真っ直ぐ帰宅する気になれず、自宅とは正反対の方向へ向けて夜の道を歩いた。
高層ビルの最上階に位置するカフェバーは、吸血鬼のホットスポットたる新横浜らしく閉店時間は朝の4時となっている。
新幹線が停まる虚無の街を照らす明かりは少なく、薄いレモンサワーを傾ける間に一つ、また一つと明かりは潰えていく。
昼間はいくつかの会社事務所とテナントが開くとあるビルも夜半を過ぎた頃には窓を閉ざす。
冷え冷えとした殺風景な四角形にオレンジ色の明かりが一つだけ点されていた。
人影を認識することもできないほどに離れた窓辺に向かい思いを寄せる。
授業参観に親がきた子供のようにはしゃぎ、憧れの異性を前にした乙女のように頬を染めた自分と同じ髪色と空色の瞳を宿した男のことだ。
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