来ないから
    ……! なるほど。では貴方は、それを見届けるために?
    それもあるけど……ちょっと違うかな

    持っていたスマートフォンのギャラリーアプリを立ち上げて、ひとつの動画を再生する。
    動画は獅童が女性に迫っているところから始まり、それに近づいて獅童の肩に手を置く蓮。そしてそれを振り払おうとして一人で転ぶ獅童。その一連の流れが全て綺麗にハッキリ収まっている。夜だというのに画質が良いので顔も、声もしっかり分かる。証拠としては申し分がない抜群のものだ。そのためにカメラの性能が高いスマートフォンを買ったのだから当たり前の話だが。

    今日助けなかった分、後でコイツを冤罪の証拠として提出して後腐れなく完全勝利の形で助けてやろうと思っただけだよ

    だが、これは全て蓮があのバカ軍団と共に心の怪盗団として獅童を改心させることが前提の話だ。ここまでやっておいてアイツが怪盗にならなかったらこの二年間共々全て無駄になるわけだけど。

    そこはもう信じるしかない。
    アイツの中の正義が、今日の出来事をきっかけに腐っていないことを。


    ○ ○


    ここ連日の不審死事件、貴方はどう見る?明智君
    ……そうですね

    冴さんと渋谷で待ち合わせを約束していた4月12日。
    回る方の寿司屋のテーブルを挟んで彼女が持ってきた資料に目を通しながら、考える素振りをするように顎に手を添えた。

    …………

    僕との関わりがない獅童正義は異世界を知る術を持たない。故に現状、廃人化や精神暴走事件とそれに伴う事故はは起きていない。しかしその代わりと言うべきか、連続不審死事件という形で既に何人かの人間が謎の死を遂げている。
    最初に聞いた時は生きた心地がしなかったが、蓋を開ければ簡単な話だ。
    冴さんからの資料に書かれている死んだ人間達は、前の時に獅童から直接廃人化──つまり殺すよう指示された奴らだった。
    前の彼らは獅童が総理大臣になる上で障害になると判断され、黒い涙を流しながら死んでいった。死んだ時期も前と同じ。獅童にとって害になる者が死ぬのであれば手段は問わないのだろう。要は自分の手が汚れなければ頼む相手は誰だっていいのだ。
    前の自分がまさに獅童の操り人形だったことを思い知らされるようで、思わず舌打ちしそうになった。

    ……不審死と言っても死因から見ても他殺でしょう?証拠も一つも無いし、相当の手慣れですよ。本当に追うんですか?
    当たり前でしょ。だからこそ貴方の意見を聞きに来たんだから

    犯人の目星は付いているが、分かっているからと言って逮捕に踏み込めるような相手ではない。
    だからこそ獅童はその腕を見込んで殺しの依頼をし、そして相手も決して足がつかないと信用してその依頼を受けている。ある意味、僕より理想的な協力関係だ。
    犯人確保に燃えている冴さんには申し訳ないが、おそらく獅童が改心したとしても実行犯が逮捕される日は来ないだろう。

    正直に言えば手に余ります。これでもか弱い高校生なんですから、僕
    ……よく言うわよ。人に寿司奢らせておいて
    相手はプロの殺し屋とかその類のものですよ。ここまで言えば冴さんなら分かるでしょう?下手に首を突っ込むとターゲットにされかねませんよ

    警察内部は特捜部長がアレである時点で信用できるのは彼女一人のみ。下手に突っ走られて殺されては元も子もない。
    前の時に逮捕された蓮が生きてルブランに帰れたのは、おそらく怪盗団が冴さんを協力者として引き入れたからだ。
    だったら、尚更彼女には死んでもらっては困る。獅童の立件に冴さんの存在は必要不可欠だ。

    …でも

    まあそう簡単に引くとは思っていない。
    彼女もまた、自分の正義には正直な人だったから。

    …分かりました。じゃあ、ここだけの話を言いますけど…個人的に追ってる男が居るんです
    ……貴方が?
    ええ。誰かは今は言えませんが、そいつの力があればそういう存在も顎で使える可能性がある。実行犯は無理でも、教唆犯であれば捕まえられるかもしれない
    …! 明智君、それって…
    冴さん。『その時』になれば、貴女にも協力を仰ぐつもりです。だから、それまではこの件から手を引いてください。お願いします

