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    うに-821

    忍跡が生きる糧です
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    うに-821

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    氷帝テニス部×プリキュアパロのプロットです
    日吉が主人公かつ2年と3年は互いに面識が無いです。若干キャラ崩壊してる感が否めないので脳死で読んで下さい…
    途中から忍跡になる別バージョンのプロットも恐らくじきに載せます プロットではない本編は…いつか…遠い未来に……

    氷帝プリキュアパロ①日吉若氷帝学園中等部2年。今日も今日とてテニスで下剋上に勤しんだ後、帰宅途中にて怪しげな大人、滝に話しかけられる。「ねえキミ、プリキュアにならない?」「…は?」滝は日吉の下剋上精神が気に入ったという。日吉はうさんくさい滝から距離を取ろうとしたところ、突如敵が現れる。「キーング…キーング…」(敵の鳴き声的な)日吉は変身せざるをえず、キュアリベリオンとなる。演武攻撃で敵を見事倒し、滝から敵のトップ『跡部景吾』について聞かされる。その跡部さんに下剋上するため、日吉はプリキュアとして活動することを滝に約束したのだった―。

    ②「ねぇ日吉、最近元気無いね。何かあった?」
    そう話しかけるのは同様に2年テニス部の鳳長太郎。「フン…別に何もない」あーだこーだ押し問答をしていると、ふと敵が現れた気配が。それと共にどこからともなく滝が現れ、日吉は鳳を置いて変身を余儀なくされてしまう。鳳は日吉が急にいなくなったので心配で探すと、そこにはプリキュアとして戦う日吉の姿が。しかし跳躍力の高い敵にだんだんと劣勢になる日吉に、鳳は助けたいと願う。滝はその心の輝きを感じて鳳をプリキュアにすることを決める。そして変身、キュアカリタスとなる。
    「リベリオン!助けに来たよ!!」「なっ…、まさかお前、鳳か?」「キュアカリタスだって。いくよ、リベリオン!」「…ああ、行くぞ、カリタス!」日吉が演武攻撃で敵の動きを止め、鳳がその隙に一撃必殺侍サーブで敵を仕留めた。滝はその様子を見てにっこりし、去る。日吉と鳳は2人で帰路につくのであった。

    ③日吉、鳳がそろうと必ずもう1人そろう人物がいた。それが樺地崇弘。中等部からの編入だが、その純粋かつひたむきな姿で初等部から幼馴染な2人の信頼を確実に勝ち取っていた。そんな樺地は最近2人の元気が無いことを心配していた。大切な仲間だからこそ無理をしてほしくない、そう思っていたところ、どこからともなく敵が登場。「樺地は先に逃げてろ!いくぞ、鳳」「すぐ終わらせるから、待ってて!うん、日吉!」2人はプリキュアに変身し戦う。しかし今回の敵はシシドと呼ばれる人物が繰り出した敵で、動きが素早くなかなか鳳の一撃必殺サーブも決まらない。樺地は木の陰から2人をみていて、どうにかして自分も力になりたいと強く願った。滝が現れる。「君のそのピュアで誰かを助けたいと願う心、しかと見届けたよ。君も、プリキュアにならないかい?」「…ウス!」変身し、キュアタケーレが誕生する。
    「助けに…来ました…」
    その姿に2人は驚愕を隠せない。そんな中敵が素早いスピードでせまる。が、樺地の能力は超コピーで素早さをコピーして敵の動きをとめることに成功。そこに日吉と鳳が必殺技を繰り出し、敵を倒した。
    「この3人なら、きっと彼らの心も取り戻してくれる気がする…」
    滝はそう言い残してどこかへ立ち去った。3人は互いの絆を確認しあい、談笑しながらテニス部の練習に戻った。

    ④一方、敵幹部側ー。ムカヒ ガクトとシシド リョウは焦っていた。
    「おいリョウ!また負けたのかよ」「チッ、しょうがねぇだろ。新しいプリキュアがくるなんて知らなかったしよ。ったく、激ダサだぜ…」「俺も負け続けだッ、クソクソ!」プリキュアに邪魔される苛立ちを発散させていると、とたんにあたりの雰囲気がかわり、一気に気温が下がる。
    「おいテメェら、まだプリキュアを潰せてないのか?」「…アトベ」ムカヒとシシドが見上げた先には敵のトップ、アトベの姿が。側には秘書のオシタリがなにも読ませない表情で佇んでいる。
    「いいか、テメェらに最後のチャンスをやる。次でプリキュアを仕留められなければ、どうなるかわかっているんだろうな」
    ビリビリとした殺気にあてられ、ムカヒとシシドは怯む。寝ていたジローさえも起きて、アトベを不安そうに見つめた。アトベとオシタリが立ち去り、残された3人は決意をかためる。
    「アトベの元じゃやってらんねーよ。まずは俺からだ。今後こそぜってー仕留める!」ムカヒがそう宣言し、一目散に建物から出ていった。シシドとジローはそれを見送る。

