オメガバ高さこネタ帳1 今日は保健委員の当番の日。委員長である伊作と二人で備品整理をしていると急な目眩に見舞われた。燃えるような身体と酷い頭痛で声すらもあげられない。思わずその場にくず折れそうになった時、その背を支える者があった。
「……大丈夫かい? 左近くん」
そう心配そうに声をかけてきたのはタソガレドキ忍者である高坂陣内左衛門であった。
その腕の中に収まった途端体の不調は嘘のように軽くなった。代わりに胸を満たすのは味わったことのない多幸感。夢うつつで高坂を見上げる左近はいつもの気の強さは消え失せまるで少女のように頬を染めている。熱で潤んだその瞳に当てられたのか、普段は冷静な高坂も言葉なく左近を見つめ続けている。
その様子を傍らで見守っていたのは雑渡と伊作だ。不安そうに眉を寄せる伊作とは違い雑渡の目はいたずらっ子のようにキラキラと輝いていた。
「これはこれは……」
運命の赤い糸が結ばれたみたいだねえ……
そう言って雑渡は自らのつがいである伊作を抱き寄せたのだった。
そう、これはアルファとして生まれた高坂とオメガとして目覚めた左近の始まりの時だった。
という感じで始まるオメガバ話。
雑渡は強いアルファで普通のオメガではフェロモンが強すぎて体に不調をきたす。なのでずっと独り身だったのだが伊作という運命の相手と出会い見事つがい系契約を交わすことが出来たのである。伊作の学園卒業後は所帯を持ってタソ領で暮らす予定だ。
初めての発情で雑渡の強烈なフェロモンを浴びて目を回しかけた左近だが高坂のフェロモンを浴びて何とか落ち着きを取り戻す。相性のいいアルファとオメガは傍にいるだけでお互い癒しパワーを分け合って体調が良くなるのだ。
自分がオメガだと知った左近だが残念ながら抑制剤が効かない体質らしい。今はまだいいが体が成熟したら周りのアルファを引き寄せる魔性の男になってしまう可能性がある。そうなる前に早く相性のいいアルファとつがい契約をした方がいい。そう言われるがまだ左近は十一歳。初恋すらまだの身には一生を左右するつがい契約など考えられなかった。
頭を抱える左近にずっと静観していた雑渡が助け舟を出した。
「ねえ、陣左、ちょうどいいじゃない。お前が左近くんのつがい相手になってあげれば」
聞けばアルファである高坂も家族から早く嫁を貰えとせっつかれているらしい。相性のいいオメガが見つかったといえばその勢いも止むだろう。まだオメガとして目覚めたばかりで時間が必要だといえば納得もする。左近が学園を卒業するまでの間、数ヶ月に一度ヒートに苦しむ夜を共にしてやればお互い万々歳なんじゃないと提案され高坂と左近は目を見合わせて「それなら」と応じたのだった。