MP5「いらっしゃいませ」
「19時に予約していた潮江だが」
「はい……はい、承っております。こちらへどうぞ」
は??
午後7時、某駅付近、高架下。
半地下になっているその店に足を踏み入れてから、留三郎の頭の中は「は?」の一言で一杯だった。
木製で統一されたテーブルに椅子、通路と棚、西洋の蔵を思わせるレンガ造りの壁をレトロランプのオレンジがかった明りが暖かく照らしている。
店内は空のワインボトルがセンス良くディスプレイされ、奥に見えるカウンターには様々な酒瓶が並び、吊り下げ式のワインホルダーには様々な大きさのワイングラスが見えるように収納されていた。
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
通された席は半個室のようなこぢんまりとしたテーブル席で、テーブルの上にはエジソン電球が輝いて個室を柔らかく照らしている。
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