Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    syou1004p

    @syou1004p

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 59

    syou1004p

    ☆quiet follow

    バニーみわちゃんとうさ吉

    バニーちゃんのむたみわ待ってくれ。
    誰にいうわけでもないが、なんだこれは。
    俺の耳が、なんか、違う。
    黒くて、長くて、ふわふわの。
    うさぎの耳。
    何度見ても何度触ってもふわふわ。
    高い絨毯みたいな触り心地。
    しかも聞きたくない音もよく聞こえる。
    離れているはずの東堂の部屋の音が鮮明に聞こえる。何の拷問なんだ。耳ってどうやって塞げばいいんだ…手を突っ込むと生ぬるくて気持ち悪いし……東堂はうるさいし……

    三輪に会いたい……
    よくわからんが、涙腺も緩い。
    寒くもないのに身体中震えるし、なんだこれ。
    間違いなく何かの呪いのせいだと思うが、こんな呪いがあってたまるか。どこかでもらった記憶もない。

    あ、そうだ。そうだろ。夢だな。おかしいと思った。これは絶対に夢だ。寝たらきっと元に戻るし何事もなかったようにすごせる。
    俺はその時そう信じてやまなかった。



    「うそだろ…」

    目を覚ますと、事態が悪化していた。
    さっきまで大丈夫だった手がもふもふしてる。
    しかもこころなしか全体的に小さい気がする。
    顔はかろうじて毛が生えていないようだが、どうしたものか。とりあえず、誰かに助けてもらおう。
    三輪……三輪は今日任務だったな……真依は…だめだ絶対笑うし面白がる。東堂は論外、加茂も無理だろうな…西宮は……たぶん遊ばれそうだし……
    結局唸りながら出た結論は、新田だった。
    しかし、連絡しようにも手が反応しない。
    その辺に転がっていたタッチペンをつかって懸命に操作する。事前に買っていた俺に感謝した。

    「先輩〜?入りますよー?」

    「新田…」

    「え。え、ええええええ!?!?先輩!?え!?なにしてるんですか!?」

    「たすけてくれ」

    「かっわい…じゃなくて、ホントに与先輩ですか?見た目は2頭身のプリティラビットデフォルメくんですよ?」

    「なんだそれは……いいから医務室に…」

    「これはみなさんにも見てもらいましょう!」

    「は?」

    嬉々とした新田に楽々と持ち上げられ、俺の足がうさぎのそれで、胴体も短いという事実が判明した。
    もうパニックである。

    「やめろおおおお!!!」

    「恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ!みなさんも心配してはりましたし!」

    「ちがう!そうじゃない!医務室!医務室に行け!」

    「まぁまぁ、ちょっと後でもいいでしょ〜!」

    ーーーーーーーー

    「ふぅ、やっと終わった〜」

    流れた汗を拭ってから、刀身を振って鞘に収める。
    今日の呪霊はなかなか手強かったけれど、これで昇進に一歩近づいただろう。
    三輪は、少し背伸びをしながら補助監督が待っている場所に向かっていた。途中、スマホからバイブ音がしメッセージが届いている。開いてみると、差出人は真依で画像だけが貼られていた。

    「え、えええええ!?」

    写真の中には、可愛らしい垂れ耳うさぎになってしまった恋人が写っている。完全にうさぎ、とまではいかないが体長はうさぎのそれで、顔だけ人間らしいがそれもなんだか体に合うような幼さを残す可愛さだ。なにかの呪いか、それともなんだろう。

    「はやめに!はやめに帰宅させてください!緊急です!」

    すごい剣幕で言ってしまった気がする。高専まで驚きの速さで戻った私はみんながいるという教室の前まで走っていた。

    「こ、幸吉くん!!」

    がらがらと扉を開けるとちょっと大きめの段ボールの周りにみんなが輪になっている。

    「あ、うさ吉〜霞ちゃんきたよ〜」

    「ほーら人参よ」

    「へ?」

    いそいそと近寄ると、段ボールにはうさ吉の家と書かれていたり、タオルが中に敷き詰められているようだった。真依は入り口あたりで人参を揺らしているが、それに食いつく様子はない。何がどうなっているんだろう。

    「あの、」

    「三輪…?」

    真っ黒な段ボールの奥からひょっこりと顔を出したのは、写真で見た与だった。

    「か、かわいい……」

    黒くて大きな耳が垂れている。髪の毛はいつものように一つにまとめられていて、服はいつもの彼の制服を着ていた。下半身は服がないようだが、可愛いもこもこの足が出ている。

