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    douishoR

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    ケルヴ君のすべてがオタクの妄想妄言です。生暖かい目で見るか殴るかなどしてください。

    【ケルヴ君と影親班】𝐃𝐞𝐥𝐢𝐠𝐡𝐭 𝐈𝐧 𝐓𝐡𝐞 𝐍𝐢𝐠𝐡𝐭西暦XXXX年 ILY4EVAセレモニー当日――早朝。

    恩庄影親はとんでもなく寝起きが悪い。
    今日もけたたましいコール音がガンガンと頭を揺らしたところで、ようやく眉間に深く皺を刻みながら目を開けた。

    「……なんだ」

    呻き声のような唸り声のようなドスの利いた声で電話をとると、向こうからは慌てた様子の職員がILY4EVAを含む多くの人々の異変を伝えた。少しの間……寝起きの頭を叩き起こすインターバルを置いて、影親は枕に突っ伏していた顔を上げた。

    「すぐ行く」

    見上げた社畜根性である。影親の返答を聞くと職員はビビリ散らしながら「ではお待ちしておりますぅ」と光の速さで電話を切った。
    通話終了の画面を睨みつけた影親は、もう一度枕に突っ伏した。


    ――影親が覚醒したのは頭からお湯を被ったあとであった。
    風呂場から出て来ると、今度は早朝から呼びつけられたことに皺を寄せてワイシャツを着る。胸板下あたりまでボタンを留め、その上からガンホルダーを装着すると毎度のことながら立派な胸筋が強調されるわけだが、本人も本人で己の肉体に自信があるのでこういうスタイルなのである。このあたりは色々と緩いAg:47に所属していてよかったと言えるだろう。
    玄関に向かう頃には後輩にビビられるいつもの恩庄影親が出来上がっていた。



    本部に着くとすでに玄関前でケルヴと、彼に引き摺られる哀れな職員が立っていた。
    影親の車が駐車場へと入って行くと、ケルヴが追いかけ職員が引きずられてゆく……。職員の下半身が大根おろしされたところで、影親が車から降りてきてようやくケルヴが止まる。ケルヴが歩いた軌跡には血が点々と……。なにせ彼の頭から血が垂れ流しなのだ。正確に言えば、彼の頭から妙な兎の耳のようなものが生えており、その付け根から出血している。
    影親は怪訝そうに顔面血だらけのケルヴの首輪を引っ張った。そのままエントランス内部まで連れてゆく。ケルヴは首輪を引っ張られ息苦しさに興奮を覚えながらも機嫌が悪そうな影親に不安を覚えたのであろう。涼しい風が影親の頬を撫でた時、「クゥン」と鼻に掛かった声が聞こえてきた。だが、躾に厳しい影親がそこで構うなど甘いことはしない。分厚い首輪と首の間に遠慮なく指を突っ込んだまま、ツカツカと歩いてゆく。「ぐ」だの「う゛」だの呻き声が聞こえてこようがおかまいなしだ。
    そのまま医務室に直行すると、ケルヴを医師へと引き渡す。完全に動物病院に連れてこられた犬状態になったケルヴの尻を蹴っ飛ばした。無情にもケルヴは血をゴシゴシと拭われ、一応と消毒液をぶっ掛けられた。ダーリンは回復が生者より早い。本来なら何針も縫うような惨状だったが、すでに頭皮は殆ど修復していた。消毒液が染みて影親にSOSを出すケルヴを彼は盛大にスルーして、「説明しろ」と引き摺り倒された職員に問うていた。職員は視線を地面に落としながら「実は今朝ケルヴ君の様子を見に行った時には既に……」と話し始めた。


    ――……どうやら件の犯人の異能の餌食になってしまったらしい。
    ダーリンだろうが、生者の人間だろうが、関係なく作用すると聞いてはいたが、まさか自分の契約者が巻き込まれるとは……。影親は煙草を吸いながらケルヴを見下げた。医師がここ禁煙なんですけど!?と窓を開けているのは無視している。
    治療を受けすっかりしょんぼりしたケルヴは、影親に「えらい?」と頭を擦りつけようとして、明らかにご機嫌斜めなのを察してそっと離れた。ケルヴは空気の読める賢い犬なのである。
    そんなケルヴの頭を掴むと、彼の髪を搔きあげる。ケルヴのウサギの耳は見事に頭皮にくっついており、その周辺はかさぶたができていた。本当にダーリンの回復機能は凄まじい――……忌々しいほどに。影親はサングラス越しに目を細める。影親のダーリン嫌いは今に始まった事ではない。自分の忠犬でさえも、どこまでも厳しく、境界線をしっかりと張っている。懐からリードを取り出し、ケルヴの首輪の金具に装着する。着けやすいように顎を上げるケルヴの健気なことよ。
    カチンと金具が鳴り、リードが垂れ、ケルヴと影親の間に短い線が引かれた。


