かきかけオメガバの冒頭──自分に運命が訪れるとは、夢にも思っていなかった。
1.
己は天才である。なんて大真面目に言ったら、大体の人間はフンと鼻で笑われるだろう。もしくは眉をひそめられるか。だが、おれは違う。おれは天才だ。もっと的確に言えば、作曲の天才だ。
小さい頃から音楽が好きだった。歌って踊ると妹が喜んでくれるからというのもあるけれど、自分の身の内にメロディが溢れて止まらない感覚。ピアノなどですぐに演奏するか、紙に書いて発散しないと己を焼き滅ぼしてしまいそうなほど熱い迸りが常に脳みその中にあって、おれはひたすらに曲を生み出していった。おれの中に眠っているメロディの種は刺激を受けることで芽を出し、急速に成長する。きちんとひとつの作品として完成させることは何事にも代えがたい快感で、だからおれは日々インスピレーションを求めて行動していた。親和性の高いダンスなんかは作曲の次に得意になったし、電子で演奏できるような類もすぐに習得した。
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