本歌様の本歌様による写しのためのもてあた奮闘記with南泉 山姥切長義が顕現して最初に見たのは、他ならぬ己の写しの顔だった。
布が美しい金糸を覆い、さらにその金糸が野暮ったい長さで瑠璃の瞳を隠している。そのすき間からかろうじて覗く目は険しく、眉間の皺も深い。まるで大いなる何かと相対するため覚悟を決めているような。
何を感じて、何を考えたか自覚する前に、長義の口がひとりでに動いた。長義ですら何を言うかわからないまま紡がれようとした言葉は、目の前の写しの覇気のある声(クソデカボイス)で遮られた。
「……これで全員だな!早速だが今から人の身で過ごすための研修をさせてもらう!説明は移動しながらするのでついてきてくれ!」
えっ?
その場にいた全員の声がハモる。そこで長義は初めて気づいたが、今顕現したのは自分だけではないらしかった。ざっと十数振りはいそうだ。
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