    ⑤いつもよりスピードが段違いに速い敵に焦りを覚えるプリキュア、ふと前を見るとそこにはいつも見ない敵幹部の姿が。ムカヒと名乗った彼は、プリキュアを倒すと宣言。しかしムカヒがアトベの名を出して文句を言うことをきっかけとして、日吉がムカヒの目的を問う。ムカヒは失敗すればアトベに殺されるからだと返答。それならば、と日吉は持ち前の下剋上心でムカヒに手を差し伸べる。「俺達と一緒に…下剋上しませんか」ムカヒは驚いてその手を振り払う。「なに言ってんだ!俺はプリキュアの敵だぞ!」「でもアンタ、もっと跳びたそうに見えますよ」「…!!」日吉が説得を続けるうちに、残りの2人が敵の動きを封じる。日吉は新技で敵を倒し、自身の最高戦力が倒されて項垂れたムカヒに再度手を差し伸べる。ムカヒは葛藤の末、その手を掴んだ。抑圧されたアトベの元ではなく、もっと自由に跳びたい。そう思うと、プリキュア側にいるのも悪くない気がした。「俺はムカヒ…いや、向日岳人だ。よろしくな」こうしてムカヒはプリキュア陣営にうつった。ただ残してきた仲間達のことだけが気がかりで、向日は歩く日吉たちを前に背を向けて1人、夕陽をじっと見据えていた。

    ⑥アトベからの追手が激しくなり、向日は自分のせいでと焦るようになる。ある日向日は3人がピンチに陥ったのを見て、思わず隠れていたところから飛び出してしまう。攻撃を持ち前の跳躍力で変身しないながらに受け止めるが、だんだんとボロボロになる向日。常人なら複雑骨折しかねない攻撃を何回も受け止める向日がむしろ異常なのだが、その常軌を逸した頑丈さや身体能力も限界が近づいていた。しかしその目は状況に反比例して輝いている。もっと跳びたい、そしてプリキュアを助けたい…! するとあたりが光り、どこからともなく変身アイテムが。こうして向日は変身し、キュアなんとかとなる。跳躍力が格段に増し敵を翻弄、必殺技で敵を倒した。「俺は変われたんだ…!」そんな向日のすっきりした様子に日吉達3人は微笑んだ。
    ところかわって敵陣営。シシドはクソ…と悔しさに唇を噛んでいた。「ガクト…なんでプリキュアになっちまったんだよ…」「ガっくんはきっと、もっと跳びたかったんだC」後ろからやってきたのはやはり眠そうなジロー。リョウはどうするの、と聞くのでシシドは拳を握りしめた。「俺だって好きでやってる訳じゃねぇよ。だけど、俺まで行っちまったらジローがさみしくなるだろ…」次で決めてガクトの野郎も取り返す。そう言い残して去っていくシシドの背中を、ジローは悲しそうな目で見送っていた。

    ⑦向日が仲間になり、OBという建前でテニスをプレーしていた向日。3人はテニスも強い向日に勝てるように各々特訓しつつも向日と仲良くなっていたところ、どこからか敵の声が。4人が駆けつけるとそこにはシシドがいた。「リョウ…!」「ガクト、こんなとこにいねぇで帰るぞ」向日は葛藤、しかしここに残ることを選ぶ。「帰っても俺の居場所なんかねぇ。それに、今は守りたい仲間がいるんだ」その言葉に2年生3人が横に並ぶ。「守られるだけじゃありませんよ…共に戦う仲間でしょう?」日吉はそうニヤリと笑って言うので、向日もニヤリと笑って頷いた。だが「俺達は、仲間じゃなかったのかよ…」小声でシシドがそう呟くのを聞いて、向日は辛そうにする。「リョウ…」「…なんでもねぇよ。いけ!」やはりスピードが速い敵だが、なぜか決定打を打ってこない。鳳は1人そんな様子に気づき、シシドに声を掛ける。「シシド…いや、シシドさん!どうして本気を出さないんですか!」「うるせぇ!俺は本気だ!!」「違う!だってあなたは…俺達を倒しに来てません。本当は優しい心があるんだ」シシドは真っ直ぐな目で鳳に見られて固まってしまう。途端に敵のスピードも落ち、鳳が必殺技で倒した。向日やその他2人もシシドに近づく。「俺も本当は…弱えやつを虐げるような真似なんかしたくねぇ…。けど、俺だって大事なダチがいんだよ…」そんなシシドの様子に向日は笑う。「ならさ、俺達でジローのことも助けにいこうぜ!」自由に笑う向日の顔は、シシドが今まで見た中で一番輝いていた。「…ああ、そうだな。俺は宍戸亮だ、よろしく」
    こうしてなんやかんやありつつシシドもとい宍戸が仲間になる。

    ⑧一方敵サイド。広い庶務室でアトベは舌打ちをした。「シシドもムカヒも何やってんだ、アーン?」その声は冷たく部屋の中に響く。「まあそう怒らんといてや。痛めつけたら自分らも懲りて戻ってくるんちゃう?」隣に立っていたオシタリはニコリと形だけの笑顔で応える。オシタリは裏切り者には手厳しい。本来なら決して許しはしないが、2人とはそれなりの付き合いだったので連れ戻すという選択をとったようだ。アトベもそれに頷く。「追っ手を増やして様子を見るぞ」「王の仰せのままに」
    ジローはその会話を部屋の外から盗み聞いていた。(このままじゃガっくんとリョウがやられちゃう!!)ジローにとって2人は幼馴染であり、なんとしてでも傷つけたくはなかった。しかしジローにとってアトベとオシタリも同様に大事な存在で、傷ついてほしくない。ジローは1人悩む。「やあ、困ってるようだね。もし良ければその悩み…解決してあげようか?」部外者は誰一人として立ち入ることの出来ないはずの建物内、彼は突如として現れた。
    「…タキ……?」

