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    E0Z7NLu9GF73152

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    各人格🪲に副船長が末弟様を擦り付けようとするだけの話です。
    🖕🏴‍☠️、🔥⛓️🔥🪲、W助手、その他もろもろを含みます。

    #ムルグレ

    謎空間のわちゃわちゃ「ぶっちゃけ末弟様のこと誰かなんとかしてくんない?」
    「なんとかって?」

     謎の世界。人格牌同士が待つ待機所めいた白い部屋の中で、ソファーに座った副船長のグレゴールは煙草を吸いながら突然、泣き言めいたことを口走った。
     リウ6課のグレゴールはそれを聞き、同じように吸っていた煙草を咥えたまま、彼の方へと振り返る。
     見れば、ここに待機している殆どのグレゴールの人格たちが唐突に妄言を宣いだした副船長へと視線を向けていた。
     中指末弟のムルソーと、この双鉤海賊団副船長グレゴールがひときわ爛れた関係───ツヴァイグレゴールあたりは『ムルソーと妙な関係になってない奴の方が少ないのでは?』と思考しているのを横においても───にあるのは全員が知り及ぶことである。
     根っこは同じでも第三者目線で言えば、二人の関係というのは余人を許さぬ、組織ぐるみの癒着関係だ。
     なんとか、と言われても戸惑うのは当然の話だった。
     しかし、とうとう弱音めいた言葉を口にした副船長は、ふ~、と重たげにバニラ混じりのため息をつくと気だるげにぴちぴちとした革を誇るように足を組み替えた。

    「いや……まじ会うごとになんか圧がすげ~んだよな~……。だからせめて鏡ダンジョンくらいではお前らに押し付けられないかと思って」
    「全部出てる出てる。いや無理だろ、接点ないし」
    「ちっ、そりゃ、リウの俺だからだろお~?」

     呆れたように赤いリボンを振るように首を横に振る、ちょっと太め……もとい、体形のしっかりとしたリウグレゴールが否定すると、副船長はダル絡みするように舌打ちを零す。

    「あんたは火を扱うからな、なかなか顔も合わさないのは分かるよ。でもさあ……」

     そこまでいうと、彼は口元の煙草を外し、行儀悪く床に灰を落とした。
     ここでは灰皿係はいないので、自然と怠惰な振る舞いがやや目に余る。ここに咎めるものがいないのは、単に彼らの大半が喫煙者であり、かつこの場がいわゆる概念的なものでしかないと理解しているからだ。
     足元をバラスパナのグレゴールが作ったルンバが通っていくのを眺めながら、副船長は瞳を濁らせて呻いた。
     彼の顔には何とも言えない複雑な感情が色濃く浮かび上がっている。

    「耐えられないんだって。会うたび会うたび腕引っ張られる身になれよお……」
    「末弟のムルソーってそんなにお前さんのこと好きなのか?」
    「甘酸っぱい理由なら俺だってもうちょい遊び甲斐ってもんがあったよ」

     リウグレゴールの問いかけに、副船長は苦々し気にまた煙草を咥えた。
     フィルターをぎり、と噛む音がする。何を思い出しているのか、しきりに彼は首をさすりながら苦し気に低い声を零す。

    「強権でぶん殴られて滅茶苦茶にされるのをどう喜べって言うんだ?現実でも鏡の中でもこんな有様じゃいつかハメ殺されるよ俺……」
    「それはまあ……同情するけどさあ」

     リウのグレゴールはあまり共感していないような顔で肩を竦めた。
     そうだろうよ、と些か副船長は彼の脛を蹴り飛ばしたくなる。そらそうだろうよ、お前のところのムルソーは随分と若くてお可愛らしいようだから。
     聞く限り馬鹿みたいに熱々な仲で、いい年こいたおっさんにあれこれ尽くすのが好きらしい。
     誰だよそれは、本当にムルソーか?なんなら末弟様と交換してほしいくらいだなんて悪態をつくものの、リウグレゴールが鼻で笑って流すものだから余計に腹が立つ。
     額に手を当てて唸った後、ぱっと顔をあげて映ったテーブル近くの人格が目に留まる。
     汚れたエプロンは毎回見ても飲食店住まいの服ではない。

    「じゃあ助手の俺はどうだ?末弟様って体だけはイイし、出血同士でシナジーあるだろ。興味持ってたりしねえ?」
    「バカ言え」

     りょ・ミ・パ勤め、もとい味の裏路地に住まう殺人鬼のグレゴールは副船長の言葉を一周した。テーブルに載せる食事の殆どは鏡ダンジョンなどで拾い集めた人肉が使用されているため、どれだけ彼が美味しそうに作っても食人に抵抗のない面子しか手をつけない。
     今日はブラッディ・ソーセージを作って血鬼神父のグレゴールに与えている。
     このグレゴールは存外勤勉で、待機中も料理長の目が届かないことをいいことにあれこれと好き勝手に料理の練習をしていることが多かった。
     彼は愛用の鉈包丁を握り直すと、気だるげに口に咥えた香辛料の匂いのキツイ煙草のフィルターを器用に噛んだまま皮肉げに返す。

