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    メイリオ

    @mei_riorio

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    メイリオ

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    たぶんグレビリ前提のジェット+ビリー

    殺意とも執着とも違うけどきっと恋心でもない、でもなにかしらの“情”を抱いてしまった🔪と🍭の話

    オフだから、なんて言い訳をしていつもより少し……否、だいぶ遅めの起床。朝とは言い難く、どちらかと言うと昼に近い時間になってようやく目を覚ましたビリーは、それでも昨晩遅くまで情報屋の仕事をしていたせいでまだ眠気の残る眼を擦った。
    ぼんやりとした頭でセクターメンバーの予定を思い返しながらリビングへと向かうと、毛先をぴょこぴょこと跳ねさせた癖の強い髪の先客を見つける。
    そういえばグレイもオフだったなと声をかけようとしたところで、違和感に気付き口の中で音を留めた。同じ後ろ姿だが、どこか乱雑に見える仕草の彼は。

    「……ジェット?」
    「?」

    恐る恐る口にした予想はあっていたようで、グレイと同じ顔から、グレイなら決してビリーに向けない表情と声を返した。
    あまり会えることの無いグレイの中に居る彼に会えた事にビリーの表情は明るくなるが、彼が表に出てきている理由がわからず喜んでいいものかと悩んでしまう。
    一番の要因になるであろうアッシュは今日は出勤日で、グレイとは顔を合わせないはずだ。例え起きていたとしてもグレイはいつもアッシュが部屋を出るまで自室で時間を潰している。
    一瞬頭を悩ませたものの、考えても仕方の無いことだしまぁいいかとビリーの中で結論を出すと、パッと笑顔を作り声をかけた。

    「ハロー、ジェット♪」
    「……チッ、てめぇか」
    「またアッシュパイセンに悪戯?」
    「……」
    「ジェット?」
    「あぁ、悪戯か。それも良いかもな。 てめぇの生ぬりぃ悪戯にはイライラしてたとこだ。俺様が本気の恐怖ってやつを教えてやる」
    「えぇ!? ダメダメ〜! 待ってヨ、ジェット!」

    キッチンへ向かおうとするジェットに羽交い締めにするようにして抱きついて全身で止める。グレイと違ってビリーを気にかけるつもりが全く無いせいか、ジェットとの力の差は体格以上のものに感じる。
    とにかく、毒などを使われたら問題どころでは済まなくなるのでなんとかジェットが納得する形でマイルドにしなければと頭を回転させていると、予想よりも早くジェットは止まった。いつもならビリーがなんと言おうがアッシュへの殺意は止まらないのに。

    「おい」
    「な、なに!?」
    「止めてほしいなら代わりにてめぇが相手しろ」
    「オイラ!?」

    スパーリングくらいなら出来るけど、オフの日にお金になること以外で汗をかくまで動きたくはない。……それに、彼を満足させるだけの動きが出来るかどうかというのも正直自信が無かった。前回は彼の罪悪感につけこんでトレーニングに付き合ってもらったが、ストレスを発散したいという……暴れたいとただそれだけの理由で相手になるにはきっと物足りないだろう。
    それ以外で、できれば危ないコトと嫌なコトはやめてほしいなと思いながらもとりあえず話を聞こうとすると、ジェットが口にしたのは案外バイオレンスなお願いではなかった。

    「そこ座れ」
    「……それだけでいいの?」

    そう指さしたのはイーストのリビングに置いてある大きなソファ。言われた通りオレンジ色のそれに座ると、どかりとジェットが隣に座る。何をするのかと眺めていたら隣にあった頭はいつの間にか視界から消え、代わりに脚の上にあたたかな重量を感じた。
    ソファの上に横になり、頭だけをビリーに預けるその様子はいわゆる『膝枕』と呼ばれるものだろう。
    状況は理解したが、その状況に至った経緯がわからなくて混乱する。

    「えっと……?」
    「グレイの奴、朝方までゲームしてたせいでくそ眠いんだよ」
    「あぁ、あの後朝までやったんだ」

    距離が近くなったことで気付いたが、グレイの目の下にはたしかに濃い隈があった。昨日、ビリーの記憶が正しければもうそろそろ寝ようとパソコンの電源を切ったのが2時半頃。その時隣のスペースでグレイもパソコンに向かってゲームをしていたが、どうやらビリーが寝た後も明け方までそれは続いていらしい。

