椿 きゅっと抱えるように丸めた手足を投げ出して、七瀬が睡っている。穏やかな冬の日だまりのなかにぽかりと開かれたぬくもりは、仁武の冷えた指先をもゆっくりと温めた。布団から身体を起こして、仁武は声だけで七瀬を呼ぶ。その声音は以前と比べるとあまりに頼りなく細かった。
「七瀬。七瀬。そんなところで寝たら、風邪をひくぞ」
しかし、七瀬は耳が良い。
長い睫毛がぴくりと動いたかと思うと、鏡のように澄み渡る瞳が仁武を見る。まるい瞳が仁武のやつれた姿を映し出したとき、七瀬は数度ぱちぱちと瞬きをして、その細指を仁武のほうへ伸べた。
「仁武さん? 今日はぐあいが良いんですか」
「ああ。……いい天気だしな」
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