「これは何かの策ですか?」 重傷二振り、中傷一振り、自身も軽傷状態だったが、部隊を率いて身を隠すくらいの余裕はあった。重傷の大和守に肩を貸す加州も傷は浅いものの、傷そのものより疲労の方が深刻であるのが見て取れる。撤退だろうな、と半ば独り言のような呟きに皆力なく頷いた。しかし、目の前には『進軍せよ』という、部隊長にのみ可視化された電子メッセージが浮かんでいる。心臓が早鐘を打ってた。何かの間違いだ、と思う。
本丸にいる審神者との連絡もまた、部隊長のみに許されていた。決められた手順に従えば、ノイズ混じりに審神者の声が耳を震わせる。
「――はい、状況は見えてるよ」
平素と変わらない声だった。普段なら安心感のある落ち着いた低音が、この場にはそぐわない。
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