丁寧に丁寧に首筋、うなじ、鎖骨。胸の辺りを滑る指は、そのまま肩甲骨から肩口をくるりとひと撫でし二の腕へ。背中を通って腰を伝い、太ももまで丁寧に撫でていく。
湯の蒸気で煙る脱衣場でチリが自身の肌を丹念に撫でていると、控えめなノックが聞こえる。
「チリさん、大丈夫ですか」
「おん?どうかしたん?」
「夕飯できてますが、脱衣場から出てくるのが遅いので…大丈夫ですか?」
「もうそんなに時間たっとる?」
「腹を空かせたドオーとカラミンゴが抗議のじだんだを始める勢いです」
「そりゃあかん」
そうは言うものの、チリはのんびり悠長にまた二の腕を擦る。傍らに置いてあるボディクリームを手に乗せ、丁寧にまんべんなく肌に塗り込んでいく。
ドアの前にはまだアオキの気配がしている。なかなか脱衣場から出てこないチリを心配しているのだろうが、やっていることがことなだけに迷っているようである。チリの中に小さないたずらこころが灯る。
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