謎ガチャの衝動に駆られて書いた十いづ 寝相の悪い人間におススメなのは抱き枕。そんな情報を彼に与えたのは誰なんだろう。おかげさまでこの度初めて、彼に抱き締められたまま眠りに就くことができた。
そんな幸せを寝ぼけた頭で噛み締めながらゆっくりと目を開ける。最初に見えたのはしっかりと筋肉のついた、だけど分厚過ぎない胸板。そっと触れてみればそこはあまりに温かくて、熱いくらいで。そう言えば昨晩、横になってすぐの頃はこの体温にどぎまぎして眠れないと思ったんだった。
それがいつの間に眠ってしまったんだろう。そもそも今は何時なんだろう。視界は彼でいっぱい。視覚情報は何も入って来なかった。
「……ん」
抱きしめられたままの姿勢では、僅かに息が苦しくなってきて身を捩る。その弾みで起こしてしまうのではないかと思うとドキドキしたが、彼はちょうど深く眠っているようだ。いびきも歯ぎしりもなく、起きる気配もない。
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