    前の時、彼女と会話するときは少なくとも五割は嘘が入っていた。
    しかし今回の、今言った言葉は全て本心から出たものだ。馬鹿な女と前は言ったが、ここまで言って食い下がるほど彼女は馬鹿ではない。

    ……分かった。今は貴方を信じるわ。けど、私にそう言った以上、貴方も下手に首を突っ込むのは止めるのよ
    大丈夫ですよ。ミイラ取りがミイラ、だなんてことには絶対になりませんから
    まあ、貴方は一筋縄じゃいかなさそうだものね
    そうそう。…というわけなので、景気づけに大トロ頂きますね。ゴチになります、冴さん
    ………そういう図々しいところのことを言ってるのよ

    食事と会計を終え、センター街を冴さんと共に歩く。
    視線を前に向けて、思わず声が出そうになった。

    『でよ!───の方法だけど!』
    『声が大きい』
    『あっ、わり…』

    見覚えのある秀尽の制服に身を包んだ男子高校生が二人、向かい側から歩いてくる。
    見間違えようもない。雨宮連と、そして坂本竜司の二人だ。
    こちらが一方的にいわゆる前世的な記憶があるから知っているだけで、面識がない彼らと僕はそのまま何事もなくすれ違う。

    「(まずは第一歩、ってところか)」

    蓮は秀尽生となり、そして怪盗団の初期メンバーである坂本竜司と親しくなっている。
    まだこの時点ではペルソナに目覚めているかは分からないが、この事実が分かっただけで今日は大きな収穫だった。

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    Replies from the creator

    manju_maa

    DONEタイトル通り。二番煎じに二番煎じを重ねてテンプレを煮詰めたような話。たぶん主明
    ※ペルソナとか異世界とかなんもない本編とは全く関係ない謎時空
    ※明智が架空の病気(※ここ大事)で心臓弱い子
    ※明智ママがガッツリ出てくる。
    ※なんでも許せる人向け
    小学生の病弱吾郎くんと蓮くんが出会う話①この街には小学校の登校路から外れた道を行くと、低めのフェンスに囲まれたかなり大きい家がある。アニメなんかでよく見るお屋敷のそれ。道路も公園も、なんなら住宅も少ないその区域に静かにひっそりとそれは佇んでいた。
    フェンスの内側は芝生が生えた庭があって大きな桜の木が一本生えている。花見し放題だななんて思いながらボーッと眺めていたある日、飛び交う桜の花びらに混じって木の陰に隠れていた屋敷の二階の窓から外を覗く奴が居ることに気づいた。
    チョコレートのような、牛乳をたっぷり入れたココアのような、そんな茶色の髪を風で揺らしながら。夕方近いとはいえまだ太陽が昇っている時間帯にパジャマの上からカーディガンを羽織るという格好で、そいつはずっと外を眺めていた。髪は長いし顔も女の子みたいで、下から見上げるだけじゃ性別は分からない。年齢は多分同い年くらいだと思う。
    35875

    manju_maa

    PROGRESSごろうくん視点。獅童編中盤の全カットした空白の二週間の話の一部とヤルオ討伐後の話。「」ない。
    本当は本編に入れたかったけど時間が足りなくて泣く泣く書くのを止めたけどやっぱり書きたかったから書いたシーン
    来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話~番外編③~色んな人の世話になりながら、39度近くまで上がっていた熱は完全に引いた。今は蓮が診せたという医者に言われた通り、静養期間だ。身体が元気なのに学校にも仕事にもなんなら外にも出れないというのは、中学時代の謹慎中の三日間を思い出す。
    熱がある間は昼間は双葉に、夜から朝は蓮が泊まりがけで付きっきりでそばに居たが、熱が引いたことで蓮はひとまずルブランに返した。
    『こうなったのは俺のせいだから』『お前は放っておくとまた無理するから』と色んな理由を述べられて拒否されたが、ならモルガナを監視役として引き続き家に置くからという妥協案を出すと、渋々承諾した。とはいえ昼間は双葉が家に乗り込んできて持参したパソコンをカタカタといじっている。蓮と約束ノートなるものを作って、それのおかげで一人で外出もできるようになったんだと自慢げに話していた。『明智はわたしの恩人だからな!』と満面の笑みを向けられたときは眩暈を起こしかけたが何とか耐えた。
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