    ⑨滝萩之介。彼は元々フィナンシャルアトベ(敵組織の名前)の幹部であった。それはまだこの組織がアトベとオシタリしかいなかったころで、三位一体となって組織をきりもりしていた。目的は強いものが頂点に立ち、みなを導くことのできる王国を作ること。アトベ王国(キングダム)と呼んだそれは3人の共通の目標であった。しかしある時からそれが狂い始める。アトベ王国でみなを導くことから目的がズレて王国自体を大きくする方向に転換し、弱者を切り捨てるようになってしまった。で滝はマネージャー的な立場でそんな切り捨ての様子を見て間違っていると進言するが、それさえも切り捨てられてしまう。そんな状況をなんとか打破すべく、それに対抗できうる存在、伝説のプリキュアを捜索する旅に出た。時期はちょうどジロー達3人が加入したころで、面識は若干あった程度。滝という存在を死んだことにして抹消し誰にも気付かれないように活動して暫く後、プリキュアの総本山らしき場所に辿り着き、そのトップである元プリキュア 榊に出会った。榊は滝の事情を知り、深慮の末変身アイテムを受け継がせる。こうして滝はプリキュア探しに本腰を入れ、今に至った。間違った方向に進みつつあるアトベ王国を、なによりアトベ自身を止めなければならない。逡巡しているジローにその一切合切を話し、ジローはそれを秘密裏に手伝うことを決める。そして2人はこっそりと建物を後にした。

    ⑩滝の案内のもとジローがちょくちょく氷帝へ来るように。日吉は面倒くさそうなのが増えたと思っていた。向日と宍戸はジローが来てくれてめっちゃ喜ぶ。ジローはプリキュアについて興味津々だったので、向日が教えていた。しかしある日、滝が深刻そうな顔でやってくる。「ジローが…洗脳されたかもしれない」いつものニコニコ笑う寝ぼけ眼のジローではなく、冷徹な眼をしたジローがそこにはいたという。「プリキュア?殺すよ?」そうのたまうジローを連れてくるわけにはいかず、みんなで解決策を話し合うことに。「多分、オシタリに勘付かれたんだと思う」そういうのは宍戸。以前オシタリが似たような技を使って洗脳していたところを見たことがあるらしい。向日もそれに同意し、ジローの身を案じる。ここで樺地が口を開いた。「ジローさんを…助けましょう」そこには静かな決意が漲っていた。滝もそれに頷く。と、ここで敵襲来。ジローかと思ったらどうやら違うようで、オシタリからの刺客だと向日が告げる。これがなかなか強く、あのキュアですら軽々と身体能力を抑え込まれてしまう。「くっ、どうすれば…」ボロボロになっていく仲間達に宍戸は拳を握りしめる。「俺はまた…、なんも出来ねぇのかよ…」意気消沈する宍戸に攻撃が襲いかかる。しかし向日が身を挺して守る。「なあ、俺達さ、まだまだ変われるんだぜ」差し伸べられた手。宍戸は決意を固めた。「俺は…、俺は、お前らを助けるッ!!」そう言った瞬間あたりに光が満ち、宍戸の元に変身アイテムが。「ったく、守られるばっかりなんて激ダサだぜ!」こうして宍戸は変身し、キュアとなった。目にも止まらぬスピードで移動し、オシタリの刺客が攻撃を防ぐ前に攻撃を打ち込む。近接で翻弄したところで、鳳が必殺サーブで敵を地面に縫い付ける。宍戸は動けなくなった敵に必殺パンチを撃ち込み、見事撃退することに成功した。良かった、とみんなが笑顔をほころばせる中、倒したはずのオシタリの刺客からなにやら信号が出る。『ジロー…出番やで―』

    ⑪あたりにズシンとした重い空気がのしかかる。比喩でもなんでもなく、5人は膝をついた。「プリキュア……」どこからともなく現れたのは噂のジロー。しかし目は虚ろでいつものような輝きがない。「ジロー、やっぱ洗脳されてんのか?」向日と宍戸が目を見合わせてそう言うと、それに呼応するようにジローは手を払う。途端に身体にかかる力が大きくなり、2人は地面に膝をついた。「!…ジローさんはどういう攻撃方法なんですか!」日吉の問いに、滝が後ろから応える。「彼は状態異常をかけるんだ!その強力な睡魔をかけられた者は身体が重くなって、最後には地面に突伏して寝てしまう」その寝るということはつまり永眠と同義で。鳳が膝をつく2人にかけよって支えようとするも、ジローがまた手を払えば今度は日吉も鳳も膝をついてしまった。しかし1人だけ、膝をついていない人物がいた。「樺地、まさかお前…影響を受けていないのか?」「ウス」なんと樺地はジローの能力をコピーし、その状態異常を無効化していたのだ。いくらジローが手を払っても樺地は一向に微動だにしないため、しびれを切らしてジローは敵を樺地に差し向ける。しかしそれらの敵も樺地は持ち前のパワーではねのける。ジローは自分達の方へ戻ってきてくれると樺地は強く信じていた。その信じる心が並々ならぬエネルギーとなって樺地をつつみ、パワーアップしていたのだ。敵をはねのけながら樺地は前へ進み、とうとうジローの目の前に迫る。「ジローさんは…こんなところで負ける人では…ありません」静かな空気に樺地の真剣な声が響いた。
    ジローは精神世界で戦っていた。目の前には微動だにせず攻撃を繰り出してくるオシタリ。自身の体は既にボロボロで、もう無理だと思ったその時、樺地の声が聞こえた。「ジローさん…一緒に、行きましょう。みんな…待ってます」その言葉にジローはハッとした。自分を想ってくれる大事な仲間がいると。だから、自分は絶対に勝たなければならないのだと。「うん、樺ちゃん…オレ、頑張る!!」途端ジローの体を眩い光が包み、ジローは集中して必殺の一撃をオシタリに繰り出した。「ごめんオシタリ、オレ、みんなと助けに来るから!!」その一撃がオシタリにせまり、オシタリは苦い顔をしてなにやら呟くと、その姿はフッとどこかへ消える。と同時にジローは力尽きて意識を失った。
    目が覚めると宍戸と向日が心配そうにこちらを見ていたため、ジローは慌てて起き上がる。「あれ?オシタリは…??」混乱するジローに滝が一切を話すと、ジローは申し訳なさそうにした。「みんなのこと、傷つけちゃった…」すかさず、樺地が呟く。「大事な人を…守れたので…これくらい、なんてことありません…」その言葉にうんうん、と鳳が頷きながら日吉の肩をポンと叩くので、日吉は鬱陶しくそれをはらいのけてからジローを見据えた。「それに、アトベさんに勝つにはアンタが必要ですからね」「俺達であいつらも助けようぜ、ジロー!」宍戸がジローに手を差し伸べ、ジローはその手を取って満面の笑みを浮かべた。「うん!オレ、絶対に助ける!!」

