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    Shikimi

    @SSRshikimi

    しきみちゃんです

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    Shikimi

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    スバルの看病をするクラマさん
    健全
    ちょっと前に書いてたの思い出したので供養

    看病朝起きたら、浅く速く呼吸をしながら顔を真っ赤にしている伴侶が横で寝ていた。苦しそうに伏せられた大きな琥珀色の瞳、舞う時になびく髪はじっとりとした脂汗で皮膚に張り付いている。
    里の身寄りのない子供たちの看病をしたことがあるクラマにはすぐ分かった、無理が祟って風邪でも引いたな?と。

    軽く肩を叩いて伴侶……スバルのことを起こす。寝起きと熱でぼんやりしているスバルの口をこじ開け、舶来品のライトで喉辺りまで照らす。
    「ひゃ、ひゃひふう、え……!?」
    「少しじっとしていろ」
    「ひゃひ」
    抵抗したスバルを大人しくさせ、喉の様子を観察してみる。
    案の定喉は真っ赤に腫れていた。こんな様子じゃまともに飯が食えないだろう。
    「喉、痛いか?」
    「はい……」
    溜まった唾を飲み込むことすら痛いようだ。
    クラマは手早く保管してあった薬草をすり鉢ですり合わせ、その結果出来た緑のペーストを指に纏わせる。
    「そら、口を開け」
    「ま、不味そう……」
    「病人が文句を言うな」
    軽く開かれたスバルの口に指をねじ込み、何とか薬草を接種させる。
    「ひ……にが……」
    「覿面に効くんだが、これを飲ませた子供たちにはしばらく距離を置かれた」
    「で、でしょうね……」
    乱れた寝間着を直し、布団をかける。最近の医学では発熱している際に厚着をさせるのは良くないと聞いていたが、少しでも安心して欲しくて、もみじ柄のインバネスコートを布団の上からかけてやる。
    「……へへ、クラマさんの匂いだ……」
    「……しばらく寝ておけ。風邪は寝るのが1番だ。」
    冷たい水に手ぬぐいを浸し、よく絞って、長い前髪を退けたおでこに乗せる。
    へにょ、と笑ったスバルにこちらも笑みで返し、竜神社を後にする。


    どうせどこかの里で無理をしていたのだろうと思っていたら、フブキから丑の刻過ぎに開拓地で倒れているスバルを見つけたとの連絡があった。
    フブキが「たくさん頑張ってくれるのは嬉しいけれど、自分のことも省みて欲しいです」と言っていた。本当にそうだ。秋の里でもあやつはたまに倒れている。

    しかし、病人食はいつも困る。里の子供たちは粥なぞ好まないから、これを食べたらゆっくり寝て水も飲むのだぞと伝えて果物を渡していた。苦い薬の後の甘味だ、子供は直ぐに受け入れてくれる。
    ただ……スバルは疲労も溜まっているだろうし、果物だけという訳には行かない。
    ……(自分があまり甘味以外得意ではないという点で)気が進まないが、居酒屋ヤチヨに頼ることにした。

    「あら、居酒屋の営業自体はまだ先だけど、食材の販売はしているわよ」
    猫又の女将、ヤチヨがにこやかに話しかけてくる。
    「ああ、いや、その……料理を教えて欲しいんだ」
    「あら、珍しいわね……どうしたの?」
    「クラマ様どーしたの?」
    いつの間にか化け狸の少年まで来ている。
    「……その、病人に食わせる粥の作り方を教えて欲しいんだ」
    ヤチヨは少し悩んだ顔をした後、合点がいったようでクラマのことを厨房に招き入れてくれる。

    「ふー、こんなものかしら」
    細切れになった野菜とドロドロの米はお世辞にも美味そうとは言えない。
    「……食うだろうか?」
    「塩味があるから少しは食べやすいと思うわ。スバルくんは好き嫌いもしないでしょ?」
    一口分掬って食べてみる。
    確かに野菜臭さはあるが食べやすい。さすがはヤチヨのレシピなだけある。
    「クラマ様、良かったらこれ鍋ごと持って行って?あ、こっちがレシピよ」
    「助かる」
    「早く良くなるといいわね」

    冷めた粥を再び温める。
    1日分はあるだろうか。明日もまだ熱が出ているようなら俺が一から作るのか……そんな事を考えていたら、布団の方から物音がする。
    「食べ物の匂い……?」
    「食いもん!?」
    起き上がったスバルの額から手ぬぐいがずるりと落下し、スバルの身体の上で寝ていたらしいモコロンに直撃する。
    「ぶへ」
    「ご、ごめんモコロン……」
    ゆっくりと起き上がったスバルは、わざわざ布団にかけてあったクラマの上着を羽織る。
    「俺の上着など、邪魔だろうに」
    「安心するんです〜」
    十分に火が通った粥を器によそい、スバルが席に着くのを待つ。
    「ほら、ふーふーしてやるから」
    「こ、子供扱いしないでくださいよ」
    「……普段は俺がお前に甘えているんだ、これくらいさせろ」
    やけどしないように冷まされた粥がスバルの口元に寄せられる。ぱくりと口にすると、優しい味がした。
    「……美味しい」
    「病人食とは思えないくらい美味いぞ!」
    いつの間にかモコロンがつまみ食いしてる。それを見て呆れながら、二口目を冷ます。
    「これ、クラマさんが作ったんですか?」
    「……いや、ヤチヨさんに教えてもらったんだ」
    ほら、あーんしろ。優しげに微笑むクラマがレンゲを差し出してくる。
    両親の記憶もないスバルだが、親がいたらこんな感じだったのかなとふと思った。二口目を嚥下してから呟く。
    「クラマさん、オレのお父さんみたい」
    「全く、寝ぼけてるのかこのオツムは」




    スバルを布団に横たえ、冷たい手ぬぐいをおでこに置き、掛け布団の上に再びインバネスコートをかけてやる。
    「何か欲しいものがあるなら持ってきてやるが」
    「……クラマさん」
    「生憎俺には病人に抱かれる趣味は無いぞ」
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