自分の名前だけ認識できなくなる鉢その日は、雷蔵が「委員会の準備がある」とかで俺より先に起きて出ていった日のことだった。
目が覚めると、俺は自分の名前を思い出せなくなっていた。
「雷蔵、八左ヱ門、勘右衛門、兵助…。
俺以外の名前は覚えているな。」
軽く記憶のテストをしてみるが、特に問題はなさそうだった。
「まさか自分の名前がわからなくなるとは。
素顔が思い出せなくなったことはあったが、名前を忘れたことなどなかったのになぁ。
まぁ、提出する課題に名前は書いてあるし、確認すれば済むことだ」
俺は早口で呟きながら、課題の氏名欄を確認した。
確認したのだが、そこに名前は書かれていなかった。
正確にいうと、氏名欄が墨のようなもので黒塗りされていた。
「……っは、はは
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