    ⑫オシタリはモニターでその様子を見ながら溜息をついた。洗脳してジローに2人の回収を命じるつもりだったのに、まさか逆に向こう側に引き抜かれてしまうとは。それに旧友のタキの姿もあり、オシタリは話のややこしさに頭をかかえる。すると後ろからアトベがやってきたので慌てて弁解する。「…アトベ。堪忍な、作戦は失敗や。次は俺が行くわ」オシタリが椅子から立ち上がって外に行こうとすると、アトベは思わずその腕を取る。「テメーはまさかあっち側に行ったりしねぇよな?」その眼差しはやはり氷のように鋭く、オシタリは昔から変わらないそれにニコリとこれまた変わらない笑みで応えた。「勿論。何年一緒にやってきた思てんねん」
    オシタリが武器庫に消えていく様子を見送りながら、アトベはその他のモニターに目をやる。そこには荒れ果てたアトベ王国の様子(炎の上がる街、怯える人々など)が大きく映し出されていた。一方で武力は圧倒的なまでに強く、それにアトベはにやりと嗤う。プリキュアを倒せば、ここら一帯の人間をあちらの世界に転移させて、自身の王国民にすることができる。そうすればアトベ王国はより大きくなり、フィナンシャルアトベもより大きくなれるのだ。「大きくなるんだ…ならなければ…王国は……」
    複数のモニターに照らされたアトベの顔には、決意の表情が浮かんでいた。

    ⑬ジローを含めて3人は氷帝のOBと偽って、相変わらず2年達とテニスをしていた。人間らしからぬ体力やパワーを前にしても、2年達は諦めない。むしろ楽しそうに自身達もパワーアップしていく姿を、滝はベンチからにっこりと見つめていた。本当ならプリキュアとして世界を守るなんていう重役を負わせたくはなかった。俺達と人間はこんなにも仲良くなれるのに、なぜ狂ってしまったのだろう。次第に悶々と悩む方向へ思考が逸れていくと、それを中断させるように日吉がやってきて言う。「アンタはテニスやらないんですか?」「俺は計測係だったからね。それに、みんなのようなパワーや体力も無いんだ」滝の体からは長年の放浪によって元のパワーが失われているため、プリキュアとしても戦えなかったのだ。日吉は曖昧に笑う滝を見かねたのか、ラケットを置いて隣に腰を下ろす。
    「アトベさん、全然来ませんけど」早く下剋上をしたいし、ラスボスがいるというならとっとと倒したい。そう本音を交えて日吉が滝に言うと、滝は顎に手をそえて眉をひそめる。「そうだね…もうそろそろ来ると思うよ。あと残る幹部は1人、その名も――」
    「――俺んことやろ?タキ」
    驚いて背後を見ると、そこにはオシタリが立っていた。「オシタリ、なんでここに!?」プリキュアを直接襲える範囲には転移できないようになっているが、どうやらオシタリは気配を消して移動してきていたようだ。ラケットのストラップが鳴って他のメンバーがやってくると、みなオシタリの姿に気づいたようで目を見開いている。「言っとくけどユウシ、俺達はもうアトベの元には戻らねぇからな!」「2人はオレ達が助ける!」横並びになって戦闘態勢に入るプリキュア達を前に、オシタリは口角を上げた。「アトベに任せるまでもあらへんわ。今ここで全員、俺が倒したる」
    戦闘。流石は幹部のトップで桁違いに強く、着実に1人1人仕留められていった。まずはタンクの樺地が、次に日吉を庇った向日が、そして宍戸を庇った鳳と倒れた鳳を庇った宍戸が、最後に日吉が。次々と倒れていく仲間を見て、プリキュアでないジローは滝と共にいたが、それも限界で前に躍り出た。「ジロー、死にに来たん?」「違うC!オレは、みんなを助けるんだ!」そんな様子にオシタリは溜息をつく。「助ける言うたって力が伴われへんかったら無能も同然とちゃう?」オシタリの一撃でジローは吹き飛ばされる。だがジローは諦めない。震える脚でなんとか立ち上がり、腕を広げた。「力がなくても、想いは絶対に届くC!!」だから、助ける!そうジローが叫ぶと同時に、滝の懐にあった変身アイテムが飛び出し、ジローは光りに包まれる。ついに変身し、キュアとなった。「みんなには助けられたから、今度はオレが恩を返す番!」ジローが祈ると倒れていた日吉達の体に黄色の粒子が集まり、力が漲る。「そういやジローは昔っからバフタイプだったよな」宍戸が笑顔でそう言いながら、鳳に肩を貸して起こす。他の面々も続々と立ち上がり、その光景にオシタリは冷や汗が流れる。全員が揃ったところでジローが必殺技を放ち、それによって全員を取り囲んでいた敵が一掃される。オシタリ自身にも傷ができ、オシタリは舌打ちした。「……戦略的撤退や」オシタリの姿が消え、みなはやっと変身を解いた。ジローがとうとうプリキュアになったので幼馴染はハイタッチをして喜ぶ。そんな様子を遠目に見ながら、鳳と樺地は良かったと言わんばかりに笑顔を咲かせていた。だが日吉だけは真顔で夕陽を見つめていて、滝はその様子に気づいて声を掛ける。「日吉、浮かない顔だね」「アトベさんは…オシタリさんよりもずっと強いんだよな」「うん、それはもう」その言葉に日吉は拳を握りしめる。「俺は…もっと強くなりたい。誰も倒れることが無いように」プリキュアを通して、日吉の中では仲間を大切に思う心も育まれていた。下剋上もするけれど、自分が弱いせいでみなに迷惑はかけたくない。その旨を伝えれば、滝はいつかのようににっこりと微笑んだ。「大丈夫だよ、ほら」後ろを指されて振り返ると、そこには日吉の言葉を聞いていた仲間たちの姿が。「俺達も日吉と同じ気持ちだよ」「みんながいれば…大丈夫…です」鳳と樺地の言葉に続き、滝は日吉に告げた。「だって俺達は――仲間なんだから」

