Knot So Simple コンサートが終わり、楽屋はひっそりと静まり返っていた。
ノーマンはまだタキシード姿のまま、鏡の前で蝶ネクタイに手を添えていた。そこへ控えめなノックの音がして、エードリアンが入ってきた。彼もスーツ姿で、タイを少し緩めている。
エードリアンはノーマンに背後からゆっくりと近づくと、「ほどいてもいいか?」と声をかけた。唐突な言葉に、ノーマンは鏡越しに笑った。
「まさか、引っ張って締めるつもりじゃないよな?」
エードリアンは冗談っぽく肩をすくめる。
「安心したまえ。そんな趣味はない」
ノーマンは微笑みながら、エードリアンに向き直って正面から向き合った。
「じゃあ、どうぞ。手伝ってくれる?」
エードリアンがそっと手を伸ばし、慎重に蝶ネクタイをほどいていく。
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