戸賀と張の話昼時の話、屋上で煙草を吸っていた時に張がやって来た。煙草の煙には相変わらず慣れていないようでよく煙たがっている。
「戸賀さん、あなたは別室をもらってもいいのではないですか?」
張がそんなことを言ってくるのは、もう何度目だろうか。彼のハングリー精神には自分はまったく理解できない。
張夜ノ介は元々は左庭さんの同期である鴨田さんの助手だった。確か自分達より先にあの世代の助手になっていた。そこまで覚えるような義理はないので明確とは言えないが。
評価されてるのだから、きっと頭は良いのだろう。だけど、誰よりも一番だと思ってる。鴨田さんってそういう人が助手になりがちだよな。小さい木野ちゃんもそんな感じだし。
張はおそらく誰かの助手になりっぱなしになるのではなく、自分のように独立した存在になってみないかということを言いたいと思うのだが...俺は誰かの助手になったままでいい。それが性に合ってる。嫌いなんだよね、自分の意思で行動するって。
左庭さんは嫌われてはいるけど、人の気遣いは最低限できるし、俺の好きなようにさせてくれる。嫌だと思うことはしないし、煙草吸いたいと言ったら吸わせてくれる。自分にとってはそれで十分。これ以上は望まない。多分それは真もそうだ。
「うーん、特に興味はないかな」
「左庭五郎よりも良い評価を得たいとは思ってないんですか」
「別に。今のままで良いしね」
「本当に、あなたって...やる気のない人ですよね」
「まぁ、それがアイデンティティでもあるんで」
張が飽き飽きした顔になるも、すぐに切り替わって「またこの話題は言いますからね」と言って帰ってしまった。
本当に自分には興味がない話なんだけどな。あーあ、煙草の火が消えちゃった。