もとより私のお前立花仙蔵先輩の魅力といわれたら、たくさん挙げられる。
そのどれもが正しくて、でも決定打ではない気がした。もっと、的確な言葉があるんだろうけど、かたどるためには喜八郎はあまりにも口下手だった。その点においては、つらつらと自画自賛ができる滝夜叉丸が羨ましいかもしれない。
どうして動かされるのか、はじめは分からなかった。単純な興味で知りたいだけだったのに、気が付いたときには目で追うようになっていた。用もないのに、顔が見たくなって、声を聞きたくなる。自分に向けられたら、もっといい。そんな些細なことでその日の気分を左右する。近くにいたいと思うようになったのはいつからなんて、もう分からない。
憧れて、焦がれて、ときどき窒息してしまいそうだった。そのくせ一緒にいるときがちゃんと息ができるような気がする。どうしようもなく心地よくて、それでいて心の奥底が燻るような、ふしぎな感覚。特別なことには違いないだろうそれを、先輩と出会った最初の頃から抱えていたことはだいぶ後になってから気が付いた。自分の中にその人が焼きついているせいで欲しくなってしまう。
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