    リードを引かれたケルヴは、徐々に人の気配と活気を感じる。それから、これは美味しそうな匂いだ!
    「ん」と声をあげれば、リードを引く力が緩む。職員とダーリン、両方利用できる食堂は朝から混雑している。今朝の騒動で自分が食事がまだであることを思い出したケルヴは、影親のジャケットを指で摘まんだ。引かれた感覚に影親は振り返ると「ああ」とわかっているとばかりに彼を食堂へと導いた。

    いつも座る席が空いていることを確認すると、ケルヴは喜んで我先にと座った。影親は別にどこでもいいのだが、ケルヴは指定の場所があるらしい。元々は軍人であったはずなのだが、どうにも縄張りを意識する犬そのもののようだ。影親自身は面倒事を起こさねば良い。というスタンスなので、ケルヴの全財産が入ったカードを持って食事を取りにゆく。
    ご主人様が直々に……というのは珍しいだろうが、前に意気揚々とケルヴが自分で運ぼうとして、目が見えない状態で混雑した場所で配膳……なにもおこらないはずもなく。予想外の場所にあった椅子を把握しきれず足をとられ、そこに驚いた別のダーリンにぶつかりそのまま食事全て丸ごと床にぶちまけるという事件を起こしてからはずっとこのスタイルだ。あの時のケルヴといったら、自分のはともかく影親の分まで全部床に食わしてしまったため、それはもうとんでもなく落ち込んだ。そしておでこに跡が付くほど影親に謝り倒した。周りは短気で有名な影親がブチギレ祭りを開催するのではないか。と、戦々恐々であったが、本人は織り込み済みだったので「お前は座ってろ」と言っただけで済んだのであった。まぁケルヴは暫くずっと落ち込んだままであったが。

    ――と、まぁそんなこんなでケルヴは今日も今日とてお利口さんに椅子に座ってご主人様と食事を待っていた。暫くすれば影親がケルヴの分のトレーをテーブルに置き、ケルヴの拘束具を外す。口元と目が自由になると、ケルヴは影親の前に何もないことに気が付いた。

    「ごはん、は?」
    「家で食べてきた」
    「え」
    「早く食え、置いてくぞ」
    「あ、う、たべる」

    慌てて食事に口をつけるケルヴ。ご飯をひとくち。そして影親を見る。そして自分のオムレツが乗ったプレートを見る。もう一度影親を見る。その視線に耐えかねて影親がケルヴの方を見た。

    「なんだ」
    「本当に、いらない?あげる」

    ケルヴはお気に入りのオムレツをひとくちスプーンにのせて差し出した。が、影親は首を横に振る。

    「お前の分だ。お前が食べろ」
    「……ん」

    一緒に食べたいなとケルヴは思ったが、良い子なので言わなかった。急いでご飯を胃の中に詰め込んで、少しでもご主人様を待たせないようにだけ努めた。当のご主人様はコーヒー片手にニュース番組をスマホで観ていたが。

    カランとカトラリーがトレーに並ぶと、影親がスマホから顔を上げた。ケルヴは全部ちゃんと食べた!偉い!とむんと胸を張っている。その口元にはベッタリとケチャップがついている。通りすがりの職員が「え?人食った?」と慄いた。
    しょうがねぇなと影親がティッシュを口元に押し付ける。ゴシゴシと手荒に拭くと、ケルヴは一等嬉しそうに綺麗になった口元を緩めた。


    口輪と手の拘束具を着けて再び廊下へ。その道が自分が帰る時の道順と一緒だったため、ケルヴは影親のジャケットを引っ張った。イヤイヤと首を振りながら。

    「しごと、できる!」
    「服が伸びる、やめろ。一旦戻るだけだ」
    「う゛~!」

    離されないジャケットに、影親は溜息をついている一方、もしかしたら今日はお休みかも!このウサギ耳のせい!?とケルヴは頭をグルグルと回していた。やっぱり耳を引っこ抜くしかない!と思ったところで、鞭の音がパンッ鳴る。反射的にケルヴは動きを止めた。主人の躾の賜物と言う他なかろう。瞬時にケルヴの太ももに鋭い痛みが走り、思わず背中を丸めた。恐らくミミズ腫れになっただろう、その凶悪な武器は再び影親の手元に収まる。躾には最適な短い鞭が、彼の手の中でしなった。先ほどまでケチャップを拭ってくれた人間とは思えぬほど冷めた目の中に、ケルヴが薄っすらと映っている。

    「四つん這いになれ」
    「わん」

    冷え切った鋭い声に、ケルヴは背中がゾクゾクと震えた。これが新しい自分のご主人様であると、そう解らせられる度に、ケルヴは歓喜に震えていた!
    即座に膝をつくと、手を拘束されているせいで尺取虫のような姿になりより羞恥を感じて興奮が昂る気さえした。
    強く強くリードを引かれる。首が半分締まった状態も、周りの人間から驚嘆と軽蔑の眼差しで見られることさえも、全てがケルヴの燃料であった。


