ウサギは浮気に入りますか おまけその夜不寝番をお役御免になった明石は、静かな足取りで審神者の住まうはなれへとやってきた。
ゆっくりと寝室の襖を開けると、昨夜と同じくうさぎのぬいぐるみを抱いた主が、穏やかに寝息を立てている。
彼女の眠りが健やかなのは喜ばしいが、自分以外を抱いて眠るのは少々いただけないと明石は思う。
明石が無言のまま、そっと手の甲を主の頬に寄せると、眠る彼女はひどく幸せそうな表情を浮かべた。
おそらく今、自分は人には見せられない顔になっているという自覚があるが、誰もいないので問題はないと明石は割り切ることにする。
そのまま彼女の唇をなぞると、くすぐったいのか主は軽く眉間に皺を寄せた。
「………。」
一度主屋へ戻って風呂でも浴びてくるかと明石が顔を逸らした途端、主が「ん…」と小さな声を漏らしたのでそちらに視線が戻る。
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