夢の通わぬ路目の前に、ノイジーがいる。
こちらに背を向けて、どこかへ行こうとしている。
ああ、これは夢だ。
お前を、喰べる夢だ。
なんとか留まりたいが、明確に自分はノイジーに近づいて行く。
もしも、もしもコレで。
美味いと思ってしまったら。
本当にお前を喰べてしまうかもしれない。
止まらなければ。
そう思いながら大きく口を開ける。
やっとノイジーが気がついてこちらを見る。
大きく目を見開いて。
「ま、待って下さい!!水浴びて来るので!!」
……水浴び?
夢に脈絡がないのは分かるが、あまりにも無さすぎないか。
「く、口、疲れません?一回閉じましょ?」
ノイジーが怖がりもせず自分の鼻先と下顎をよいしょと押して口が閉じる。
「あの、食べようとしてるんです、よね…?」
わかっているのになぜ逃げないと思えば夢の中のノイジーには勝手に伝わるようだった。
「見れば分かりますよ。逃げる理由なんてないでしょう?あなたが食べてくれるんです。でも、さすがに綺麗にしてからが良いです。あ、1日待ってもらえるなら、絶食して、中身も空っぽにしますよ?待てます?」
俺、あんまり美味しくはないと思うけど、出来るだけ美味しくなるようにしますと。
嬉しそうに自分の懐で笑う顔を見て。
「…いや、ダメだろう。」
「わっ!?」
「…ノイジー?」
「お、おはよう、ございます…。なんか、よく寝てるみたいだったんで起こそうか迷ったんすけど、起きられましたね。」
「ああ。今、支度する。待たせてすまないな。」
「いえ、隊長はいつも早いってだけですよ。」
せっかくだし、お支度、俺も何か手伝えることありますかね?と嬉しそうに笑う目が夢の中と重なる。
…マスクをしていてくれて本当に助かったという言葉を、欠伸と一緒に念入りに噛み殺した。