🚬※大学生パロ
大学の広い敷地内の隅っこ。人がほとんどこない小さな喫煙所が私の息抜き場のひとつであった。もっと広い喫煙所は大学構内にあるしわざわざここを使うのは余程研究棟に用事がある人くらいだろう。喫煙のきっかけは大学の友人だし煙草を吸いながら話す事もあるため私も頻繁にここを使うわけではない。
友達の中に電子タバコは吸うが紙を嫌う子がいるため紙は基本一人の時しか吸わない。緩く羽織っていたパーカーからいつも友達と吸うiQOSではなくライターと煙草を取り出す。
今日受ける予定の講義はもう全て終わったしあとは今日家に泊まりに来る予定のマヨイと合流して帰るだけだが帰る前に1本吸っておきたくていつもの喫煙所に向かう。
「……可愛らしいお顔に反してかなりキツいもの吸われるんですねぇ。」
「へ?……ぁ」
急に声をかけられ驚いたがすぐにその声の主と目が合い、しまったと思った。バレてしまった。付き合っている以上いつか言わなければと思っていたし、既に隠しきれていない匂いで分かっていたのかもしれないから今更かもしれないが。彼の前で一度も紙タバコを吸ったことがない。紙タバコまで吸う女なんて嫌だろうか、引かれただろうか、もしかしたら嫌だったかもしれない、とマイナス思考が頭の中を一気に埋めていった。
「ごめんね、今消す。」
「ナマエさん」
「なぁに?……、っん、!?」
タバコの火を消し、顔だけ彼の方に向けると突然唇を重ねられた。
最初はただ重ねるだけだったキスが段々深くなり彼
彼の舌が入り込んできてナマエの舌を弄ぶように動く。
喫煙者には非喫煙者の口内を甘く感じる、という俗説がある。何かしらの論文が出ているわけでも検証がされている訳でもないただの噂話に過ぎない。だが実際してみると彼の口内は甘く感じるし現状癖になってしまっている自分がいる。
「、ぁま、…」
「ふふ、ナマエさんのお口は相変わらず苦いですねぇぇ。」
「、マヨイくん嫌じゃないの?タバコ吸った直後だったし。」
「ええまあ。苦くはありますけどピリッとした痺れがあってクセになってしまって。」
「へんたい」
軽く小突くと痛がる素振りを見せる彼を横目に灰皿の上に残ったままのタバコを中に落として喫煙所を出る。
「マヨイくんも講義終わったんでしょ?帰ろ。」
「おや。もういいんですか?」
「もともと1本だけの予定だし。てかあの、今更なんだけど紙タバコ吸ってるの引きませんか……?」
「引きませんよ。匂いで分かっていましたし、ナマエさんが吸ってる姿見るの初めてではないですし。」
「えっうそ、いつどこ」
「……いつの話をしましょうかねぇ。」
さらっとすごい発言をされて固まってしまった私を見てくすくすと楽しそうに笑う。
「さて、そろそろ帰りましょうか。お邪魔する身ですしお料理でもお掃除でも手伝いますよ。」
「そ、掃除はしたし!前より綺麗だよ。」
「そう気遣わなくてもいいのに。夜ご飯何が食べたいですか?」
「んん……肉じゃが!」
「ふふ、では一緒に材料買って帰りましょうか。」