    ⑭数日後、日吉達はトレーニングを行っていた。いつものようなテニスではなく、プリキュアとして戦うための特訓である。オシタリ戦よりも確実に強くなったプリキュア達を見て滝はそろそろ頃合いだと思い、とあるアイテムをみんなに渡した。「アトベやオシタリと戦う時のために、念の為持っていてくれないかな」それは太陽のブレスレットだった。「彼らは氷の力を使うから、これで幾分中和できるはずだよ」あちらの世界と地球では時間の流れが違うものの、数日間姿を見せないということはあちらでもは入念に準備をしているということを指し示しているため、次がおそらく決戦だろうと滝は説明する。「準備はいい?」「「「「「「勿論!!!!」」」」」」7人は手を重ね、心を一つにした。
    一方敵サイド。「…ッ、なんやねんあいつら…」仲間やとか、助けるやとか。オシタリはそれらの前に自身の力が通用しなかったことに心底苛立っていた。あと一歩だった、そう思いはするが、きっとその油断が今回のような敗因を生んでしまったのだろう。モニターの電源を強引に切り落として、施設のとある場所へ向かう。重厚な扉の前にはアトベが腕を組んで立っていた。「……アトベ、退いてくれん?」「本当にこれを使うのか」これ、と呼ばれたそれは扉の奥にある秘薬。オシタリは頷いた。「王国の兵士は動員できへんし、俺がなんとかするしか無いやろ」アトベを尻目にオシタリは部屋の中へ入り、それを手に取る。「ほんなら」「………」目的を果たし部屋を出ていくオシタリの背を見つめた後、アトベは入れ替わるようにして部屋の中に入る。部屋の隅にある箱には、先ほどとそっくりの薬がしまわれていた。「……テメーだけが覚悟をしてるなんて思うなよ」アトベは誰に言うでもなく呟き、薬を手に部屋をあとにした。

    ⑮どんよりとした曇りの夕暮れ時。とうとうその時はやってきた。ビリビリとした殺気とポケットで鳴り響く警戒音で、特訓をしていたプリキュア達は途端に1箇所に固まって身構える。その瞬間、空間の裂け目からオシタリがやってきた。「あれ?なんかユウシのやつ、いつもと雰囲気違くね?」見た目も心なしか変化しており、日吉はごくりと喉を鳴らす。オシタリは前回とは違ってニコリともせず、ただ単調に言い放った。「プリキュア――ぶっ殺したるわ」
    オシタリ戦開幕。前回よりも圧倒的に素早いオシタリの攻撃ではあったが、日吉達も特訓の成果が出ていてなんとかそれに食らいつく。「…ッ、なんで効かへんねん!」オシタリがなにか手で術式を組むような動きを見せるも、日吉達には効かない。その間にも攻撃を繰り出していると、オシタリは何かを発見したのか硬直した。「その腕輪、アトベの……」視線を落とせば、滝がくれた太陽のブレスレットがほのかに光っていたのにプリキュア達は気づいた。これがオシタリの洗脳からプリキュア達を守っていたのだ。オシタリは滝の方を見て苦々しい顔をする。「あん時持ち出したんやな」ブレスレットを壊そうとしたオシタリに、ブレスレットが光り輝いて一瞬の隙ができる。「今だ!」滝の掛け声により、全員が個々で必殺技を放ってついにそれがオシタリに直撃した。オシタリは変身が解けて地面に倒れ込む。悔しさで地面を叩くオシタリに、日吉が近づく。「アンタに何があるのか知りませんけど、俺達と一緒に行きませんか」「…アカン、俺は…アトベと約束したんや」「アトベも俺達で一緒に助けるC」差し出された手に、オシタリは躊躇う。アトベとの約束を言われた通り守るべきか、それとも手を取ってアトベを現状から救うのか。王国の状況が目に見えて悪いのも理解していたし、その現状を打破するためにもアトベや組織は変わらなければならないとも感じていた。「…やけど、俺は―」
    「そこまでだ」
    途端、一瞬にしてあたりの気温が一気に下がる。吐いた息は白くなり、地面の草花には霜が降りた。「…アトベ」倒れたまま、オシタリはアトベの方を見やる。空間の裂け目から悠々と出てきアトベはオシタリを一瞥した後、近づく日吉を阻むように前に進み出た。「俺様の部下に手を出してんじゃねーよ、プリキュア。体で教えねぇとわからねーのか?」そんなこんなで跡部戦が開幕。跡部が手を払えば太陽のブレスレットも一瞬で砕け散り、極度の寒さが日吉達を襲う。慣れていない2年達はその寒さに震え、3年達は彼らを守るようにアトベに立ちはだかった。それぞれの想いを伝えて3人の必殺技を放つも、アトベはほう、と少し驚くだけでダメージを負った様子はない。インサイトのポーズをするとどこからともなくつららが落ちてきて、3人は身動きが取れなくなった。2年達は寒さに耐性がないものの、3年達の想いによりパワーアップして奮闘。しかしフェンシングのように美しく戦う跡部を前に段々と傷ついていく。その様子を今だ地面に倒れながら見ていたオシタリは、昔のことを思い出していた。

