星空(オスブラ)湖の上を覆い尽くす厚い氷のように、一点の曇りもない張り詰めた空気が、夜空を静かに覆っている。
吐く息は煙のように白く、ベランダの手すりにふと指先が当たると、いまにも体が凍ってしまいそうだ。
オスカーはわざわざ着込んできたジャケットの首元を握り締めながら、漆黒に近い幕のおりた、ニューミリオンの空を見つめた。
晴天が続いている今夜、星々の瞬きは美しい。
「オスカー」
リビングの窓を控えめに開く音とともに、オスカーを呼ぶ声がした。
振り返ると風呂上がりのブラッドがおり、メガネをかけ、首から下げた白いタオルで濡れた髪を無造作に拭っている。
「ブラッドさま、風呂上がりにこちらへ来たら湯冷めしてしまいます」
慌てて窓を閉めようとするが、「寒がりのお前がそんなところにいるほうが心配だ」と、窓を押さえつけられてしまった。
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