    「この状況でグレイに代わったら面白いことになるだろ」
    「それはたしかに楽しそうだネ」

    ジェットが他に考えているであろうイタズラに比べたら随分と優しく、そしてビリーにとっても楽しそうなイタズラにふふ、と笑いがこぼれた。

    「……グレイのこと、素手で触れんのか」
    「うん……? 大丈夫だヨ」
    「ならソレ、外せ。感触が悪ぃ」

    横になったジェットの髪を子供にするみたいに撫でていると、顔を顰めて彼が言う。『ソレ』というのはビリーがいつも身につけているハーフグローブのことだろうか。
    言われた通り手袋を外し、爪先まで整えられた細い指で濃紺の髪を梳く。普段と違い露になっている額に触れても、ジェットは何も言わない。それどころか、気持ちよさそうに頬を緩めているような気さえした。これはビリーの気のせいかもしれないけれど。

    「(グレイはワンちゃんっぽいけど……ジェットはちょっと猫っぽい……カモ?)」

    あまり笑うと拗ねてしまうかもしれないと思いつつも、ただでさえ交流が少なく会話を交わすことすら稀な相手とのほのぼのとしたやり取りに笑みも浮かべたくなる。

    「……っ」

    ゆるりと撫でていたその下。瞼の裏に隠れてきたはずのアンバーが、射抜くような熱で真っ直ぐにビリーを見つめていた。
    先程までは緩んでいた……少なくとも不快という記号は浮かんでいなかったジェットの顔が苦しげに歪む。心臓を細い針でじわりと刺されているかのような痛苦の表情のまま、何か言いたげにビリーの掌を口元に寄せた。その口唇は、触れそうで……触れない。

    「……ジェット?」

    何か気分を損ねてしまったのだろうか。こういう感情を読み取るのは得意のはずなのに、ジェットの心機がわからず手をどかそうとするが、ビリーより大きい手のひらが手首を掴んで離さないのでそれすら出来ない。
    お互いに何もしないまま、ただ見つめ合うだけの時間を過ごしていると、それは前触れもなく唐突に終わりを告げた。ふっ、とジェットの力が抜け、掴まれていた手首が解放されると、真剣な眼差しが一度瞼の裏へ隠され眠そうな眼へと変わる。

    「……んん、あれ……ビリーくん……?」

    いつものビリーの知ってる彼の姿に、無意識に強ばっていた身体にじんわりと温かい血が流れていく。トクトクと普段より早まっている鼓動を悟られないように優しく声をかけた。

    「……んふふ、起きた? グレイ」
    「なんだ夢か……」
    「夢じゃないヨ〜」
    「………………え?」

    うわぁぁぁ!!と叫びながら飛び起きるグレイの頭にぶつからないように避けながら、ケラケラと笑い寝癖の付いたグレイの髪を整えてあげる。

    「僕、え、これっ……ひ、ひひひ、膝枕……っ!?な、なんで……っ」
    「ジェットがこうやったらグレイが驚いて面白そうだからって」
    「ジェット!?……ちょっと、どういうこと……ねぇ……うぅ、ダメだ返事してくれない」

    頭を抱え肩を落としたグレイがゆっくりとビリーへと向き直り、恐る恐るといった様相で尋ねた。

    「……ねぇビリーくん、ジェット何か言ってた……?」
    「…………」

    『何か言ってた』かと聞かれればYesだが、あの出来事を上手く伝えられる気がしなくて言葉に迷う。そもそも、ビリーもよくわかっていないのだから。
    結局、口から出たのは当たり障りのない文句だけ。

    「『朝方までゲームしてたせいでクソ眠い』って言ってたヨ」
    「そ、それを怒ってたのかな……だとしてもこんなイタズラしなくても……、」

    口に手を当て唸っていたグレイがピタリと止まったかと思うと、指先をオレンジ色の横髪を絡ませながら頬に触れた。親指が唇の上をそっと歩いていく。
    もしかしたらビリーにはわからない“何か”も、グレイなら分かるのかもしれない。会話を交わさずとも何か通じるものがあるかもしれない。
    ……なんて、そう思っているのはビリーだけで、実は何も分からないのかも。それすらビリーには分からない。

    「……」

    グレイがなにも言わないのなら、ビリーも何かを聞くようなことはしなかった。

    「グッドモーニング、グレイ!」
    「……うん。おはよう、ビリーくん」

    代わりに遅すぎる朝の挨拶を交わす。
    と、同時に鳴り響いた二人分のお腹の虫に笑いながらランチの予定を一緒に立てることにした。




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