    ⑯アトベ、オシタリ、タキの3人は学園の同期だった。互いに由緒正しい家の出身であることや、思慮深い性格なのも相まって、3人は学園を卒業してからも共にいることを約束するほど仲が良かった。卒業式のある日、アトベは2人に言った。「俺は王様(キング)になる」突然そう宣言したアトベに、オシタリとタキは顔を見合わせた。「キングになって何をしたいん?」オシタリがそう聞けば、アトベは上機嫌で答えた。「国民を導いて、誰もが安心して暮らせる国を創るぜ」成績も実技もトップで人望もあるアトベなら本当にやりかねない、いや、やるだろうという直感がオシタリにはあった。タキもそう思ったのか、いいねそれ、と賛同した。そのまま三位一体で王国を築き上げ、着実に国としての勢力を増していったある日だった。とうとうアトベ王国が他国に侵略されてしまったのだ。まだ建国したてで間もないために、征服こそ免れたもののその被害は甚大で、アトベが悔しさで歯を噛みしめるのをオシタリは見ていた。「……どこにも負けねぇ、強い国になる」その日から、アトベ王国は次第に変わっていった。
    「……あとはあの時タキが言った通りやな」「そうだね、でもその時のケイゴ君には俺の言葉は届かなかった」いつのまにか隣に来ていた滝とオシタリは話していた。目の前には3年達が氷柱から脱出したのか、アトベ相手に全員で戦っている。「オシタリはこのままでいいの?」「……良くないんは、わかっとる」本当は変えたい。だが、今のアトベにその言葉が届くかどうか。そのオシタリの逡巡を断ち切るように、滝はにっこりと笑って言った。「アトベが国の為を思って戦ってるってこと、よく伝わってくるよ」オシタリは顔を上げる。プリキュア達の攻撃で、確かにアトベには見えにくいけれども小さな傷ができ始めていた。自分よりも国を優先するアトベの姿に、オシタリ…いや、忍足は立ち上がる。「…俺もそろそろ、アトベに気づかせんと…アカンなッ!」そう言い終わると同時に忍足が走り出し、滝は驚く。「!!」アトベの手を背後から忍足は掴む。驚いて振り返るアトベの手から薬瓶が滑り落ち、忍足がそれをキャッチした。「アトベがこれを使ってもうたら、今度こそ本当に手つけられへんくなるわ」「…オシタリ、まさかお前まで、」「ええ加減目ぇ覚まさな思てな。アトベだって本当は気づいとるはずや」アトベからの攻撃が止んだ隙に、プリキュア達は互いに近寄って一塊になる。「今だ!」宍戸と向日、ジローの掛け声により全員が再度個人で最大威力の攻撃を放つ。忍足を上手く避けてアトベに直撃したそれは、近くの雪をも舞い上がらせてあたり一面の視界を白に染めた。「……やったか?」日吉が静寂の中呟いた途端、場にそぐわないアトベの高笑いが響く。その威圧はプリキュア達や滝さえも動けなくしてしまうほどで、アトベはひとしきり笑うと、忍足の方へ手を払う。見えない力で吹き飛ばされた忍足は、氷の氷柱に激突して苦しそうに呻く。「そうか、テメーは秘書だから信じてたんだがな…」滝が急いで忍足に駆け寄ると、忍足は目を見開いて呟いた。「……アイツ、もう飲んどったんか…!!」薬瓶の中は空だった。中身について宍戸が問うと、忍足は劇薬だと答える。「本来の力がめっちゃ増幅されんねん。俺も飲んどったからその威力はわかるやろ?」ブレスレットによってその力を十分に発揮できていなかった上での忍足のあの強さを思い返し、みな青ざめる。忍足よりも断然強いというアトベがもしその薬を使えば―。
    「俺様は出し惜しみはしねぇ主義なんだよ。俺こそが王様、テメーらを倒して王国を拡大させる」そう言ってアトベの体が光る。遅効性のその薬がついに作用したようで、アトベの容姿はより洗練された冷酷な王様の姿に変身した。

