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    プレッピー的な大学生パロ

    「アスラン、土曜日午後からお買い物に行きましょう」
    レノアがそんなことを言い出したのは十月も終わりのことだった。
    土曜日はアスランの誕生日で、夕食は両親と外食することになっている。
    高校から付き合っている彼女のいる男子大学生としては、誕生日当日を恋人と過ごしたい気持ちがない訳ではない。
    ただ日頃忙しくしている両親がわざわざ調整してくれただろう機会を無碍にできる性質ではないし何より、当の恋人であるカガリが『こういうときは両親を優先するものだ』という思考の持ち主――カガリも忙しい父を持つので優先すると宣告されている――なのでその日は一日空いていた。
    午前中から夕方にかけてカガリと会うこともできたのだけれど『食事の前に買い物とか行くかもしれないだろ。日曜日に遊びに行こう』と断られている。
    『買い物』という符牒の合いように、女性同士何やら通じるものがあったのだろうかと、やや瞳を眇めてアスランは考えた。
    「構いませんが――何を買いに?」
    問いに警戒が表れる、けれどそれで堪えるようなレノアではなかった。
    「二十歳の誕生日なのだから、何かちょっといい時計か鞄でも見ましょう――それからお洋服も」
    さり気なく付け足された言葉に、アスランは小さく息を吐く。
    「洋服はいいです」
    「そう言わずに、ね。見るだけでも」
    にこにこと笑むレノアに、これはすでに何か目当てがあるのだろうとアスランは推察をつけた。
    レノアはあてのない長時間のウインドーショッピングに息子を付き合わせる性質ではない。すでに候補があって試着する程度で購入に至るのだろう。過去に見るだけ、が見るだけで終わった試しなどなかったからだ。
    レノアのセンスは悪くはない、と思う。ただ全体的に可愛らしいと言うか上品と言うか、理系男子大学生が日常使いにするにはあまり向いていない服が多い。
    小学生くらいまでアスランは、衣服にあまり興味がないこともあってレノアの選ぶままに着ることがほとんどだった。年齢が上がるにつれそれが世間で『かわいい』と評価されることが多いと気づいて、興味がないなりに甘さの少ないものを自分で選ぶようになっている。多少残念そうな素振りは見せたもののそのことにレノアが文句を言うようなこともなかった。
    ――母と買い物に行くのも随分久しぶりのこと。年に一度か二度、一着か二着、レノアの好みに付き合うのもいいだろうか。
    「分かりました」
    アスランは了解を示した。



    「よ」
    デパートの入り口で、悪戯が成功した子供の瞳で片手を挙げるカガリに、アスランは言葉を失って、いつの間にか半歩後ろに下がっていたレノアを振り返った。
    「母上?」
    「ふふ。驚いたでしょう――こんにちは、カガリちゃん。待たせちゃったかしら」
    「いえ、今着いたところです」
    こちらも子供のように瞳を煌めかせて、レノアはカガリとどこかで聞いたようなやり取りをしながらその背を促して歩き出す。
    なるほど――なるほど?
    ついて歩きながら、アスランは状況の整理に努めた。
    と言うほど難しい状況ではない。
    大学入学後にアスランは両親にカガリを紹介してあった――勿論カガリの父にも会っている。レノアと連絡先を交換して何やらやり取りしていることは知っていた。幼い頃の写真がレノアからカガリに流れたり、現在のアスランの写真がカガリからレノアに流れていることも聞いている。
    その中で今日の算段が立てられたらしい。
    「いつの間に?」
    先を行くカガリに聞けば、へへ、と笑って瞳を細める。
    「ちょっと前に。晩ご飯もご一緒させてもらうからよろしくな」
    「――なるほど」
    呟いて頷くアスランを、レノアが楽しげにちらりと見やる。
    どうあっても母――両親――には勝てそうにはなかった。



    「これはどうかしら」
    言いながらレノアは何着目か、今度はアーガイル模様の編み込まれたニットセーターを広げた。
    「いいですね、色が――緑と紫と……」
    「そちらでしたら中にこちらのシャツはいかがでしょう」
    アスランそっちのけで、カガリと店員と三人であれこれ見てはああでもないこうでもないとやっている。
    時折アスランの元にやって来て、胸に当ててみたり着丈を合わせられたりしては戻って行く。
    アスランが口を挟む余地はない――口を挟みたくなるほど嗜好から外れたデザインが示されることもなかった。
    レノアもカガリも楽しそうなのでいいと思うことにする。
    「こんな感じかなあ」
    ニットと中のシャツ、ズボンを組み合わせたカガリが頷いたところで、レノアが何やら店員に声をかけた。
    やっと支払いになるだろうか、とアスランが安堵と共に思ったところへ、レノアが少し離れた一隅から別の製品を手に取る。
    まだ買うのだろうかと訝しむアスランに目もくれず、レノアはそれをカガリの肩口に当てた。
    「へ?」
    声はカガリとアスランの二人分。
    「ニットだとちょっと重たいかしら」
    二人分の声を全く気に留めることなくレノアはそれを棚に戻し、隣の棚へ視線をやった。それを見計らったように店員が何かを差し出す。
    「それでしたらこちらはいかがですか?」
    受け取ったレノアがそれをカガリに向かって広げて見せた。
    「おばさま!?」
    「あらいいわね。これに合わせるなら――カガリちゃんスカートはあまり好きじゃなかったわよね」
    「ええ、でも」
    ちらりとカガリが助けを求めるようにアスランを見る。口を出しかけたアスランを黙殺して、レノアはカガリに向かって少しばかり眉を落として見せた。
    「女の子のお買い物してみたかったのよ――カガリちゃんが嫌なら仕方ないけれど」
    言いながら微かに悄気てみせるレノアに、容易くカガリは絆される。
    「嫌じゃないです!」
    ちょろい。
    アスランが不安を覚えたのも僅かの間。
    カガリに何が似合うのか探る目的もあるのだろうし、本人が話した通り大学生の息子よりも着飾る楽しみもあるのだろう。
    女性向けの方が選択肢も多いのか、店員も含めてあれやこれや試着させては取っ換え引っ換えしている。もはやアスランは蚊帳の外だった。
    カガリがあまりスカートを好まない、と言ったことは考慮されて、最初はアスランと同じようなズボンが、そのうちに店員が勧めてショートパンツが選ばれた。
    試着室から出て来たカガリの、すらりとした健康的な足が晒される。アスランがどきりとしたのがバレたとは思いたくないけれど、丈の長い靴下が合わされてそれは大半が見えなくなった。
    ――いや、でも、これは却って。
    きゃっきゃと楽し気な三人を尻目に、アスランはちらりと視線を逃した。
    見てはいけないものを見てしまった気がする。
    ――いや、別に。覗きをしている訳ではないし。
    内心だけでアスランは何かに向かって言い訳した。
    カガリは、動きやすいからとショートパンツを履くことはままあった。高校時代は制服でスカートも履いていた。だから言うほど珍しい訳ではない。
    ただショートパンツと靴下の間の短い距離が、アスランをどぎまぎさせる。

    何度か試着室を行き来した後で、帽子にバッグ、靴まで一式揃ったカガリがやや照れを見せながらアスランの前に立つ。
    「――どう、かな?」
    くるりと回ったカガリが全身を見せるように腕を開いた。
    母の視線、と。店員の眼差しと。
    気にならないはずはないけれど。
    「かわいい、です」
    小さく呟くしかできなかったアスランに、カガリはふわりと笑ってくれた。
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