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    サヴァラン1周年記念のみゆけん…
    を今日15時ちょうどにあげようとしてたけどまだ書いてる途中なんでとりま頭だけ…

     帰った客の席を片付けていた深幸の耳にバーのドアが開く音が聞こえてきた。片付けていたものを置いてドアの方を振り向くと、見慣れた顔が目に入る。バンド練をするときにはもちろん、シェアハウスでも飽きるほど見るその顔。一度ここに訪れた時以来、たまに来るようになったバンドのリーダー。里塚賢汰の顔だ。
    「なんだ、また来たのかよ。バーがここしかないわけでもないのに」
    「フッ、バーテンダーがそんなこと言っていいのか?」
    「来たらいつも俺の前に座るからだろ。お前の顔を見ながら仕事する俺の身にもなってみろよ。それとも、もしかして俺の顔が見たくて来たとか?」
    「さあな、そうであって欲しいのか?」
    「はあ? 何言ってんだ」
     冗談半分、苛立ち半分の言葉を賢汰は笑顔で突き返した。そしていつものバーカウンターに座る代わりに、その答えに敏感に反応する声を後ろにして足を動かし続けてバーの片側にあるステージに向かった。
    「ちょっと弾きたい気分でな。付き合ってくれ」
    「あのさ、ステージがあるとはいえ、こことりあえずバーだからな。それに、予約もせずにこんないきなりやってきて弾きたいと言ってもさ……。弾きたいのならスタジオで一人でやりな」
    「いいじゃないか、界川くん。今はスケジュールの入った時間でもないし。行ってきな」
     深幸が呆れたかのような言葉を発したが、賢汰がステージに向かうのを目にしたマスターはすでにカウンターの片隅にあったドラムスティックを持って深幸に差し出していた。マスターは大丈夫だと言わんばかりの優しい笑みを浮かべていたが、深幸としてはあまり有り難いばかりの状況ではない。
    「マスターはただ客寄せに使えそうだからやらせるだけじゃないっすか…」
    「ははっ、知ってんなら行って来いよ!」
     冗談交じりに文句を言う声に、マスターは豪快に笑いながら深幸の背中を叩いた。深幸はただため息をつくだけ。
     もちろんドラムを叩くという状況自体に拒否感を覚えるわけではない。ただ、この突然の流れに巻き込まれるのがあまり気乗りがしないだけ。しかし、賢汰の話を聞いたらなんだかこっちまで弾きたい気分になったのもある。まぁ、少しだけなら付き合ってやってもいいかな。深幸は少し悩んでからマスターの差し出したスティックを手にし、賢汰の立っている舞台に向かった。
     既にギターを手に持った賢汰の視線が歩いてくる深幸に向かった。堂々とした真っ直ぐな視線。事情を知らない人からしたらこの時間にライブの予定があるバンドマンだと思いそうな、何のためらいもない様子だ。バーのおぼろげな間接照明の間、ステージの上に降り注ぐピンポイントのライトがそんな賢汰をさらに堂々と見えるようにしていた。あのステージに立つのが今でやっと2回目のくせに、なんだかバーのステージに結構馴染んでいるように見えた。もちろん今の深幸にはそんな感想よりは、いきなりやってきて演奏に付き合ってほしいと言うあの厚かましいリーダーへのあっけらかんとした気持ちが先走っていたが。
     ステージに上がった深幸は髪を一つに結んでいたヘアゴムに指をかけてはそれをほどいた。長い髪が肩の上に落ちて、その瞬間からこの場に立っているのはもうバーテンダーの界川深幸ではなく、ドラマー界川深幸。こいつに文句を言うのは今じゃなくてもできるから。今はとりあえずステージに視線を向けている客の渇望を満たしてあげようか。
     深幸は賢汰と軽く合図を交わしてからカウントを取り始めた。ゲリラライブの始まりを告げる銃声だった。
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