頭の中の君 「ふぅ、」
息を吐きパタンと一冊の本を時尾は閉じる。酒盛りをし、部屋へと戻った斎藤は妻のそんな姿を見て…妻の持つその本を見て一気に酒は抜け顔は青白く染まっていた。
「と、時尾ちゃん!!??」
「あら、五郎さん。おかえりなさい」
「ただいま…じゃなくて!その本…全部、読んだの?」
「ええ、今し方」
ますます顔を青くさせた斎藤は正座をする。斎藤は新撰組の生き残りという意味でも多くの本が残っている。そしてそれは英霊としてある斎藤一を形作る一つのものとなっていて…時尾が手に持つ本の中には時尾を妻とした後のこと…時尾のいない島で、頼まれ仕方がなく一人の娘を抱いたことが書かれてあった。
「怒ってる?」
「別に、ちっとも」
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