名前をなくした君と亡くしたと思った大切な存在が帰って来たと喜んだのは束の間の事だった。
今はどうしていいのか、何を伝えたら良いのか分からないまま、私は力の抜けた彼の身体を抱えている。
再会を祝って開かれた小さな宴もお開きになった後、部屋へと戻る彼の様子に違和感を感じて後を追った。部屋の扉が閉じる寸前に崩れるように床に膝をついた彼の姿が見えて反射的に目の前で閉じた扉へ手を伸ばした。
「ラオ!大丈夫か!?」
「…リュウか」
「体調が優れないなら…ッ!?」
開いた扉の先に居た彼は膝から崩れ落ちたまま床に座り込んでいて、此方へと向けた顔には涙が流れていた。そんな風に泣く彼の姿なんて幼い頃に見たきりだ。彼はずっと私の前を歩いていて、その背中は常に真っ直ぐ伸びていた。
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