    「服は私が作りました〜」

    えへん、と胸を叩いたのは西宮で、三輪はナイスと親指を立てた。

    「おかえり、怪我なかったか?」

    「大丈夫ですよ〜無傷です!」

    手も足もふわふわもこもこ、大きな耳も触り心地が良さそうだ。でも顔だけはどこか不貞腐れているようだった。見上げてきた大きな瞳が可愛らしい。

    「か、かわいい……」

    「……もうなんでもいいが……医務室に連れて行ってくれないか」

    ふい、と顔を背けていうのを見て、なるほど拗ねているのかと納得した。しゃがんでから、彼の小さくてふわふわになってしまった手を握るとやっとこっちを向いた彼は何だか泣きそうになっていた。この顔は、弟が不安な時にする顔によく似ていた。なんだか、微笑ましい。

    「ちょっとだけ不安になっちゃいましたよね?でも、みんな幸吉くんのことを心配して、一緒にいたんですよきっと。だから大丈夫です!」

    「三輪……」

    与はその時、感動しそうになったが、いやまてと誰かが叫ぶ。三輪が来るまでやれ写真だ飯だ寝床だと散々いじられた挙句、真依に至っては生の人参をぶら下げてどうして食べないのか聞いてくる始末。食べられるわけないだろ、生の野菜苦手なんだから……!しかも、東堂は爆笑していたし、加茂なんか心配するどころか呪いを受けるなんて弛んでいると注意してきた。新田は任務が入ってしまって気がついたら居なくなっていた。西宮には服を作ったと無理矢理着せられた。いやでも服はいいんだが、そのあと嫌というほど写真を撮られたので、もういっそほっといてくれと段ボールで作られた簡易的な俺の部屋に閉じこもって居たところに三輪が帰ってきたのだ。
    たしかに、みんな心配はしてくれていると思う、思うが。だったら俺を医務室に連れて行ってくれ!というのが与の本音だった。

    でも、その本音をにこにこと優しそうに笑う彼女にいうことは与にはできなかった。

    「そうだな……」

    明後日の方向を見ながら、与は納得した。


    ーーーーーーーーーーーーー

    「うーーん。原因不明っていうのが現段階での結論かな。健康状態に問題はなさそうだし、食事に関しても今までと同じで大丈夫。ただ、呪いの類であるのは間違い無いけど、なんのためのなんの呪いなのかはわからないね。でも、すぐ死ぬような呪いじゃないよ」

    「良かったですね、幸吉くん!」

    「あ、あぁ……」

    三輪に抱き上げられたまま、診断結果を聞くと安堵するのと同時に今まで意識していなかった、三輪の胸の感触なりなんなりであらぬ方向に意識が向いていた。

    「1週間以内に解けないとうさぎになるけどね」

    「「え」」

    「まぁ、こっちも色々考えてみるから、頑張ってみてね」

    じゃ、と簡単に終わった診察に呆然とした。
    あらぬ方向に行っていた意識は、すぐに元に引き戻されていた。
    1週間以内に戻らなかったら、このままうさぎになるなんてありえない。勘弁してくれ。やっと自由に動く手足が戻ってきたのに、やっと大好きな人と隣に並べたのに。これでは、前と同じ、逆戻りだ。それにこの姿だと呪術も使えない。どうしよう、と頭の中で思考がぐるぐると回っていた。

    「幸吉くん」

    「みわ、おれ……」

    「大丈夫。私がついてます!一緒に戻る方法探しましょう。ね、泣かない泣かない」

    泣いていることに気がつかなかった。ぼろぼろと、自分の意思とは関係なく流れていく涙を三輪が丁寧に拭ってくれていた。暖かくて、心臓の音がする。それがひどく安心した。

    「解決法は、みんなで探しましょう!」

    「え」

    「行きますよ幸吉くん!」

    ぎゅむ、と眼前に三輪の胸がある、柔らかくてふわふわで、あったかい。抱きしめられている、と理解する頃には俺の意識はそこにはなかった。

    「霞、うさ吉が血だらけよ」

    「えぇ!?幸吉くん!大丈夫ですか!」

    鼻血を出して目を回す俺はなんと無様だったことか。三輪の服も汚してしまって、目も当てられない。しかし、その時少しだけ、手が人のものに戻っていたのを誰も気づかなかった。


