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    siosioaaa

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    siosioaaa

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    内容がまとまらなかったのでこっちで供養

    オシオキを受けてから自分の望む世界に閉じこもってしまった🐹が目覚めるまで🔧の声を聞いていた話

    楽園追放禁忌を取り入れた者は皆、裁きを受け楽園を追放されていく。
    母親の名を呼びながら自分の狂気を認め、灼熱の業火に焼かれた者。
    その身を挺して主人を守り、絶望に立ち向かいながら刃に貫かれた者。
    今は亡き者を思いながら恍惚とした笑みを浮かべ毒により死した者。
    そして今、罪を食した自分はまさにその断罪の地に立たされている。

    止まることなく突進してくる魔獣を臆することなく見つめ、描き終えた円の中心で手を合わせる。抗うことの出来ない運命でも自分の意思を貫き通すため、目を閉じて心の中で強く念じているとその声は聞こえ始めた。幻聴でもなんでもない、愛おしい者が自らを引き留める声。やがて遠くから呼びかけるだけだったそれは近くで発せられ、耳にまとわりつくように何度も自分の名を呼んでいる。別れというのが辛く、必死に言い聞かせていた。

    「(…貴様には申し訳ない選択をしたな。だが悔いる事はない。これは因果律の運命により定められた、俺様の罪禍であり命を繋ぐための一石なのだ。)」

    その呼び声に振り返ることなく、目を開く。無数の魔獣等はもう目前まで迫っていた。この後に訪れる衝撃を今までに何度も経験しているような気がして冷や汗が伝う。そんなはずはない。自分が手を染めたのはこの一度きりだ。その過ちを、罪を裁かれる為に今ここに立ち尽くしているというのに何故こんなにも既視感を感じるのだ。一瞬のうちにそんなことを考えているとやがて予想通り痛みが全身を駆け巡りそして地に臥せる。それから天からは魔獣を模した使者達がやって来て、自分は運ばれるのだ。………一体どこへ?どうして自分はそれを知っている?
    次に目を覚ますと辺り一面には海が広がっており何もかもがいつも通りの南国の島にいた。少し散策をすれば仲間の姿が目に入る。幸せそうな笑みを浮かべながら談笑をしているようだ。ただしかし、その光景に自分が最後に聞いた声の持ち主はいない。……はて、最後とは一体いつを指すのだろうか。あの声の持ち主は、愛おしかったはずの彼奴は誰だったのか。考えては見たが思い当たらない。脳内が掻き乱されるような衝撃に襲われ立ち止まる。深呼吸をしながらそれを忘れるように願うと、痛みはおろか思考さえも綺麗に消えていく。それに安堵しながらいつものストールが軽いことに気がつき破壊神暗黒四天王達はどこへ行ってしまったのかと考え始めると、彼らは魔法でも使ったかのようにポンと現れ、何事もなかったかのようにいつも通り振る舞っている。それでようやく思い出した。ここは何もかもが叶う自分の理想の世界なのだ。

    「そんな都合の良い世界があってたまるかよ!」

    ふいにどこからか声が聞こえてきたような気がした。その声に聞き覚えがあるのに、さっきまで何度も名前を呼ぶ声を聞いていた気がするのに誰なのかまでは思い出せない。

    「……ったく、データが破壊されてっから記憶がないのは想定内だったけどまさかここまでだったとはな……やっと辿り着けたぜ」

    声の主は俺様の考えを見透かしたかのようにそう告げる。データ、破壊、記憶、辿り着く。一体何のことを指しているのかわからぬまま、声の出処を探そうと辺りを見渡した。


    「おい、田中聞こえてんだろ?そんなところに閉じこもってないで早く帰ってこいよ。」

    「貴様、何者だ。どこから俺様に話しかけている?」

    思わずそう問いかけるとしばらくの沈黙が流れてから声の主は語り始めた。

    「オレが何者かなんてこの際どーでもいいけどよォ、早く自覚してくれよ。こっちはオメーを起こすのに精一杯になってんだからよ。」
    「フハハ、俺様を起こすだと?腑抜けたことを言うな。今まさに起き上がりこうして地を這っているではないか。」
    「だーっ!本当めんどくせー!」

    声の主はそう叫ぶとそれ以降言葉を発しなくなった。代わりに足音が聞こえ始め、何者かの気配を感じ振り返る。

    「これでもわかんねーかよ、ハムスターちゃん。」

    黄色いつなぎにニット帽を身につけた桃色の髪の男はそう告げる。

    「なぁ、そろそろ起きようぜ。確かにここはオメーにとっちゃ楽園かも知んねーけどよ、良い加減こっちは痺れ切らしてんだよ。……そんで、また一緒に笑ってくれよ…」

    悪態をつかれたと思えば男は途端に涙を混じらせそう訴える。
    その涙を見てまた頭痛がした。今まで思い出さないようにしていた記憶がドッと流れ込み目の前が暗くなる。そうして全てを思い出すと、口からは自然に彼の名が溢れた。

    「……左右田、」
    「………!」
    「…そうか、俺様はずっと思い込んでいたのだな。あの断罪の場で、ずっと貴様の声を聞いていた……」

    心に残っていた違和感が全て崩れ落ち、世界が崩壊していく。

    2人で一緒にいられるのならば、たとえその先が地獄だろうとなんだろうときっと楽園に変わってしまうだろう。だから俺様は、俺様の創り上げた独りよがりな楽園から自分を追放することにしよう。
    「左右田よ。もし目が覚めたなら、その時はすぐに貴様を迎えにいく。伝えたいことがあるからな。」

    「もしも、なんて存在しねーんだろ?はおー様。……まあでもそうだな、せっかくだしその時はオレから出向いてやるよ。…だから、またあとでな。」

    そう言い残して左右田の姿は消えていく。やがて自分の意識が混濁し始めた頃、頭の片隅に残る白黒の熊に勝ち誇った笑みを向けてやるとつまらなさそうな顔をして奴は消滅した。世界がバラバラと崩れ落ちていく。そうして辺りは闇に包まれ、俺様は意識を失った。



    目を開く。
    プシュ、という空気の漏れた音に意識を覚醒させられながら横たえた身体を起き上がらせると暗がりの中に桃色と黄色の色彩が目についた。
    これから自分は罪を背負い、神の摂理に従いながら再出発を果たすのだろう。
    満を辞して、彼に言葉を投げかける。

    「…ただいま、帰還した。」
    「やっとお目覚めかよ!……おかえり。」



    楽園追放
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