    「そりゃあどのムルソーも食いごたえがありそうだけど、よりにもよって指の構成員に手を出すのがどれだけやばいのか裏路地住まいなら誰でも知ってるこったろ。
     強化刺青の入った肉ってのは気になるけど、自分から関わりたいとは思わねえよ」
    「くそっ、意外に理性的だな。……ほら、俺もバラすのに手伝ってやるから」
    「お前がしたいだけだろそれは。大人しくケツ差し出しとけ~」
    「んだとこいつ……!」

     基本的に同じ世界線にいないとしても、たった一つ。肉体の主であり囚人のグレゴールのいる世界である鏡ダンジョンでお互いの線が交差する以上、指の人格にちょっかいをかけるのは正直悪手もいいところだった。
     ましてや中指はムルソーだけのものではなく、ドンキホーテやシンクレアも所属している人格を有している。
     うっかり手を出してぼこぼこにされたらたまったものではない。ここじゃあ簡単には死ねないからなおさらだ。
     助手は包丁をだん、とまな板に叩きつけて得体のしれない部位を切断すると、すぐに興味を失ったように視線を逸らす。
     煽られた副船長は青筋を浮かべながら、なら、と声をア張り上げた。

    「あー、もういい!じゃあ神父の俺は!?あんたはいっつも腹減ってるだろ!」
    「おっ、俺に振らないでくれ。そんなのは父上様でなくともお許しにならない……」

     血液バー代わりのソーセージを微妙な顔で齧る───血鬼の味覚的には味付けや匂い芥子類は雑味らしい───神父は慌てたように首を横に振った。

    「そもそも、そんな真似をしたら彼がまた暴れるきっかけになる……」
    「彼?」
    「その……炎拳事務所の俺だ。もうあんな騒ぎにはしたくない」
    「ああ……」

     炎拳事務所はラ・マンチャランドとそこにいる血鬼を常に炎上させたい人格である。当然、上位眷属である神父とは極めて相性が悪く、歩み寄りも和解も望めない不動の関係値を築いていた。
     幸い神父が吸血衝動を、たまに失敗するとはいえど抑えているのもあり最近では多少落ち着いた状態にある。
     二人がそろっての待機所で小火騒ぎになったのは通算8回くらいしかない。
     が、まあ確かに血鬼として他人を襲ったとなれば話はがらっと変わってしまうだろう。下手をしなくても炎拳だけではなく牙狩の人格まで煽る可能性すらある。

    「くそ~……!」

     今はこれくらいの人数しかいないため、一旦副船長の目論見は潰れた形になる。
     まあ元々本気でなんとかしようと思ったなら、まず元の世界線での関係の改善を試みるだろう。結局はここで愚痴を吐いておきたいだけなのだ。

    「なんとかって物理的殺人なのかよ。まあ話は聞くからさ……諦めなって」
    「いいよなあ……!あんさんのとこのムルソーは扱いやすそうでさあ……!」
    「いや別に、扱いやすくはねえだろ、なあ?」

     リウグレゴールがあっけらかんとそういうと、途端、周囲の人格たちは動きを止めて口をつぐんだ。
     え?と彼が思う。
     それぞれの人格は自分が接するそれぞれのムルソーを思い浮かべ、やがて不貞腐れる副船長を除いて、揃って困ったように変な笑いを零した。

    「ん~……あっはっは」
    「まあ肉付きは一番いいかもな」
    「どう……だろう、俺は扱いやすいと思った事はないかな……」
    「えっ?そんなに?」

     その時、管理人がリウのグレゴールを呼ぶ声が聞こえた。
     どうやら出番らしいと腰を浮かせれば、話題はそれきりだ。入れ替わるように欠伸まじりに帰ってきた黒雲会の副組長の自分とすれ違うように、リウグレゴールは鏡ダンジョンへと向かっていく。

     と、いうのがさっきまでの話。

    「そもそもあんたがそんなに怖いなんて思った事がないからさ~、ちょっと新鮮だったな」

     リウのムルソーと控えに回りながら、リウグレゴールはあっさりと雑談の延長に副船長の愚痴をばらした。
     言われたリウムルソーは、何とも言えないいたたまれないような、まあそうなるよな、みたいな複雑な無表情リウグレゴールの話に首を傾げる。

    「あなたは……それを私に伝えてよかったのか……?」

     ほのかに抱く、ダメじゃない?というようなやんわりとした問いかけにリウグレゴールは不思議そうに瞬きをした。
     それは副船長が中指末弟に向けるものとは全く違う信頼と愛情のきらめきがある。

    「ん?まあ、ほら、所詮雑談だしさ。ま~なんだ、痴話げんかもいい加減にしろって話だよな~」

     リウムルソーという一個人に向けられた深い信頼が他人格への理解への妨げになっている。
     表面上だと特にムルソーという男の他人格に大きな違いが見受けられないのが問題だろうか。一応他ムルソーとリウムルソーを混同することはないので区別はついているはずだが。
     元より普段から交流がほとんどなく、かつ副船長のグレゴールがやたらとふてぶてしいのも影響があるだろう。
     つまりかの人格が微妙に信用がないのが問題なのだ。

    「……私のグレゴールがいいなら、それでいい」

     リウムルソーはそう締めくくり、リウグレゴールの頭にそっと鼻筋を寄せた。
     なお、このあとこの話はあっさり中指末弟に共有され、副船長がその後どうなったのかはいうよしもない。
     めでたくもなしめでたくもなし。
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