𝐌𝐞𝐞𝐭𝐢𝐧𝐠 𝐨𝐟 𝐝𝐞𝐬𝐭𝐢𝐧𝐲陽の光も入らぬ廊下の突き当り。
鉄さびと埃の臭いが染みついたこの空間にくるのは何度目だろう。
俺を案内した監視役が足を止めたため、歩幅を狭める。
ギィと油がきれた扉が叫び声をあげ、ゆっくりと開かれる。
扉の中は蛍光灯一本のみで、廊下よりも更に暗い。
サングラスを頭の上へとズラして、目を細める。
「こいつが、あの"狂犬"か」
拘束衣を着せられ、口枷を嵌めたまま、部屋の奥に座っている男がひとり。
顔立ちは若く、資料にあった死亡時期と近いように思う。表情は魂が抜け落ちたように虚ろだ。……ま、コイツらに命なんざあったもんじゃないが。首から下は椅子にがっちりと固定され、口は拘束され、こちらを睨みつけているような目だけが見えている。一見血に飢えている獣のようにギラギラしているように見えるが、目の奥は、濁りきった水底のように、深く、沈んでいる。
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