    ーーーーーーーーーーーーーー

    結局、三輪主催で俺の呪いを解こうの会が発足されたわけだが。水をかけたりお湯をかけたりするのはもちろん、走らされたり撫でくりまわされたりと散々な目に遭わされた。途中で解呪これ関係ないだろうと思うところもあったが、ぴくりとも戻りそうな気配はなかった。

    「幸吉くん、まだ1日目ですから!大丈夫ですよ
    明日も頑張りましょう?」

    「あ、あぁ……」

    満身創痍であることは間違いない。それに加えて、戻れる算段がつかない現実が俺を確実に追い詰めていた。

    「じゃあ、幸吉くんおやすみなさい。」

    「おやすみ……じゃない、ちょっと待ってくれ」

    「はい?」

    はい?じゃない。そうじゃない。さっき新田に洗ってもらってすごく惨めな気持ちになっていところに、心配して様子をみにきた寝巻き姿の三輪が俺の部屋まで来てくれていた。そこまでいい。わかる。なぜ、そのまま俺のベットに一緒に入っている?いや別に、付き合っているから、いいのだが。ちがうそうじゃなくて。

    「幸吉くん1人だと、また泣いてたらわからないし。一緒の方がいいと思って。私、明日も任務があるのでずっと一緒ってわけにもいかないし……」

    「う、すまない……」

    「こら、謝ってばっかりですよ。幸吉くんなんにも悪いことしてないでしょう?」

    「……そう、なはずなんだが……」

    「心細い時は誰かと一緒にいると安心するんですよ。ぎゅってするともっと安心します!」

    「……もふもふしたいだけなのでは……」

    「それもちょこっとあります」

    「……」

    「あ、拗ねないでくださいよ〜!冗談ですってば」

    じとり、と三輪をみるとだって可愛くてと笑っている。確かにこの姿は、庇護欲がそそられるのかもしれない。三輪は、俺がこのままの方が、いいだろうか?

    「三輪は、俺がもし元に戻らなかったらどうする?」

    「どうもしませんよ」

    「え、」

    「幸吉くんは幸吉くんです。ずっとそばにいて、ずーっと一緒です。」

    俺の好きな顔をして、三輪はなんでもないように応えていた。それがひどく嬉しくて、また涙腺が緩んでしまう。ほら泣かない泣かない、と俺の頭を撫でてから明日も早いし寝ましょうと電気が消えた。

    「幸吉くん、ぎゅってしてもいいですか?」

    「……うん」

    「ふふふ……お耳が高級なコートみたいな触り心地ですね。」

    「……皮剥がないでくれ」

    「しませんよぉ」

    きゅ、と俺を潰さないように抱きしめた三輪はそのまま規則正しい吐息を立てていた。甘くて、いい匂いがする。ふわふわで白い胸が目の前にあって、寝れるわけがない。うさぎの姿になってから、所謂そういう性欲が増している気がする。三輪を見るたび暑くてたまらないときがある。でも、こんな姿でそんなことを言ったら、絶対嫌われる。三輪はそんなことも知らずに幸せそうに眠っている。

    「んん…」

    ぎゅう、と寝ぼけた三輪に胸の間に顔を埋めるようにされて、ばくばくと心臓がうるさい。眼前に広がる白い膨らみの誘惑に勝てなかった。ふわふわの触り心地が気持ちがいい、そのまま、白い肌に舌をそわせて赤い痕をつけた。興奮で全く眠れない。下半身が主張しているのが自分でもわかるが、この体と相手が寝ていると言う状況でやるのは絶対にダメだ。ならば、離れればいいと思うだろうが、起こしてしまうのではないかという心配と、それからこの立ち位置から離れがたいのだ。もっというと、日頃恥ずかしくてあまり一緒に寝ないものだから、この時に堪能しておきたい自分がいる。なんて浅はかと思うだろうが、男はみんなそうであると思う。

    「こー……きちくん、」

    むにゃむにゃと夢の中の可愛い恋人は俺の夢でも見てくれているようだ。桜色の形の良い唇が少し開かれている。最後にこれだけ、本当に最後だから、と合わせるだけの口づけを数秒間続けた。
    なんだかいけないことをしているようで、もう寝ようと無理矢理目を閉じた。


    「ふぁ……おはようございます、こうきちく……ん」

    朝、目覚まし時計の音で目を覚ますとうさぎサイズだったはずの幸吉が、少し成長して小学生くらいの身長まで戻っていた。勿論うさぎの要素は耳だけになっているが。よかった、きっと呪いも何かの弾みで治るのだろうと安心した。すやすやと吐息を立てる様は本当に小学生のようで、起こさないようにベットから滑り出た。優しく頭を撫でてみると、ふにゃりと笑うものだからそれもまた愛しくなってしまう。後ろ髪を引かれる思いだったが、今日も任務だと自分を奮い立てて彼の部屋を出た。

