Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    かいこう

    @kaikoh_h

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 292

    かいこう

    ☆quiet follow

    体調不良/smib

    ##smib

    体調不良 ドアが閉まるガチャンという音に意識が浮上する。気づかない内に寝ていたようだ。横臥の体勢から寝返りを打つのもだるい。志摩はぼんやりと寝室の入口に視線をやった。室内を歩き回る足音に耳を澄ます。台所に買ってきたものを置いて、洗面所で手を洗った伊吹が中を覗き込んできた。軽く顎を反らして、同棲している恋人を見上げる。
    「具合、どう?」
    「うん…」
    「ゼリーか果物か食べられそう?」
     体調を崩したせいで志摩は寝込んでいた。部署が別れてしまった伊吹とせっかく重なった休日になのにといくら恨めしく思ったところで、疲労とストレスにやられて昨日の夜から何も食べられないぐらい弱っているからだの重さは変わらない。伊吹の手が伸びてきた。
    「…休みなのに、悪い」
    「だからもー気にすんなって。長くやってりゃ、ま、こういうこともあるっしょ。逆に俺がちょーし悪くなっちゃった時はよろしくー」
    「長く…?」
    「長くおつき合いしてれば」
     伊吹がいひひ、と笑う。機捜で相棒になって初めて迎えた冬からつき合い始めて四年目…これからも親密な関係は続くのだと示唆されて、志摩は涙ぐんだ。それぐらい、伊吹が好き。視界を半分覆う、昨日風呂に入れていない前髪を伊吹がよけてくれた。そのまま、露わになったひたいに手のひらが宛がわれる。
    「んー、熱はねーな」
     大きくて乾いている手は冷たかった。ひたいから頬、首筋へと静かに触れていく。心配しているが故の接触だと分かっていても、志摩の背中がぞくりと粟立った。細くはない食を受けつけたくないと思うぐらい弱っているのに、こっちは反応するのか。じわ、と膨らんだペニスが下着を押し上げる感触に志摩は何とも言えない笑みを浮かべた。分かりやすい。元気になるためには何か食べて一日よく寝ていることだ。だが肉体ではなく性根に活力をもたらすのは、休息や食事ではない。目の前の男が、志摩の生きる力だった。伊吹への好意を自覚するきっかけになった、香坂のビルで見せてくれた長い生命線。あの日から志摩の生命線にもなった。迷ったり間違ったりしても、そこからまたやり直せばいいと導いてくれる正しい光。伊吹への愛の一部はまるで信仰に似ていた。こんな恋を志摩は知らない。最後に元気づけるように肩をさすっていった手を追い駆けて指を絡めた。
    「何か食べた方がいーよ、どーする?飲むゼリー?桃缶?りんごのうさぎ?うどん?」
    「伊吹がいい…」
    「元気になったらね、てかそういうのいいから、まじで心配してんだけど」
    「あわわ」
     神が双眸を眇める。志摩は咄嗟におののいた。その鋭い眼光にも愛が宿っている。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💕💕☺🙏💕💕💖💖💖💖💖❤🍎🐰👍💖🍑
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
    2612

    recommended works