シンイキの胃袋をつかみたい夢主「赤木さん勝負しましょう」
「はぁ?」
玄関先で靴を脱ぐ赤木にそう言い放った、傍から見るときっと馬鹿な申し出で結果が見えてしまっている勝負なのだろう。なんたって相手はあの神域の男と言われ裏社会でトップを走り続けた勝負師なのだから、それでも今私はこの勝負をこの男に仕掛けなくてはならない。
この無茶な勝負に切り出すに至ったのはご近所さんの何気ない一言だった。
「苗字さん昨日見たわよ、あの人恋人?」
「えっあっ赤木さんのことですか?赤木さんとはそういった関係ではなく」
「あっまさか愛人とか…」
「いやいや、ほんとにそんな関係ではないって言うか。たまに家に来るというか、神出鬼没というか」
「あ〜、うちの旦那もね昔はのらりくらりで毎日遊び回ってたのよでもねそう言う男にはねやっぱり胃袋を掴むのが1番よもうイチコロ」
「イチコロ」
「イチコロよ」
こうして今に至る
「さぁ赤木さん(私が勝ったら……今日から1週間夕飯は家で食べてもらいますよ)」
「何か企んでる顔だな…まぁいい
なにで勝負するんだ、麻雀とは行かないだろ」
「それはまぁそうですね麻雀はちょっと…でもまぁ牌は使わさせてもらいますよ」
「ってことはナインか」
当たり前のようにこっちの思惑を透かしてくる赤木に不安が募る、がもう言い出してしまったからには止まれない、タンスから麻雀牌を取り出し、自分自身と赤木へ並び始める。
「準備出来ましたよ赤木さん(フフフ…この勝負のために練習したポーカーフェイスここで披露してあげますよ)」
「おー」
赤木はキッチンから勝手に取ってきたビールを片手に名前の前に座った。
~10分後~
「ふっ…うっ…大敗した……」
涙も流れないほど圧倒的な力を見せつけられただ呆然と最後の1牌であるイーピンを見つめた
「最後の1牌残ってるぜ」
赤木が意地悪そうに見つめ最後の1牌の催促をする。名前が腹をくくり最後1牌を出すと赤木は少し笑って持ってる牌を倒した。
「次する時までにしかめっ面とポーカーフェイスの違いぐらいは勉強しとけ」
「……赤木さんのマネですよ」
赤木にドンピシャをつかれ少し生意気に返してしまう、赤木はその生意気な言葉に少し笑ってタバコに火をつけた。
「そういえば勝った時のとこ決めてなかったな」
「あっ……」名前から一気に血の気が引く、自分自身が勝った時のことにばかりに気を取られ負けた時のことは何の取り決めもしていない
「お前から持ち出してきた勝負だ、どんな条件を持ち出されても文句いえねぇよな」
名前はその言葉に思わず目を固く閉じた。
「そうだな……今日から1週間ほど晩飯でも作ってくれ」
「はぁ…」
予想だにしない言葉にマヌケな声が漏れた。
「嫌なら別のでも」
「いや、いやいやそれがいいです」
身を乗り出し必死に訂正する。
「ククク……誰の為か、最近練習してんだろ料理」
「えっなんでそれ……」
「キッチン…えらく散らかってたな」
「……」
全て見透かされてたのかと言う驚きともう勝負は仕掛けないでおこうと言う反省が心の中で入り交じる。
「ねぇ、赤木さん」
「ん?」
「明日は天ぷらですよ」