ヘローサイエンティスト「球が傾くことなんてある?」
出しっぱなしなビビットカラーの文房具と、扇風機が十何と捲った教科書に、氷の塔の、ころんとした崩落で滲んだワークとその他エキストラ達でひしめく机上にて。一番幅をきかせている図鑑を、男はぱたんと開いた。文字の踊りたくったプリントが二次元の惑星に蹴っ飛ばされ、畳に落ちる。四角い掌が厚紙を掴み、片手で小数点第一位の五までを丁寧に指す。男の瞼は水平に下りた。
それに強請られるみたく、突っ伏せた半身を捻ると地軸をなぞる。
私は夏を回顧している。
硬い樹脂とマシュマロマンみたいな指を伸ばしたり曲げたりしながら、本当かなと首を傾げる。縦と横が一ミリ違ったところで面積は大差ないように、楕円と円の違いも曖昧なように思える。ああ、だけどやっぱり高校時代から大学の板書より天文の図鑑より尊いあの子は賢かった。
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