鉛「レディのことは実際どう思っているんだ?」
「……は?」
納品物の入った木箱を置くためかがもうとしたときのことだった。暖炉の前の柔らかそうな一人掛けのソファーに座るルーナが唐突にそんな問いをヴェネルに投げかけた。思わず木箱を床に取り落としそうになったヴェネルは慌てて体勢を直すと、改めてそれをそっと指定された位置に置く。ルーナはヴェネルが答えるまでじっと黙ってその動作を見つめていた。
「なんだよ急に」
居心地の悪さを隠そうともせず、ヴェネルは顔をしかめた。視線を合わせるのがなんとなくしゃがんだまま嫌で木箱の蓋を見下ろす。中身はルーナがリテイナーの業務としてヴェネルに依頼した植物だ。これを何に使うかは知らないし、わざわざ聞いたこともない。おそらく尋ねればルーナは喜んで聞いていないことまでヴェネルに教授することだろう。だからヴェネルは聞かなかった。それを確信できる程度には付き合いも長いのだ。
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