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    TRPG56167151

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    TRPG56167151

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    色彩自陣、第五の物語の前日譚のような小話
    クロメテを最終章まで知ってないと何が何やらだし色彩第五のNPCバレがあります

    ##SS
    ##CoC

    幾度追想のreunion「クラムさん、お疲れ様。次は須藤さんのところの研究室だよ」

    少々予定外の事態はあったものの、何とか野老山研究所に所属できることになってから数日。研究がひと段落ついたとのことで、ようやく各室への顔合わせが行われる運びになった。
    「すぐ会えるもんだと思ってたけど、やっば研究って忙しいんだな……ふあ」
    思わずあくびをひとつ。真由は教師としても優秀だったがいかんせん必要な知識が多すぎた。睡眠不足をごまかすように欠伸を繰り返していると、振り返った真由がくすくすと笑う姿が目に入る。
    「……なに笑ってんだ」
    「ごめんね。いや、不死でもそういうところは普通なんだなあと思って」
    「元はと言えば真由が課題出しまくるせいだろ?」
    「だって最初ひどかったからね。俺も驚くくらい成長してくれたけど」
    ほらここだよ、と突き当たりの扉を示される。プレートには確かに『須藤研究室』の文字があった。
    (……いよいよだな)
    今度こそ、と知らず自分の手を握る。それを後目に真由が中に声をかけ、扉を開けた。

    「みんなお疲れ様。この前言ってた新しい研究員を連れてきたよ」
    思い思いに寛いでいた研究員たちがざわざわと集まってくる。見目に対するものも含まれた期待と興味の視線は、第三の世界で初めて部隊入りした時のことを思い起こさせた。

    「あー、クラム。クラム・フェルシアだ。よろしくな」
    視線の先はまっすぐに片割れへ。当然ながらこちらを見ているそれとかちあった。
    「須藤……悠悟です。よろしくお願いします、フェルシア」
    名前で呼ばれないことにも慣れてきてしまったな、と苦い感情を覚えていれば、俺が入ってきた時とはまた違うざわめきが研究員の間に広がる。何だ?

    「あーずるいずるい!なんで初対面の人に呼び捨てしてるんですか!星奈もまだ呼ばれたことないのに!」
    「え!?だって……いや、あれ?」
    どうやら無意識だったらしい。慌てた様子で謝り始めるユーゴに笑みが溢れる。
    (なんだ。やっぱユーゴはユーゴだよな)

    「馬が合いそうで何よりだ。室所属にはならないけど、しばらくはここの手伝いとかやってもらいながら慣れていく予定。よろしくね」
    聞いてないぞと振り返れば笑顔を向けられる。してやられたようでやや面白くないが、都合がいいのは確かなので黙って受け入れることにした。


    それから数日、書類整理をしたり議論に参加したりしているうちに段々と見知った顔も増えてきた。魔術や神話生物自体は今までにも見てきたが、数学的に解くなんて発想はなかったため中々に面白い日々になっていた。
    (この知識があれば、上手くすりゃ今度こそ滅亡防げそうだな)
    任された書類を見るともなく見ながら整理し、ユーゴの机に近寄る。

    「ユーゴ、頼まれてたファイリング終わったぞ。ここでいいか?」
    「え?あ、うわあっ!?」
    ばさばさばさ。よほど集中していたのか、肩を跳ねさせた衝撃で絶妙に積み上げられた紙束が無残に崩れ落ちる。
    「ああああ、すみません!はい、その辺はまだ机が見えてるので適当に……」
    こいつまだ整理苦手なのか……やや呆れつつ折れ曲がった書類をひょいと拾う。
    「流石に目の前で崩れたの放置してくほど薄情じゃねえよ。だいたいユーゴがやると片付けにならないだろ」
    「いやまあそうですけど…………あれ、最近は片付いてたと思うんですけど。双樹さんあたりから聞きました?」
    「あーいや、気にしないでくれ」

    離れた机から聞こえる「星奈が片付けたんです!あと濡れ衣やめてください!」との苦情を受け流しつつ紙をまとめていく。ちらりとユーゴを見やれば、前髪を払って一枚拾い上げ、クリアファイルに入れると前髪を避け、…………
    「ユーゴ、前髪邪魔じゃねえか?」
    顔を上げた拍子に髪がまた目にかかる。照れ笑いをごまかすように横に払った。
    「ああ、なかなか切りに行く時間なくて……自分で切るのも考えたんですけどどうしてもちょっと怖いんですよねえ」
    「ふーん……」
    気のない返事をしつつごそごそとポケットを漁る。この前の事故でも奇跡的に無事だったはず……
    すぐに目当てのものにつきあたって、にっと笑いながら手を差し出した。
    「これ使うか?応急処置だけど割と便利だぜ」
    取り出したのはヘアピン。前の世界で使っていたものの片方だ。赤い方なのはまあ、たまたまということにしておこう。
    「え、良いんですか?助かりますけど、フェルシアのなんじゃ……」
    「予備があるし今は使ってないしな。必要なやつが使ってた方がいいだろ?」
    「まあ、それなら…………」
    納得したのか押しに負けたのか、おずおずとピンをつけ始める。そういえば髪をいじるところを見るのは初めてだったな。
    「こうで合ってますか?ピンとか使ったことなくて」
    「ん、いいんじゃねえの」

    髪をまとめる感覚に慣れていないのか、何度も留め直しては首を傾げている。
    見たことがないはずなのに、その様がやけにいつも通りだった。だからだろう。

    「っ、はは」
    「なに笑ってるんですか!」
    そんな当たり前に、つい吹き出してしまった。



    「さっさと書類片付けて作業戻ってくださあーい」
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