    三輪が任務へ出ていったあとしばらくして、与が起きると三輪の姿がなくまた身体がぶるりと震えていた。サイドテーブルには、三輪の字でメモ書きが残されていた。

    『帰ってきたらなんで戻れたのか検証しましょうね!』

    戻れた?俺が?ぱっと、手を見ると人間のそれで足もそうだった。嬉しくなって姿見でみてみると、身長はまだまだ元どおりとは言えず、黒い耳も相変わらずそこに残っていた。あと素っ裸だった。

    「あ、れ」

    俺が今、全裸ということは、おれは、このまま、三輪と。どばっと、鼻血が溢れていたのを慌てて手で受け止めていた。どうしよう、なんて謝ろう。ティッシュを取ろうと背伸びをするが、あと少しと言うところで届かない。三輪がいてくれたら、取ってくれるのに。瞬間、昨日の夜のことを思い出す。白くて甘くてふわふわの、綿菓子みたいな彼女の感触を思い出してしまって、また血が吹き出した気がする。やっと届いたティッシュを取って鼻に当てる。

    やっと届いた…?

    さっきまでは、届かなかったはずだ。今は、背伸びをしなくても取れるようになっている。体が元に戻っている。

    さっき、何を考えたっけ。

    もしかしての可能性をかき消した。もし、そうなのだとしたら、戻る方法がそういうことになってしまう。自分の性的興奮の度合いによって、元の姿に戻れるのだとしたら。与は考えるのをやめて、部屋に鍵をかけた。

    その日、三輪がまた部屋を訪れてくれたのだが、昼間の仮説を考えると彼女に相談するのは得策ではないと考えた。大丈夫だから、とその日は彼女を部屋に返し、頼みの綱の東堂に助言を得に行ったが、与の精一杯の努力と羞恥心を振り絞って言った説明も虚しく、考えておこうと一言で終わってしまう。与は項垂れるように部屋に戻ったが、その時間の数十分後には高田ちゃんの出るテレビ番組があったのだから、殴られなかっただけましであった。あったはずなのだが。

    「うさ吉えっちなことしたら元に戻れるんだって?」

    三輪のいない昼下がり、たまたま任務が無かったらしい西宮が与を見下ろしてそう言った。思わず咳き込み息がうまく吸えなくなった与に大丈夫?と軽い言葉をかける西宮は全く気にしたそぶりもない。

    「な、は、だ、だれから、きい、」

    「東堂くん」

    「あいつ……」

    「なんで霞ちゃんに頼まないの?」

    「……こんな餓鬼の姿は、嫌だろ」

    誰だって、今まで好きであったからと言って体格の変わった、ましてやいくつも年齢が下の犯罪まがいの年齢の男など嫌だろう。

    「霞ちゃんはそういうの気にしないと思うけどなあ」

    西宮の助言を、俺は聞かなかったことにした。
    とどのつまり逃げてしまったのだ。
    怖くて怖くて堪らない。
    三輪が、離れてしまうのではないかと考えてしまって、いっそ、うさぎになってしまえばそんなことは考えなくても済むのではないかと、逃げたのだ。

    その日も、部屋を訪ねてくれた三輪を部屋に入れてやることはできなかった。


    ーーーーーーーーー

    4日目。
    今日も今日とて、無駄な悪足掻きをするために外へ赴いた。三輪と最初に一緒に寝た頃より、またひとまわりふたまわり体が小さくなってしまった。生活するには不便な身長だが、せめてもの救いはすこし呪力操作ができるので、メカ丸を動かせることくらいだろうか。メカ丸に抱き上げられながら校内を歩いていると教室で西宮と真依が手招きしていた。