    ⑰続アトベ戦。変身した後は力もめっちゃ強くて、プリキュア達はあっさりと捻り上げられる。「フン、大したことねぇな」日吉は地面に突伏しながらぎりりと唇を噛む。とうとう変身が解けてしまい、アトベは更に最後の一撃を下そうとした。ここで滝と忍足が立ちはだかる。「ケイゴ君!!お願いだから、もう目を覚まして!」「思い出しいや、あん時の俺らを…!!」悲痛な叫びに、アトベの脳裏にチクリとなにかが痛みながらよぎる。「あの…時、だと…?」顰め面をしながら暫し考えるも、首を振ってアトベは手を払う。「そんな過去、俺様にはねぇ」吹き飛ばされた2人。だが諦めない。プリキュアたちが目覚めるまでは、絶対に。「アトベが言ったんやんか!みんなを導ける国を創るっちゅうんは…!!」アトベの脳内の痛みは大きくなる。「そこまでして王国を大きくしたい理由は、本当の理由は、別のところにあったはずだよ…!」「やめろ!!それ以上言うんじゃねぇッ!!」アトベが頭を抱えながら何度手を振って2人を吹き飛ばしても、血反吐を吐きながら立ち上がる2人。だが数回してそれもついに限界を迎え、2人は倒れた。アトベは肩で息をする。なぜだ、力量の差は圧倒的なはずなのに、なぜ俺は焦っている? そこでついに、日吉が立ち上がる。「アトベさん、焦ってる、んですよね…」図星をつかれてアトベは攻撃するのを忘れる。「俺達には、その気持ち、わかります…」鳳も立ち上がる。「大切な人を、守るため…ですから……」樺地も。「…けど、どんな状況にも…可能性は、あるんだぜ!」向日も立ち上がりながら言う。「アトベがいくら強えからって、諦めるなんて…ほんと、激ダサすぎるぜ」宍戸も。「仲間を想う気持ちが一番大事ってこと、…オレ、ここに来てから始めて知ったC!」ジローも立ち上がる。プリキュアではない彼らの身体は限界に近いけれど、心は一つだった。「俺達は諦めませんよ…。なんせ、仲間がいますからね」日吉は立ち上がったみんなを見渡した後、アトベに指をさす。「アンタの守るは間違ってる。1人が支配してちゃ誤った道に行っても気づけない。だから、俺は…俺達は、全員で道を切り拓いて進むんだ!!」その瞬間、6人の周りに光が満ちる。滝は驚いて呟いた。「こ、これは…!!伝説の…力……?!!!」どこからともなく行ってよし、という声がぼんやりと聞こえ、6人は変身した。今までと違って、全員が統一された太陽のようなコスチューム。「これが俺達の絆の力だ――ッ!!!」ついに個別ではなく全員が一丸となった必殺攻撃、その名も『』。アトベの身体にその攻撃が当たる。…アトベは、ついに昔を思い出した。
    (ああ…そうだ、俺はオシタリとハギノスケと…)
    次々と浮かぶ、王国創立当時の光景。住民はみな笑顔で助け合いの心を持ち、アトベもそれに笑顔で応えていた。政策は必ず3人や議会で話合って決め、国内全体で支え合いながら過ごす日々。だが、あの時。惨殺されていく住民と国家をのみ込む戦火。宮殿から何もできずに見ていたアトベは、己の無力さと国家の力不足を痛感した。俺が導くのではなかったのか。住民を助けられない俺は今、国を正しく導けていない。正しく導くには、住民を助ける力があればいい。国が強くなればいい。今も戦争は続いていて状況はひっ迫している。自分が早急に判断しなければ。そうしてアトベは軍隊を編成することを独断で決め、結果戦争は終結した。だがアトベの周りには日夜あの時の恐怖がつきまとう。国を守れ、早く判断しろ、強くならねば、己の力だけで――。その焦りに促されるまま、アトベ王国は武力をどんどん増していった。しかし早急な武力への尽力はそれ以外の分野を疎かにし、結果として国内の状況は悪化の一途を辿っていた。だがアトベは気付かない。タキに言われようと、オシタリにやんわりと指摘されようと。アトベの心の中には常に王国があった。強くならなければつぶされる。タキが離れるその頃には既に、アトベの脳内に昔の記憶は無かった。オシタリすらも、アトベのその強固な方針には屈服せざるを得ず、次第に彼自身の考え方も変わっていく。誰も反対しない、反対できない。こうして王国は、変わってしまった。
    日吉たちの変身が解ける。力を使い果たして立つのもやっとだったが、みな力のかぎりを尽くして立っていた。白い靄がはれ、足元にあった雪がどんどん消えていく。靄が晴れると、そこにはアトベが倒れていた。
    「……ああ、思い出した。俺は―間違っていた」
    ポツポツと語るアトベ、いや、跡部の話をみなは聞く。「テメーらの攻撃を受けて始めて気がついた。仲間っていうのが、どれ程強いのか」跡部はプリキュア達を順に見やり、幼馴染のところにきて身を起こし、謝罪する。「……すまなかったな」おさなな達は軽口を叩きながらも笑ってそれに答え、跡部も笑う。そして後ろから滝と忍足も現れる。跡部は先ほどよりも申し訳なさそうに俯いた。「全部、俺の責任だ。…今、俺を殺したって文句は言わねぇ」その声には深い後悔が宿っていた。プリキュア達(主に鳳)がハラハラと見守っていると、忍足は近づいて跡部の肩をポンと叩く。滝もしゃがみこんで跡部に言った。「跡部を殺したってなにも始まらないからね。まずは王国を立て直さないといけないし」忍足も言う。「跡部は未来永劫『王様』やからな。いてもらわへんと困んねん」仲間から必要とされるのはこんなにも嬉しいものなのか、と跡部の目には涙の膜が張る。それを見てとうとう我慢の限界に達したのか、向日が突然叫びだした。「辛気臭せーって!俺、もう日吉ん家帰って寝るぜ!!」(向日は日吉の家に居候させてもらっている)疲れたし!と言う言葉に続くように、ジローも眠たげな声で呟く。「オレも…もう眠気が…限界……」そのまま寝そうになるジローをなんとか支えながらも、宍戸は言う。「今後のことは後だぜ跡部!俺達はもう疲れて死にそうなんだよ」ジローの居候先である樺地にジローを預け、宍戸も鳳の方へ向かう。その様子を見てやれやれと笑う滝と忍足。跡部も一瞬ぽかんとした後、今度こそ明るい高笑いをした。「フン、なら明日にまた集合しようじゃねーの。今日はお開きだ!!」自身も怪我によって動けない跡部は、忍足に運ばせて滝と共にあちらの世界に消えていく。日吉はそれを見ながら、空を見上げた。どんよりと曇っていた空はいつのまにか晴れ、青々とした空が清々しく広がっていた。(――ついに下剋上、したんだな)一人だけの下剋上ではない。それでも嬉しく思う自分に変化を感じながら、日吉は自宅へと歩き始めた。「あっ、おい日吉!置いてくなって!!」という声を無視して。

