嫉妬最近のシャドウは噛みグセが酷い。
今日は首筋、昨日は右肩、一昨日は左腕──それより前は…と噛み跡の場所を挙げればキリがない。
「シャドウ、何かあったか?話なら聞くぜ?」
以前、からかいながら聞いたときは、傷跡が倍になって返ってきた。そのうえ、傷をつけた張本人は清々しい顔をしているので余計にムカついた。
しかし今回は、傷跡を三つもつけておきながら、ベッドの枕に顔を突っ伏したままだ。
「Hey, darling What's up」
反応がないので、もう一度声をかける。するとシャドウは片耳だけ向けた後、むくりと起き上がった。
「……君は覚えていないだろうけれどな。」
そう言いながら近寄り、傷跡を指さして説明していく。
「一昨日の左腕は、助けた女性に。昨日の右肩は、ナックルズに。今日の首筋は、迷子で捜索中の子猫に。」
最後に深呼吸をして、シャドウは言葉を紡いだ。
「…全部、君の肌を触れさせただろう。」
「…………。」
なんとも言えない空気が漂う。それは、つまり。
「シャドウ………It's Jealousy」
そう伝えると、ボン!と音がしそうなほど、シャドウの顔が赤くなった。そしてまた、顔を背けてしまう。
そういうことか…。答えを聞いたこっちも恥ずかしくなることを、この究極生命体様は分かっているのだろうか…否、分かっていない。
「OK, OK. 俺が悪かった。代わりに、好きな所に一つ傷跡をつけてくれ。な?」
慰めるようにそう告げると、いつもの雰囲気に戻っていた。──が、ほっとしたのもつかの間。
「それなら、君の左薬指にしよう。今、手を貸せ。」
…前言撤回。悪い意味での“いつも”だ。
だが、言ってしまったことを白紙にも戻したくない。覚悟を決めて手袋を取り、左手を差し出す。
「…今度は、優しくしてくれよな?」
シャドウは黙ってその手を見ると、左薬指に噛み付く。遠慮がちに──しかし跡は残るように、ゆっくりと力を込めた。
その感触を胸に、今夜も長くなりそうだと、小さく首を振った。