    「うさ吉〜ほーらどれがいい?」

    思えば、警戒心がなかったと思う。
    なんの疑いもなく、近寄るとなにやらスマホで服でも見ていたようだった。

    「は?なに……が、」

    真依のスマホの中には際どい衣装を着た女性が映っている。所謂コスプレ衣装のサイトだったのだが、なぜそれを俺に見せるんだ。

    「うさ吉が1番きて欲しいのを霞に着て貰えばいいのよ。そしたらアンタすぐ元に戻るわよ」

    「……、はぁ!?」

    「そーそー付き合ってるんだし、減るもんじゃないし」

    「そ、そういう問題じゃないだろ!それに、三輪の意思が入ってないじゃないか…!」

    「いいの?このままうさぎちゃんのままで?」

    「ぐ、」

    「素直になれば、元に戻れるよ〜?」

    「う……」

    「これ?それともこっちがすき?やっぱりうさ吉はこれじゃない?」

    「う、う、うるさい!」


    脱兎の如く逃げていった与を眺めて、真依と桃は頷いた。
    やっぱりこれが好きなんだと。
    仕方がないなと2人は速達で届くように注文を確定させていた。

    ーーーーーーーーーーーーー

    「あの、幸吉くん、お部屋に行ってもいいですか?」

    意を決したように話す三輪に、何かあるのだろうとは思った。けれども、自分のこの状況で彼女を部屋に呼ぶということは、つまりそういうことをしてしまう危険性を孕んでいる。

    「三輪、これは、お前のためでもあるが……」

    「だめ、なんですか……?」

    「いいです」

    寂しそうな顔をされたら、だめなど言えなくなってしまった。うさぎの理性は紙より軽い。すごい罪悪感と、それから少しの期待とうわずった気持ちが渦巻いていた。三輪は、なんで俺の部屋に来るなんて言ったんだろうか。

    1日目の夜の時みたいに、三輪は俺の部屋に来て、少し違うのは俺に目を瞑っていろと言ってきたことだった。素直に目を閉じてしばらくして、いいですよと声が上から降ってきた。

    「え、あ……え?」

    眼前には漆黒の光沢のある服を着ている三輪がいる。服、というかいわゆるハイレグと呼ばれるもので白く細い太ももは網タイツで覆われていて、足の付け根の際どいところまで布の面積が少ない。少しずらしたら、彼女の大事なところが見えてしまう気がする。
    肩は剥き出しで、胸の谷間が嫌というほど強調されている。そうして、黒い、うさぎの耳。
    バニーガールというやつであるのは、昼間に真依から見せられたそれで、すぐに理解できた。
    耳がカチューシャなのは見たらわかる。けれども、自分が今うさぎに近いからなのか、それとも本能なのか。ごくりと生唾を飲み込むほどには興奮していた。うさぎの雌だと、頭の中で誰の声かわからないそれが、交尾をしたいと叫んでいた。


    バニーガールの衣装を見せた途端、幸吉は完全停止をしてしまい三輪は焦っていた。せっかく恥ずかしいのもかなぐり捨てて着たのに。真依が言うにはこれを着たらきっと彼が元に戻ると言っていた。人間に戻れるタイムリミットがもうすぐそこまできていたのだから、少しでも希望があるならやらないわけにはいかなかったのだ。

    「あ、あの、やっぱり似合わなかったですか……?
    ま、真依と桃先輩が、幸吉くんはこれが絶対好きだからって、さっき渡されて……わ、私も初めて着たから、よくわからなくて、その……、こう、きちくん?」

    「似合ってる」

    いきなり立ち上がったかと思えば、彼の身長はいつものものに戻っていて、私を見下ろす彼の耳にはまだ黒いうさぎの耳がついていたが。切長の目が、三白眼が私を捉えて離さなかった。

    「あの、こうきち、くん。身長が、もどって、」

    「すごく、興奮する」

    「ひゃっ、ま、って、あの、その、」

    「あぁ、そうだ。まだ、耳が治ってないんだ。三輪が、治してくれるんだろ。だって、そのために来てくれたんだよな」

    肩をがっしりと掴まれて逃げられない。
    彼の呪いを解く方法は、大体真依達から聞いてはいたが、恥ずかしくて話半分であったしなにより本当だとは思っていなかった。衣装を着ただけでは終わらないと分かったのは、今この時だった。

    「えっ!あ、えっと……」

    「三輪……」

    「わ、わかりました、から……」

    優しくしてくださいね、と三輪が上目遣いにつぶやいた後はいうまでも無く。

    次の日、しっかり戻った与は機嫌が良さそうに任務へ向かっていき、三輪は腰をさすりながら任務を休んでいた。勿論、三輪の任務は与が代わりに請け負っている。幸吉くんの馬鹿、と本人不在の部屋に三輪の声がこだました。

    三輪のバニーガールの衣装は、与の部屋に隠されたのだった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤💖💖💖💖💖🌠🌠💖💖💖💖💖💖💖❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works