    「で、テメーらはどうする」アトベフィナンシャルの元本部に招かれた日吉達は、跡部と今後について話していた。忍足と滝は今後も跡部と共に国の再建を手伝うという。一方で幼馴染達は跡部が無理矢理働かせていたようなものなので、跡部の側に戻るかどうかは各々の判断に委ねられていた。しかし幼馴染の心は決まっている。「「「勿論手伝うぜ(C)!」」」跡部の本当の気持ちを知ったからには無下にはできないし、仮にも自分達が育った世界だから貢献したいとのことだった。「樺ちゃんにもう会えなくなっちゃうね…」「宍戸さん……」跡部の側に戻るということは即ち別離ということで、みな悲しそうにする。だがここで跡部がパチンと指を鳴らす。「アーン?テメーら、もう会えないとでも思ってるのかよ?」それに随分腑抜けた面しやがって、と跡部は6人を見渡す。なんのことだ、とみなが疑問に思う中で、忍足が説明する。「別にこっちとあっちはわりと簡単に行き来できるねん。やから会えんくなる訳ちゃうで」喜びの声が上がる中、それを遮るように滝が言う。「あと実はね、まだ俺達が把握してない敵がいくらか残っているらしいんだ」それらを倒し切るまではプリキュアとして活動しなければならないのだ、と。えーー!という面倒くさそうな声が向日とジローあたりから飛び出る。
    とここで遠くから敵の声が。アトベフィナンシャル内にもいるらしく、プリキュアの存在に反応して続々と集まってきていた。流石本部、その数は以前の比にもならず、9人は囲まれる。「この量はいくらなんでもおかしいですって…!」日吉が苦言を呈するが、滝はにこりとする。「だから、頼んでおいたよ☆」
    「フン、忍足、萩之介、準備はいいな?」
    「勿論や、ウチの王様」
    「さっさと決めちゃおうか」
    3人が変身し、なんとプリキュアになったのだ。「えっ、跡部さんもなれるんですか!?」「忍足…さんも…」驚く鳳と樺地と同様に、日吉も驚く。幼馴染は展開が予想できていたのか、やっぱりか、と笑っていた。「というか滝さん、アンタはプリキュアになれないんじゃなかったんですか」「こうなることを見越してあの後榊さんのところに3人で行ってね、そこで聞いたら俺も実はプリキュアになれることがわかったんだよ」もちろん2人も、ね。そうウインクし、敵へ向き直る。「俺様の美技に酔いなッ!」「攻めるん遅いわッ!」もはやバーサーカーと化した2人を滝がサポートしながら、敵陣をどんどん崩していく。それでも途切れることを知らない敵に、日吉たちもやれやれと変身アイテムを手に取った。「…俺達も変身だ!」
    こうして生まれた9人のプリキュアが後のプリキュア史で『氷帝プリキュア』と称されるようになるのを、彼らはまだ知らない――。
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    うに-821

    SPUR ME氷帝テニス部×プリキュアパロのプロットです
    日吉が主人公かつ2年と3年は互いに面識が無いです。若干キャラ崩壊してる感が否めないので脳死で読んで下さい…
    途中から忍跡になる別バージョンのプロットも恐らくじきに載せます プロットではない本編は…いつか…遠い未来に……
    氷帝プリキュアパロ①日吉若氷帝学園中等部2年。今日も今日とてテニスで下剋上に勤しんだ後、帰宅途中にて怪しげな大人、滝に話しかけられる。「ねえキミ、プリキュアにならない?」「…は?」滝は日吉の下剋上精神が気に入ったという。日吉はうさんくさい滝から距離を取ろうとしたところ、突如敵が現れる。「キーング…キーング…」(敵の鳴き声的な)日吉は変身せざるをえず、キュアリベリオンとなる。演武攻撃で敵を見事倒し、滝から敵のトップ『跡部景吾』について聞かされる。その跡部さんに下剋上するため、日吉はプリキュアとして活動することを滝に約束したのだった―。

    ②「ねぇ日吉、最近元気無いね。何かあった?」
    そう話しかけるのは同様に2年テニス部の鳳長太郎。「フン…別に何もない」あーだこーだ押し問答をしていると、ふと敵が現れた気配が。それと共にどこからともなく滝が現れ、日吉は鳳を置いて変身を余儀なくされてしまう。鳳は日吉が急にいなくなったので心配で探すと、そこにはプリキュアとして戦う日吉の姿が。しかし跳躍力の高い敵にだんだんと劣勢になる日吉に、鳳は助けたいと願う。滝はその心の輝きを感じて鳳をプリキュアにすることを決める。そして変身、キュアカリタスとなる。
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