蒙古と戦を続けるうち、色々な筋から幾つかの甲冑を手に入れた。どれも腕のある甲冑師が作った良いものに相違なかったが、いかんせん甲冑は消耗品である。敵と刃を合わせるたびにどこかしら壊れていくものだ。
幸いにして島の甲冑師は皆腕が良い。だがこと安達家の鎧の修理にあっては 黄金寺にのぼりを構える甲冑師の元へ持っていくことが、息子の形見とも言える鎧を惜しげもなく仁へ与えてくれた政子への誠意であり、また、安達家の菩提寺で修理することで繁里の魂が仁に法外な力を貸してくれるのではないかという験担ぎでもあった。
「この程度でしたら、明日には完了致しますよ。今宵はこの寺で休んでいかれてはどうです、境井様」
仁が持ち込んだ鎧の様子を見終わってから、甲冑師の女はにこりと笑った。
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