    ――ケルヴに与えられた狭い部屋には、職員たちが与えた玩具や影親が置いていった拘束具、影親から借りパクしたマフラー、影親と食べたハンバーガーの包み紙などが散乱し、いつも寝ている床の一か所以外は薄く埃が積もっている。
    影親はベッドに埃が積もっているのを見て、嫌そうに眉を顰めたあと、ケルヴの予備の服を敷いてそのまま座った。恐らくそのあとケルヴのお気に入りの布になることだろう。
    ケルヴはそのまま床に半ば倒れ込みながら、影親の足元に擦り寄っていた。構うなと時折蹴られるが、それすらもケルヴにとってはご褒美に過ぎない。
    影親は先ほどケルヴに引き摺り倒された職員から貰ったバインダーを眺めていた。そこにはケルヴの今朝の騒動のことから、彼の体の変化までが記載されている。顔を上げると、靴にじゃれつくケルヴの側頭部を踏みつけ体重をかける。野蛮な行為とは裏腹に、彼はいつも落ち着いた声で飼い犬の名前を呼ぶのだ。

    「体調に変化は?」
    「うさぎ、みみ……やだ」
    「それ以外は?食欲は問題なし、頭痛は」
    「ん~、ぽかぽかする」
    「は?」
    「からだ、あつい」

    ケルヴはぐでんと手足を床に投げうって頭を踏まれる感覚を享受した。アイマスクの下の目も閉じている。影親が手袋をはずしその首に手を伸ばすと、じっとりと濡れた肌と平均体温よりも高い体温に、眉間の皺を深くする。その手に擦り寄るケルヴは呻き声を上げながら口輪をなんとか掌に押し付けようと奮闘している。その口からは涎が垂れ、金具を濡らしていた。
    ――どうにも、おかしい。
    影親の眉間の皺がより深くなる。ケルヴの顎を掴むと顔を上げさせ覗き込む。目隠しを取り、髪の隙間から充血した目を見た。
    今回の事件で犯人の異能に掛かったあらゆる人間は本来人にはない動物の特徴が現れる。そして、奇妙な行動をとり始めたり、心理的な症状が現れるのだ。今のケルヴは後者の症状を発症し始めているといえよう。
    対処法は、異能に掛かっていない人間の体液を摂取すること。傷一つない己の体を見て、影親はハァとまたひとつ溜息をついた。まだ現場は混乱している。異能の対象外であると確信できる人物は自分と、あとは先ほど引き摺られていた職員だろうか。これからまた医務室に戻り、採血するのが手っ取り早いだろう。
    ――犬という肉壁故に傷ひとつない体に、その犬が原因で傷つこうとは、なんたる皮肉だろうか!しかし仕事なのだから仕方がない。Ag:47の職員もまた、この組織の犬に違いないのだから。
    自分の掌に涎をつけたケルヴの頬を押し返し、そのまま芋虫のようになっている彼を見下げる。

    「ケルヴ、座れ」
    「う!」

    まだ命令を聞く理性は残っているらしい。口元を涎で汚しながらもケルヴは影親の命令に素早く反応し、床に膝をつく形で座った。
    そのまま彼の首輪を外し、新しい首輪に返る。GPS付きの頑丈な首輪で、悪い事をしたら電気まで流れる優れものだ。歴代の飼い犬の大体が体験しているいわくつきである。
    首輪の金具を外し、特級呪物の首輪を首に回す。ケルヴは新しい首輪が貰えたと無垢に喜んでいる。長さを調節してベルト通しに余った部分を通し、キッチリとはまった。黒い首輪は真っ黒なケルヴによく似合っている。リードをつけ直し、立ち上がる。ケルヴの服は埃で真っ白になったが、代わりに主人の高いスラックスはキレイな黒を保ったままだ。そんな身綺麗な影親はバインダーにある資料をペラリと捲った。
    そのページには、元々身体能力が高いものが多いダーリンが、獣化して更に身体能力が向上しているという報告が記載されていた。
    影親から解放されたケルヴは再び目隠しをしようと床に手を伸ばしたところをそのまま立ち上がるように促され、そのままサングラスを掛けさせられる。いつもよりは幾分か明るく、そして何より主人の顔が見えることに、ケルヴは物珍しそうに目をキョロキョロとさせている。サングラスは光を反射して彼のウサギのような真っ赤な目は見えない。

    「暴れてる奴は”生きてさえいれば‟確保の方法は問わない」
    「わかった」

    元気な返事とともに立ち上がったケルヴを確認すると、再びリードを引っ張った。



    「そういやテメェ、犬のくせにウサギの尻尾があるな」
    「ギャウッ!」
    「神経繋がってんのかコレ」

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